「ブラタモリ」で言ったタモリの「鶴瓶の家族に乾杯」評の本音


高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]

***

NHKの「ブラタモリ」は肝の座った番組である。大体、井上陽水のテーマ曲「女神」の歌詞が、TVなんか見てないでどこかへ一緒に行こう、とテレビ視聴を否定しているのである。この曲を起用するこの番組はさすがに偉い。

その「ブラタモリ」で、タモリから驚きの発言があった。12月9日放送の「彦根を徳川家康がなぜ重視したのか」がテーマの回である。大河ドラマの「女城主直虎」の番宣を兼ねた収録であると思われるが、番組中、井伊直虎には一切触れない。

むしろテーマは徳川家康と彦根である。もっとも「女城主直虎」のほうも、柴崎コウ演じる直虎押しには無理が出始めて今は脇役扱いで家康の話になっているのだが。

さて、タモリによる驚きの発言が出るのは、同じNHKの「鶴瓶の家族に乾杯」で、笑福亭鶴瓶も彦根に来ていると知ったときである。タモリは「鶴瓶の家族に乾杯」を次のように評した。

「(鶴瓶は)売り物の偽の人間性を発揮しながら(やってきたんだろうね)」

「偽善芸の極致」

「これを言うと(鶴瓶が)怒るんだけどね『営業妨害やで』って」

もちろんタモリと鶴瓶は盟友であるから、シャレっぽく言っているのである。他のNHKの番組ならおそらく編集でカットされる部分であろう。しかし、この発言をそのまま使うの「ブラタモリ」には驚かされるとともに、改めて「偉い」と痛感した。

シャレっぽく言うことには「本音と自分自身の安全保障」の気持ちが潜んでいる。黙っているより言ってしまった方が身の安全が図れるという気持ちもある。

一方、「鶴瓶の家族に乾杯」は、12月11日に美輪明宏さんをゲストに迎えて「幸せをありがとう 20周年SP 名場面を一挙放送」を放送した。アポなしの体裁を取り、ナレーションなしのこの番組が筆者は大好きで、以前は毎週見ていたが、最近見なくなった。

なぜ見なくなってしまったのか。それは、先ほどタモリの言ったポイントが次第に鼻についてきたからである。だから、筆者はタモリの発言を聞いた時に、同意しただけでなく、思わず笑ってしまったぐらいだ。

「鶴瓶の家族に乾杯」は収録方法でも重要な発明をしている。それはカメラの位置だ。有名人を連れてのロケは大抵、その有名人の後ろをマネジャーや関係者がゾロゾロと付いて歩き、大名行列や院長回診みたいになってしまう。

有名人が偉そうに見えるこのショットは好感を持たれない。それを避けるために徹底的に「追いカメ」、つまり後ろ姿のショットにしている。そしてそれを「ブラタモリ」もきちんと踏襲している。

「鶴瓶の家族に乾杯」は昔、世の中の普通を捉えて斬新だったが、今その位置にあるのは「ブラタモリ」である。

【あわせて読みたい】