著名人の麻薬・覚醒剤事案が増える政治の季節 -植草一秀

植草一秀[経済評論家]

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本来は政治の季節だが、政治の話題がまったく盛り上がらない。

通常国会開会中で、予算審議が佳境を迎えている。第2次安倍内閣が発足して丸6年の時間が経過し、日本がずたずたにされた。日本経済は超低迷を続けている。しかし、大企業利益は空前絶後の規模に達し、大資本の利潤は激増している。経済が超低迷しているのに、大資本利益が激増していることは、そのしわ寄せが労働者に一手に押し付けられていることを意味する。

労働者一人当たりの実質賃金は第2次安倍内閣発足後に5%も減少した。メディアはアベノミクスをはやし立てるが、アベノミクスの実態は「資本栄えて民亡ぶ」の方向にまっしぐらに突き進む日本経済、というものだ。2019年度予算審議で、何よりも重大な問題は、2019年度消費税増税問題である。安倍内閣は2019年10月に消費税率を8%から10%に引き上げることとしている。これを実施すれば、消費税増税不況が生じることは間違いない。消費税増税強行実施はあり得ない。国会論戦では消費税問題を徹底追及するべきだが、国会論戦がまったく報道されない。

メディアが安倍内閣の意向を踏まえて国会論戦を報じていない面もあるが、実際に国会そのものが盛り上がっていないという面も否めない。4月には統一地方選、衆院補選があり、7月には参議院議員通常選挙が行われる。衆院総選挙も衆参ダブルで、あるいは、年内に単独で実施される可能性がある。

2019年は最大の政治決戦の年であるが、政治問題がまったくクローズアップされていないのだ。政治権力に迎合するメディアは、人々の関心が政治に向かわぬよう、細工を施す。

2009年夏、芸能人の麻薬事案が世間を賑わせた。結局、2009年8月30日の総選挙で民主党が大勝し、政権交代が実現したが、日本の支配勢力は、市民の政治意識が高まるのを妨害したかったのだ。

2012年12月の選挙に向けては、突然、PM2.5が連日の大報道になった。人々の関心が政治に向かうのを妨害するための情報工作であったと考えられる。

2014年夏にも芸能人の麻薬事案が表面化した。集団的自衛権行使容認の憲法解釈変更を強行しようとしたタイミングである。

ここにきて、再び芸能人の麻薬事案が取り上げられている。この問題は他の芸能人に波及する可能性がある。参院選に向けて、市民が政治に関心を向けぬよう、情報工作が行われているように見える。安倍内閣の統計不正問題は内閣を吹き飛ばす意味を持つものだが、メディアが政治権力に迎合して適正な報道を展開しない。そのために、内閣の責任が問われない。政治空間そのものが腐敗してしまっているように見える。

しかし、消費税の問題は深刻である。消費税率10%が強行されれば、日本経済は完全に沈没するだろう。しかし、安倍内閣は参院選前に消費税増税を延期する可能性がある。このことを含めて野党勢力は対応するべきだ。選挙で野党勢力が勝利するには、少なくとも「消費税率5%への引き下げ」を明確な公約にして掲げることが必要だ。「消費税増税中止」では、安倍内閣が消費税増税中止を打ち出すと、効果はゼロになってしまう。立憲民主党と国民民主党の幹部は、消費税率を10%に引き上げる政策決定に関与している。

そのために、対応が鈍くなっているのかも知れないが、その制約すら打破できないなら、政権奪取など夢のまた夢である。「消費税率5%への引き下げ」を共通公約として明示するべきである。

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