<大学生協が倒産危機に>「コロナ」でなくなるキャンパスライフ

山口道宏[ジャーナリスト/星槎大学教授/日本ペンクラブ会員]

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「えーッ! それだけ?」と、誰もが疑問に思って不思議はない。

厚労省によれば「コロナ」の影響で「解雇」「雇止め」は6万439人という(2020.9.23現在)。しかし、我が国の労働者総数は6655万人(2020.7)だから「コロナ禍」にあってその数字は実感できない。それもそのはず、あくまで労働局やハローワークが把握する「解雇」「雇止め」だ。総務省は4月時点で「営業自粛で休業者は597万人」と発表していた。

身近にも「廃業」「閉店」「縮小」「中止」は飲食や観光ばかりではない。「コロナ」の貧困連鎖はますます拡大している。では、「休業者」はどこへ? 人々は<潜在的な失業者> となり休業後に失職となるケースは多い。また「非正規」ほどその割合は高く「人手不足」も大きく事情が変わったから「完全失業者」(2020.7現在197万人・総務省)、すなわち誰もが生活保護受給の予備軍になっている。

では、こんな事態をメディアはどうか。 総理交代で政府が喧伝する「GOTO」「ハンコ」「不妊治療」「携帯値下げ」「デジタル庁」はしきりに報じるも、肝心の「検査難民」「医療崩壊」「介護崩壊」「コロナ倒産」「予備費10兆円」の<いま>への追跡が、見えない、伝えられない。

そんななか、リアルな就労実態は、こんなとろにもある。

「もう(食堂には)もどれない」と、ベテランのコックさんが哭いている。ある大学生協では年商30億円程度あったという。従業員30~40人とパート200~300人だから大規模クラスである。その大学では、今年の4月から「コロナ」でロックアウトになり、いまも「(職員のキャンパス滞在は)事務手続きのみ」の通達ままだ。即ち「用事(?)」 がすんだらすぐ帰れというものだから店舗、食堂、図書館、喫茶も閉店を余儀なくされている。

政府の休業補償の「雇用調整金」といっても 12月末までの特例措置で、それが切れたら「リストラは必至」というから、従業員の中には不安が広がっている。既に「依願退職」する人も出てきたという。

ところで、大学生協の取扱い商品は広い。「購買」といっても、文具、パソコン、書籍をはじめ、食品、スポーツ関連、大学マーク入りグッズ、旅行商品、自動車教習所、資格試験予備校、下宿の斡旋などなど。「下宿の紹介から電化製品、鍋から醤油、味噌まで生協でした」とは、ある卒業生。そこは、ときを超えて学生生活の依り所だ。

「なんの落ち度もないのに、辞めてくださいなんて。」(部門主任)

4月半ば、同生協ではいくつかの部門に「下請けを切れ」「パートを切れ」と本部からの指令が出た。「20年来の、いい業者、いい仲間だった」(同)という。対象は30人だという。

[参考]<記者こそ素人?>「ど素人NHK前田会長の大暴走」記事に違和感

また、少し経つと次のような指令があった。たとえば食堂部門から建物管理部門への異動で仕事をあてがえ、というものだ。食堂のコックは戸惑いながらも「研修」に参加。「(コロナで)町にも仕事がないし、背に腹はかえられないから」と呟くと、鍋を持つ手にモップがあった。ただし「これだっていつまでもつことか?」と、深い溜息をつく。

キャンパスライフがない、ということは消費もないということだ。食堂も、図書館も空っぽのなかで、大学生協をはじめとするキャンパスライフをサポートする事業者もコロナ禍で大変なことになっている。

大学生協といわれている事業体は、全国に240程度。また大学に生協がない大学の学生が入れる生協が全国に6団体、大学生協連に入っている専門学校や高等専門学校の生協もある。その他にも大学直営の購買会や大学の子会社、大手コンビニやOB企業が運営している店舗や食堂がこの2倍以上はあるといわれている。学生数が万単位ともなれば、大学生協はおおよそ200~300人のパートを採用し「パートさんは屋台骨」(役員)という。たとえば200人×100校で20,000人、200校で40,000人になる計算だ。

「もともと閑繁の差が激しい業界ですので、経営が安定しない事業者もあります。コロナで、新学期に仕入れた教科書代金の支払いを待ってもらっているところもあると聞いています」(同)

後期からは、大半の大学で対面授業の7割程度が復活するという。しかし教室の「三密」状態を避ける目的と本人や保護者の通学可否の意向も踏まえるため、授業は「オンライン授業と併用」が多い。

「後期が始まっても、来校者は従来の半数以下になることが予想されます。その状況での営業は、赤字必至です」(同)。

「ここなら安心、しっかり食べなさいよ」と、入学式に付き添った母親は息子に、学生食堂のメニューをみて、そう念押しをしていたものだ。大学生協の食堂で「3食をここで」という学生も少なくないという。

しかし今、キャンパス内の福利厚生事業の「正常化」は見通せない。

 

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