映画「アフリカ珍道中」がただの荒唐無稽では終わらない理由

高橋秀樹[放送作家/発達障害研究者]

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1941年のアメリカ映画「アフリカ珍道中」(ヴィクター・シェルツィンゲル監督)はひとことで言えば荒唐無稽な映画である。だが、見終わった感想はただのお馬鹿な映画では、終わらない。

「荒唐無稽」は話の内容を知ればすぐ分かる。

ビング・クロスビー、ボブ・ホープのアメリカ人ヴォードビリアン二人組が、詐欺師まがいのドロシー・ラムーアたち、女二人とアフリカ横断の旅に出る。その「道中」で食人族に出会ったり、ゴリラとレスリングしたり、魔女が絡んできたりの大騒動なのだ。

しかし、これを支える4つの点が映画としての格をあげる。体技(芝居)、歌、ダンス、そして美術セットである。

歌とダンスは、さすがビング・クロスビーとボブ・ホープである。難度の高いものを軽い感じで演じているので、見ながらにやにやしてしまう。

[参考]<コロナ巣ごもりは名作映画を>『七人の侍』は公開当時は年間3位

体技(芝居)も目が離せない。

ジャングルで倒木の上に腰かける二人。ドロシー・ラムーアに言い寄られてメロメロになったボブ・ホープが、足がしびれて立てなくなる見事な芝居。そうそう、そうなるかも知れないと感心する。

最高なのは美術セットだ。

ジャングルの谷を流れる人が水没してしまうほどの深い川。これを、セットに組んで表現しているのだ。もちろんセットだと分かるのだが、セットであるからこそ、細部の作り込みなどに見る方は驚かされてしまう。

さらに、こういう所でも決して手を抜かない。食人族に追いかけられるビングとボブ。その食人族の数が半端でないほどの多さだ。もちろんエキストラをそれだけの人数、雇ったのである。

黒人の表現の仕方もあって、今では作れない映画をこうしてDVDで見られるというのは何という幸運だろう。

 

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