<マスコミが報じない>福島原発事故「子どもへの被曝影響なし」


石川和男[NPO法人社会保障経済研究所・理事長]

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日本の人文・社会科学、生命科学、理学・工学の分野に関わる約84万人の科学者を代表する『日本学術会議』。東日本大震災により発生した福島第一原子力発電所事故に関して、「子どもたちへの放射線被曝影響はない」旨の報告書を9月1日に発表した。

殆ど知られていないだろうが、これは大きな朗報。ポイントは次の通り。

<1>胎児への影響について

(1)福島原発事故の影響で起こる可能性があると考えられる胚や胎児の吸収線量は、胎児に影響が発生すると考えられる値よりもはるかに低い。

(2)死産や早産などの発生率は、原発事故の前後で変化していない。

(3)死産や早産などの発生率に事故の影響は見られないことが証明された。

<2>チェルノブイリ原発事故(1986年:旧ソビエト連邦)との比較

(1)福島原発事故による放射性物質の総放出量は、チェルノブイリ原発事故の1/7ほど。

(2)福島県の県民健康調査では、被曝線量が比較的高いと予測される地域であっても、被曝線量はチェルノブイリ原発事故よりはるかに低い。

<3>甲状腺がんについて

福島県の子どもを対象とした検査結果では、甲状腺がんが約0.037%の頻度で検出。

(1)この結果について「原発事故の影響がある」という意見と「放射線の影響は考えにくい」という意見がある。

(2)しかし、地域や外部被曝線量が違う場合でも、発見頻度に意味のある差は見られない。

(3)このことからこの結果は、今まで検査をしてこなかった対象者や地域に幅広く検査を行ったため、症状の現れていない人にも正常とは違う検査結果が見つかる「スクリーニング効果」だと考えられている。

そして、報告書の最後で、「こうした科学的事実の蓄積があり、実際の被曝線量があきらかにされつつあるものの、子供への健康影響に関する不安がなかなか解消されない」として、「不安を解消するためのコミュニケーション」の重要性を提起している。

ところで、この朗報を大々的に取り上げたマスコミは少ない。私が調べた限りでも、全国紙3つ・地方紙3つだけ。しかも、記事の日付は報告書発表後からずいぶん時間が経ってからのものばかりで、次の通り。

9/5 読売新聞「震災6年 チェルノブイリ比較 被曝線量「はるかに低い」」(福島)

9/6 福島民友ニュース「被ばく線量「はるかに低い」 第1原発事故、チェルノブイリと比較」

9/7 福島民報「線量「はるかに低い」 県内の子ども チェルノブイリと比較 日本学術会議」

9/13 朝日新聞「福島の子、被曝線量「低い」 チェルノブイリと比較 日本学術会議(福島)

9/19 東京新聞「3・11後を生きる 坂本充孝のふくしま便り いわきにNPO開設のクリニック 患者の不安に向き合う」

9/21 毎日新聞「坂村健の目:被ばく影響、科学界の結論」

政治の反応はもっと鈍い。与野党問わず、国会議員がこれを声高に語った形跡は見当たらない。これをアピールしても、政治的に何の得もないからだろうか。

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マスコミは、福島の危険性にばかり着目したり、放射能の恐怖を煽ったり、被災者へのイジメを助長したりと、今でもそういう報道を新聞やテレビは流し続けている。

マスコミ関係者は、安心材料を報じても面白くないし、不安材料を報じる方が多くの読者や視聴者にアピールできる、と信じ込んでいるのかもしれない。

しかし、福島原発事故から6年以上が経過した現在も今後も、事故による子どもへの影響の事実はない ーー これは本来、トップニュースになるべき朗報のはずだが、そうはなっていない。

マスコミ主導の報道は、やはり偏っている・・・。

 

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石川和男

石川和男(いしかわ・かずお)NPO法人社会保障経済研究所・理事長。1965年、福岡県生まれ。東京大学工学部卒業。1989年、通商産業省(現経済産業省)入省。エネルギー政策、産業保安政策、産業金融政策、中小企業政策、消費者政策、物流・流通政策などに従事。2007年3月、経済産業省を退官。2008〜09年、内閣官房・国家公務員制度改革本部、東京財団上席研究員、政策研究大学院大学客員教授、政府の規制改革会議、行政刷新会議WGなどの委員を歴任。