柳瀬氏・昭恵氏の証人喚問が必要である理由 -植草一秀


植草一秀[経済評論家]

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内外に重大問題が山積するなかで国政の停滞が著しい。国会で森友事案が取り上げられたのは昨年2017年2月のことである。爾来、1年2ヵ月の時間が経過しているが問題は収束するどころか、さらに拡大する様相を示している。

このような問題で貴重な国会審議時間が占有されてしまうことは、主権者国民にとって望ましいことでない。このことから、問題を追及する側を批判する声が聞かれるが筋違いも甚だしい。国政が歪められている、しかも、その問題に一国の首相が深く関与しているとなれば、問題の全容を解明しなければならないことは当然のことである。

問題が収束せずに、1年2ヵ月もの間、取り沙汰されているのは、真相を明らかにする責務を負っている政府、政権の側が、問題を隠蔽する、公文書を改ざんする、説明責任を果たさない対応を続けているからである。

そもそも、この問題が政権の進退を左右する問題にまで拡大した主因は、安倍首相の国会答弁にある。昨年2月17日の衆院予算委員会で、安倍首相は「私や妻が関わっていたら、総理大臣も国会議員も辞める」と繰り返した。

この問題を安倍内閣総辞職問題に直結させた張本人が安倍首相自身であることを忘れることはできない。問題の解明が進むなかで明らかになったことは、安倍昭恵氏の深い関与である。

安倍首相が「私や妻が関わっていたら、総理大臣も国会議員も辞める」と国会答弁で繰り返した以上、安倍昭恵氏の関与の疑いが濃厚になった以上、安倍昭恵氏による説明が必要であることは、理の当然である。安倍昭恵氏に対して、いきなり証人喚問を行うのはどうかとの意見もある。

しかし、籠池泰典氏に対して、「いきなり証人喚問というのはどうなのか」という意見があるなかで、籠池泰典氏の証人喚問を強く指揮したのは安倍首相自身である。この経緯を踏まえれば、安倍昭恵氏の証人喚問を実施するべきだとの声に正当性があるということになる。

籠池泰典氏夫妻は安倍首相夫妻と昵懇の関係にあった。安倍昭恵氏は森友学園が経営する塚本幼稚園の教育方針に感涙し、「ここで培った芯が公立小学校に進学してはなくなってしまう」と憂い、森友学園による小学校新設を歓迎していたのである。

ところが、森友学園が国有地を不正廉売された疑惑が浮上すると、安倍首相は手の平を返して、籠池泰典氏のことを「しつこい人」と言い始め、裁判で罪が確定していないにもかかわらず「詐欺を働くような人」と公然と言い放ち、籠池氏の不当な長期勾留を黙認しているのである。

補助金の不正受給は補助金適正化法に抵触する疑いがあるが、専門家である郷原信郎氏などは、基礎猶予処分か罰金での略式起訴が妥当だと指摘する事案で、8か月超の長期勾留が強行されている。

極めて深刻な人権侵害が発生していると言えるが、その人権侵害行為は安倍内閣の指揮の下で行われているものだと理解されている。こうした経緯を踏まえると、安倍昭恵氏に対する証人喚問を実施することが必要不可欠であるとの見解には強い正当性があると言わざるを得ない。

安倍首相にとっても、疑いを晴らすには、安倍昭恵氏の証人喚問を受け入れるのがもっとも適正で、早道であると考えられるのである。各種世論調査も、主権者の大半が安倍昭恵氏の証人喚問実施が適正であると判断していることを示している。

加計学園事案では、2015年4月2日に、今治市と愛媛県の職員が首相官邸で柳瀬唯夫首相秘書官と面会した事実があるのかどうかが焦点になっている。客観的な証拠構造から、面会は行われた可能性が極めて高い。

ところが、柳瀬唯夫氏は、「記憶に基づく限りお会いした事実はない」と言い張っている。柳瀬氏の記憶力がそこまで劣化しているとはだれも考えない。面会した事実はあるが、そう証言できないから「記憶に基く限りお会いした事実はない」と言い続けているのだと考えられる。

事実を事実として認めない。真相を隠す。ウソをつく。こうしたことを繰り返しているから、問題がいつまでたっても解決しないのではないのか。その責任は安倍内閣の側にあるとしか言いようがない。

北朝鮮の問題、通商交渉の問題、中国、ロシア、米国との外交、そして、国内の経済政策など、重要問題が山積している。そのなかで、森友、加計、日報などの問題で貴重な国会審議時間が費消される現実は、国民に対して大きな損失を与えている。

こうした惨状を打破するために、安倍首相は速やかに安倍昭恵氏の証人喚問実施を快諾するべきだ。また、柳瀬唯夫氏は、国会の証人喚問の場で真実を話すべきである。

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植草一秀(うえくさ・かずひで) 1960年、東京生まれ。経済評論家(日本経済論、金融論、経済政策論)。東京大学卒業後、野村総合研究所、大蔵省財政金融研究所研究官、京都大学経済研究所助教授、野村総合研究所主席エコノミスト、早稲田大学大学院公共経営研究科教授、名古屋商科大学客員教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役社長。