NHK『あさイチ』の見る司会者・博多大吉の非凡さ

高橋秀樹[放送作家/発達障害研究者]

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「それは全然違う、九州男児が炎上する」そう言うと、近江友里恵アナウンサーをさえぎって大吉は間髪入れずに否定した。そのきっぱりさに本日のテーマに興味が持てなくて、ながら聴きしていた筆者は思わず画面を振り向いた。

NHK『あさイチ』、ある日のネタ、小説『Red』の作者・島本理生氏と、その小説をを映画化した三島有紀子監督のトーク。

小説『Red』の内容はamazonの商品ページに次のように紹介されている。

「夫の両親と同居する塔子は、イケメンの夫と可愛い娘がいて姑とも仲がよく、恵まれた環境にいるはずだった。だが、かつての恋人との偶然の再会が塔子を目覚めさせてしまう。胸を突くような彼の問いかけに、仕舞い込んでいた不満や疑問がひとつ、またひとつと姿を現し、快楽の世界へも引き寄せられていく。上手くいかないのは、セックスだけだったのに――。」(amazonの商品ページより)

筆者はぜったに読まない自信がある「女性の自立を描く」小説。見ないと断言できる映画だ。こうした小説や映画にきっと興味を抱く人々が番組のメインターゲットと考えるNHKのひとが、島本・三島両氏をトークに招いたのだろう。

[参考]<強烈な場違い感>安住アナがビートたけし再婚に「水くさい」

島本は「パートナーが子どもの料理をはじめ、たくさんの料理をつくってくれてありがたかったが、自分がこんなにも何もやらなくていいのだろうかと悩んだ」との趣旨の話をする。これに対し大吉は「そんなことを考えているなんて、(既婚なのに)初めて気づいた」と返す。

そこで近江が口を挟む。

「映画の中にも、夫が、妻がつくったハンバーグをお腹がいっぱいだから食べないと言い、直後に 母のつくった煮物は食べるというシーンがありますが」

それに対し、大吉は「それは違う、それは、今話そうとしている、テーマとは全く違う。おなじことにしたら、こんがらがって、結局九州男児はとなって炎上する」。華丸も分かっていないので援護射撃だと行って「僕はハンバーグも煮物も両方食べる」と言う。

大吉は「それは援護射撃になっていない」と気色ばむ。女性の自立について深く話して見ようと言う大吉のもくろみは結局頓挫した。もうちょっと話」を盛り上がらせないと、ただの映画宣伝になってしまう。単なる宣伝ならNHKでは禁止である。

今回のように司会者どおしで齟齬が出来てしまった場合は、シーンとさせてはいけないのが決まりだ。通常は笑いにして和ませる。

「煮物とハンバーグって。つくるものがベタすぎるんじゃない」

でも、博多大吉は笑いとして処理せず、怒った。そこが大吉の非凡なのである。芸人仲間から畏敬を込めて「大吉先生」と呼ばれるように彼は、思索の人である。凡百の芸人が情報番組の司会者に転じて笑いを捨てているが、大吉はその凡百にはない、マジ、頬に薄ら笑いを浮かべてではなく、司会が、できるのである。

『あさイチ』に博多華丸・大吉をキャスティングしたNHKの、慧眼には敬意を表する。

ところで、芸人には、思索情報感動、見ても見ぬ振りをして何が何でも笑いにする人がいるが、その人の名は明石家さんまという。

 

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