<チコちゃんに叱られる>岡村隆史のNHK初レギュラー番組に感じる「志」


高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]

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NHKのクイズバラエティ番組「チコちゃんに叱られる」のレギュラー化が決まった。

昨年2017年12月27日、NHKで「チコちゃんに叱られる」の第3弾が放送された時も、久しぶりに何をやりたいかを感じさせてくれる「志」のある番組に思えた。クイズ番組だが、新聞のテレビ欄には「大反響!謎のくいず!岡村隆史をコテンパン無敵の5歳児チコちゃん」と書かれていた。岡村隆史をコテンパンの部分が番組の「志」である。

岡村隆史が筆頭のパネリストであり、この日は大竹まことがキャスティングされていた。彼らを取り仕切るのは5歳児という設定のチコちゃん。CGと着ぐるみの合成キャラクターである。番組の売りはなんと言っても、このチコちゃんが情け容赦ないツッコミを入れるところである。

「ツッコミがきちんと出来る芸能人がいない」というのは、心あるテレビマンの共通の悩みであろう。そのツッコミを託したのがチコちゃんである。

ツッコミとはどういうものか、記しておく。たとえば「いいかげんにしろ」「やめなさい」などをツッコミと考える人は多いと思うが、これはツッコミではない。「落としのセリフ」である。なぜなら「いいかげんにしろ」という言葉が発せられた時点で、それまでの流れは終わりになってしまうからである。続かないのはツッコミではない。

優秀なツッコミとはボケに次に何をやれば良いか指針を出すことである。「どうしたいんだよ」とか「微妙」とかいうセリフがツッコミで発せられれば、ボケは次はどうしようか、と考えることが出来る。つまりツッコミの言葉はフリを兼ねていなければならないのである。

で、この意味でツッコミが今絶滅の危機にある。芸人は自分より偉い芸人に媚びるばかりでツッコミが出来ない。優しい時代なのか、ツッコミの言葉が弱い。人に気を遣ってばかりいる、ツッコミはは強くキレのあるものが気持ちがいいが、たとえば「バカ」というツッコミ(もっとバカなことを言いなさいというフリである)は、不快を感じさせる時もある。

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だからテレビでは「バカじゃないの」などと軟化させて使用するわけだが、これはまだろっこしい。そのまどろっこしさをなくしてしまおうというのが5歳児チコちゃんの試みなのである。チコちゃんは5歳児だから岡村にも平気で「バカ」と言う。岡村隆史は矢部浩之の「やめなさい」などという凡庸なツッコミではない、強力な鋭い突っ込みを相方に持ったのである。

ところで、このチコちゃんを相方に得て、岡村がおもしろくなっているかと言うと、それはまだ発展途上であると言わざるを得ない。チコちゃんのツッコミに対応し切れていないのである。

その理由はおそらく「謎を解くという雑学クイズ」が出題されるという形式にある。たとえばこの日は「誕生日ケーキのろうそくはなぜ吹き消すか」などの、質問であったが、この出題解答の部分だけ昔懐かしい「世界ふしぎ発見(TBS)」の回答者が回答理由の能書きを述べているようにつまらないのである。

この番組をクイズにしない手はないのかなぁ・・・と思う。もっとくだらない、笑いを中心にしたものに出来ないのかのかなぁ、と。これは今、筆者が余計なお世話ながら考えていることである。情報とか雑学とかおばあちゃんの知恵とか、ニッポンがんばれとか。そういう役立つことに筆者はもう辟易している。筆者以外にも、そういったものばかりのテレビに、食傷気味になっている人は多いのではないか。

チコちゃんを演じているのは【声】とテロップが出る木村祐一だろう。ベストキャスティングだと思う。NHKは木村を最大限に守ってテレビ的な暴言をドンドン引き出して欲しい。制作はフジテレビの筆頭プロダクション共同テレビ。そして、4月13日から始まるレギュラー化は、岡村隆史としては初のNHKレギュラー番組だ。

 

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