鳩山元首相が「共和党」結成準備会合を開催 -植草一秀

政治経済

植草一秀[経済評論家]

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鳩山友紀夫元首相が10月25日、新たな政治団体「共和党」の結成に向けた初の準備会を東京都内で開かれた。同党では鳩山氏が代表を意味する「棟梁(とうりょう)」に、首藤信彦元衆院議員が党首を指すという「物差(ものさし)」に就く見込みである。

鳩山首相は首藤信彦氏と共著『次の日本へ-共和主義宣言-』(詩想社新書)を刊行された。鳩山氏は、本ブログ、メルマガでも紹介させていただいた『脱大日本主義』(平凡社新書)を2017年に刊行されている。この書のなかで鳩山元首相は、「『大国への夢』が幻になろうとしている今、日本はいかにあるべきか」を説いている。

鳩山氏はリージョナリズムで自立と共生の道を模索すべきであると述べる。そして、その後、政治哲学についての考察を深め、「共和主義宣言」を発するに至った。10月25日の会合で鳩山氏が講演し、いまなぜ共和主義宣言なのかを熱く語られた。

上掲書『明日の日本へ』あとがきで鳩山氏は次のように述べる。

「私たちが教科書で習った三権分立はいまや存在していない。安倍首相自ら、自分は立法府の長と何度も申したように、議会は形骸化し、官邸の意のままに動く、熟議とはほど遠い状況となっている。行政は内閣人事局の悪用により、官邸に戦々恐々で官邸を向いて行われている。司法は砂川裁判を重視して国家の重要案件ほど最高裁は違憲性を判断しなくなっている。たとえば、安保に関する国家対地方(沖縄)の裁判では必ず国家に軍配が上がることになってしまっている。」

「安倍長期政権が続くなかで、この国は全体主義国家化しつつあるのではないかとの不安を覚える。安倍政権がメディアの首根っこを押さえているので、批判しないメディアがそれを助長させている。さらには学界も官邸を忖度して、たとえば、福島で多発してしまった子どもたちの甲状腺がんは、原発事故によるものとは言えないとしている。鯛は頭から腐ると言うが、日本は政治、行政、司法、メディア、学界などの中枢が腐りかけていると思えてならない。その原因を突き詰めていくと、この国は真の意味で独立国ではないことに気づく。」

私は拙著『日本の独立』(2010年、飛鳥新社)副題を「主権者国民と「米・官・業・政・電」利権複合体の死闘」としたが、この出版記念講演会に駆けつけて挨拶をしてくださった鳩山元首相が、「米・官・業・政・電」の五者に「学」が加わるのではないかと話されたことを鮮明に覚えている。

もちろん、鳩山元首相は2009年の政権交代による日本刷新を完遂できなかったことに対して痛切な反省を示されている。

「このような日本になってしまった責任を私は痛感している。既得権益層の癒着に憤慨して、新しい政治を興せとの大きなうねりに乗って、2009年、国民の選挙による政権交代が実現した。民主党政権は対米従属からより自立した日本へ、さらに政治、行政、メディアのあり方などを根本から変えようとしたが、私はアメリカへの依存の象徴である普天間の海兵隊の辺野古への移設を最低でも県外へと求めて失敗し、改革は頓挫した。私の失敗を目の当たりにした後継の政権が、アメリカへの歩み寄りを強めて、アメリカという国体の下で全体主義的な色彩を濃くしてきたというのが事実であると考える。本来ならば、そのような人間は政治の世界から足を洗うべきであるかと思う。そのつもりでもいた。しかし私が政治から離れた7年間の政治の推移を見て、それに責任がある者として、居ても立ってもいられなくなったというのが正直な気持ちである。」

「かつて小渕首相は富国有徳を掲げておられたが、早世されてしまわれた。いまこそ日本は、経済的にも政治的軍事的にも強い大日本主義を目指すのではなく、ミドルパワーの国として、人間にも自然にも愛をもって接する徳のある国を目指すべきではないか。文字通り、あらゆるものと共に和する、しかしながら和して同ぜずの自立と共生の社会のリード役を日本が演じるのだ。」

鳩山氏と首藤氏による新著をぜひご高覧賜りたい。

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