安倍内閣下での出生率上昇は絶望的 -植草一秀


植草一秀[経済評論家]

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入管法改定、水道法改定、漁業法改定、日欧EPA承認が強行された。種子法は廃止され、種苗法改定も視野に入る。安倍首相はハガタカの命令通りに動いている。命令通りに動けば、首相在任期間の延長に協力するとのオファーに応えたものなのだろう。

入管法改定は、日本の労働者が寄りつかない、きつくて、汚く、危険な低賃金労働を外国人に押し付けるための法改定である。外国人労働者は来日するために巨額の借金を背負う。この借金の存在があるために、奴隷的な労働環境を甘受しなければならない。

第2次大戦前の「前借金(奴隷)労働制度」と同じ図式の制度である。「デジタル大辞泉」は「前借金」について、次のように解説している。「雇用契約に際し,雇用契約期間終了後に支払われる賃金から自動的に引き落とすことを条件に,契約者に一定の金額が前貸しされる制度,およびその金銭のこと,〈まえがりきん〉ともいう。

2次大戦前の日本において,紡績・製糸(生糸)・織物等の繊維産業の女工,鉱山・土建・漁業等における筋肉労働者等,広い産業分野にわたってみられた。その基本的目的は,労働者を前貸資金による〈債務奴隷〉的な立場に置くことによって,雇主のもとに拘束的に隷属させ,労働強制を効果的に実現することにある。」

日本における外国人労働者の多くが来日のための借金を背負い、奴隷労働から簡単に抜け出せない状況に置かれている。その実態は前借金労働と類似したものである。失踪した技能実習生に対する聴取票の内容を法務省が改ざんして報告していた。7割もの技能実習生が、最低賃金以下の賃金で働かされていたのだ。

安倍内閣は失踪者は技能実習生全体の一部に過ぎないと主張するが、失踪していない技能実習生の労働条件も類似したものであると考えられる。巨額の「前借金」のために債務奴隷的な立場にあるため、人権侵害や不法な労働条件の下にありながら、失踪せずに、その場に止まらざるを得ない外国人が大半なのだ。

人手不足が深刻だというが、これは経済原理に対する無知を表明しているものだ。賃金を上げれば求職者は増える。年収1000万円を提示したら求職者が殺到するだろう。過酷な仕事なのに賃金が低いから人が集まらないだけだ。人手がかかる仕事の料金は必然的に高くなる。

人手がかかる仕事には高い料金を支払う必要があるのだ。誰もやりたがらない仕事だから外国人にやらせるという発想は、「人種差別」そのものだ。「フェアネス」という概念が欠落している。問題の根源にあるのは少子化、人口減少である。なぜ人口が減るのか。それは、安倍政治が人々から夢と希望を奪っているからだ。

労働者の所得を引き上げること、子育て、教育に国家が全面的な支援をすること、日本の将来に明るい見通しを示すこと。

これらが何ひとつできていないから、若い人々が、未来に夢と希望を持てなくなっている。これが人口減少、少子化の原因である。しかし、安倍内閣は労働者の処遇引き下げにしか力を注がない。人手不足の職種の賃金を引き上げる方向に政策を推進すれば、これらの仕事に就く労働者は増える。しかし、安倍内閣は外国人に奴隷労働を強制して、過酷な労働の賃金をさらに引き下げようとしている。

大資本だけが栄えれば、国民はどうなってもよいという政策のスタンスが、すべての元凶なのである。「資本栄えて民亡ぶ」ことになるのは間違いない。

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植草一秀(うえくさ・かずひで) 1960年、東京生まれ。経済評論家(日本経済論、金融論、経済政策論)。東京大学卒業後、野村総合研究所、大蔵省財政金融研究所研究官、京都大学経済研究所助教授、野村総合研究所主席エコノミスト、早稲田大学大学院公共経営研究科教授、名古屋商科大学客員教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役社長。