<芸人用語を勘違いする人たち>芸人以外の人は「ボケ」でも「ツッコミ」でもない

エンタメ・芸能

高橋秀樹[放送作家]
2014年6月6日

 
「僕はツッコミタイプだから」「どっちかというとボケキャラかなあ」などと、芸人以外の一般の人も言うようになってしまったのは嘆かわしいことである。
世の中は「ツッコミとボケの二項対立で成り立っている」なんていう主旨の本も発売されたりして、それはとんでもないことで、世の中はもっと複雑怪奇である。トリオのコントではボケとツッコミと、「ニヤケ」と呼ばれる人がいた。わかりやすく例を挙げるとダチョウ倶楽部では寺門ジモン。「ニヤケ」とは、傍観者のことである。
ところで、芸人も「ツッコミ」という言葉を誤解している。「いいかげんにしろ」はツッコミのせりふではなく「オトシ(落とし)」のセリフである。オトシは、「それで終わり」という合図である。わかりやすく言えばさまぁーずの三村が言うツッコミだとみんなが思っているセリフはオトシのセリフで、それでそれまでの話題は終わりということ。次の話題に転換するのである。だから、さまぁーずのコントは単発の笑いで、笑いが積み重なってゆく重層的なコントにはならない。
で、ツッコミはなにか、というとちょっと例が古いが、タカアンドトシのトシの発する「欧米か!」は、ツッコミのせりふである。なぜなら、
「ツッコミとはボケに対する指示」のことだからである。
「欧米か!」と、頭を張り倒されたタカは次も「欧米みたいなことを言え」とトシに指示されているのである。次々と「欧米っぽいこと」を言えば笑いが重層的に積み重なっていくのである。うまくいけば、会場から波状攻撃のように笑いが来るかもしれない。
というわけで、「欧米か!」というツッコミは、言葉としても語感としてもはじめて聞くものであり、それだけでタカアンドトシはブレイクしたのである。
ところで、ボケに対するよいツッコミは「的確なことをできるだけ曖昧に言う」のがコツ。それに対するボケは「ツッコマれたら、ひとつ足す」のが優秀なわけだが、ここまで行ったのだから具体例は自分で考えなければ、いい芸人にはなれない。
だから、一般の人はこんな無駄なことは考えなくても良いのである。
 
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