野党党首会談で反自公共闘体制を確立すべきだ -植草一秀

政治経済

植草一秀[経済評論家]

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2001年2月10日、アメリカ・ハワイ州のオアフ島沖で愛媛県立宇和島水産高等学校の練習船「えひめ丸」が、アメリカ海軍の原子力潜水艦と衝突して沈没、日本人9名が死亡するという「えひめ丸事故」が発生した際、適切な対応を示さなかった森喜朗首相は、その責任を追及されて辞職に追い込まれた。

事故の第一報が入ったとき森首相はゴルフ場におり、連絡はSPの携帯電話を通じて入り、衝突により日本人が多数海に投げ出されたことや、相手がアメリカ軍であることも判明していたが、森首相は第三報が入るまで1時間半の間プレーを続け、危機管理意識上問題とされた。

翻って、本年7月5日の午後2時に気象庁は豪雨災害に対する警戒を呼び掛ける緊急の記者会見を開いた。実際に7月5日から豪雨が日本列島を襲い、平成史上最大の犠牲者を発生させた。気象庁が警告の記者会見を東京、大阪の2ヵ所で開いた7月5日の夜、安倍首相は赤坂の議員宿舎で開かれた「赤坂自民亭」と称する「呑み会」に参加し、どんちゃん騒ぎに興じていた。

「赤坂自民亭」は、

女将:上川陽子法相
亭主:竹下亘総務会長(島根県)

の体制で開催され、安倍首相はメインゲストとして参加した。安倍内閣は翌日の7月6日にオウム事件の死刑囚7名に対する死刑が執行されることが決めていた。その前夜に安倍首相と死刑執行命令を出した上川法相が祝杯を挙げていたのである。森首相が退陣に追い込まれたことを踏まえれば、安倍首相が退陣に追い込まれるべきことは当然であろう。森首相が退陣に追い込まれる流れが形成されたのは、メディアが森首相批判を大々的に展開したからである。

ところが、7月5日夜の「赤坂自民亭」でのどんちゃん騒ぎをマスメディアが大々的に報道しない。安倍首相の責任を追及するメディアの活動が著しく低調である。安倍内閣が「非常災害対策本部」を設置したのは7月8日午前8時になってからだ。多数の死者が発生し、平成最悪の水害が進行したのは7月6日のことだ。そして、死者200名以上が発生し、多数の国民が豪雨災害で非常事態に陥っているなか、安倍内閣は災害対策に全精力を注ぐどころか、災害対策を横に置いて、議員定数を増大させる法律、民間賭博場開設法の制定に全精力を注いだのである。

このような政治を放置してよいのか。日本の政治腐敗、政治堕落は最低最悪の極致に陥っていると言わざるを得ない。この政治を刷新することが求められている。政治を刷新するには、国政選挙で反対勢力が勝利することが必要である。

そのための方策を明確にしなければならない。まずは、2019年夏の参院選に勝利することが至上命題である。2009年の政権交代の伏線は2007年の参院選だった。この選挙から12年の時間が経過する。この選挙に反自公勢力が勝利することが、次の衆院総選挙での大逆転をもたらす基礎になる。参院戦の勝敗を決するカギを握るのは32ある1人区である。

1人区に安倍自公は当然のことながら候補者を1人擁立する。この候補者に立ち向かう、反安倍自公陣営の候補者を1人に絞り込むことが重要になる。この取り組みを直ちに始動させる必要がある。

まずは、安倍政治打倒を掲げる政治勢力は党首会談を開いて、参院選に向けての共闘体制確立の方針を確認するべきである。共闘体制確立に背を向ける勢力が存在するなら、その勢力は自公政治打破に消極的、あるいは妨害しようとする勢力だということになる。主権者は各党の迅速な対応を求めよう。

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