<ネットが変える選挙>中途半端な「県」の選挙の着眼点

社会・メディア

水野ゆうき[千葉県議会議員]

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千葉県知事選挙が終盤に差し掛かった。これまでの千葉県知事選挙の投票率は残念ながら低い。前回の平成29年に施行された千葉県知事選では現職・森田健作知事が3期目を目指して挑み、100万票以上を獲得した圧勝の選挙であったものの、投票率は31.18%。前々回の平成25年においても31.96%という数字だ。

しかし、今回は新人同士の選挙ということに加え、豊富な異色候補の存在、千葉市長選や浦安市長選も同日投開票ということもあり、投票率向上に期待を寄せたいが、投票所では新型コロナウイルス感染症感染拡大防止策に万全を期し、県民の不安も払しょくしなくてならない。

一方で、異色候補やエンタメ展開が連日メディアを賑わし、Youtubeなどは彼らを追った動画にあふれている。毎度のことながら、テレビや週刊誌もそれを追随している有様だ。

Youtuberにとっては手っ取り早い再生回数確保のコンテンツなのだろうが、選挙という本来のあるべき姿ではないが、それでも前回の参議院選挙でN国党が当選したり、都知事選挙でも話題となったスーパークレイジーくん(本名:西本誠)が埼玉県・戸田市議に当選するなど、異色候補を囲むエンタメ選挙、Youtuber選挙が侮れないことも事実である。

ところで、筆者のような無所属の候補者にとっては、投票率が非常に重要である。特定政党や団体からの出馬となれば、確実に関係者が投票へと足を運んでくれる。しかし、支持母体やなんの後ろ盾もない無所蔵の候補者はそうはゆかない。しっかりと課題解決の具体策やビジョンなど政策を訴えて、投票所まで足を運んでもらうように365日地域のために活動する。雨が降れば選挙に行かないような有権者に対しても、「ぜひ、この人に一票入れよう」と思っていただき、投票所まで足を運んでもらえるように、しっかりと想いや政策を届けてゆかねばならないからだ。

政党からの人や金もおりてこないために、家族やボランティアに支えられての選挙戦となり、毎回、倒れこむほどの活動量をこなし、政治に関心を持っていただくように工夫し、努力をする。しかし、筆者が出馬する県議会議員選挙でも知事選同様に投票率は30%台だ。

市議会議員選挙の場合は少し違う。例えば筆者の地元である我孫子市では30名近くが出馬するが、候補者の分だけその関係者や親戚、同級生等の縁故有権者が投票に向かうため、投票率は40%以上と高まる。市民にとってわかりやすい市長選挙も投票率は比較的高い。国政選挙もマスメディアでの報道が多いために、地方選挙に比べると関心と投票率は高いと言える。

一方で、筆者の戦っている県議会選挙はといえば、いわば「中二階の選挙」であり、市民にとっては中途半端な立場であり、遠く感じる政治になりがちだ。実際に、筆者も会社員だった頃の県議会議員選挙や県知事選挙では、なんとなく報道で知り得た時の情勢を加味して投票していた記憶しかない。

しかし、市議になった途端にいかに「県」というのがある意味、厄介かということを目の当たりにした。政令指定都市でも中核市でもない市町村では、児童相談所や保健所の権限・管轄はすべて県だ。湖沼や国道・県道といった主要道路の維持管理も県。

筆者の住む我孫子市には県と市の複合施設・けやきプラザが我孫子駅前にそびえたつ。県民の高齢者支援及び障がい者支援の拠点施設という位置づけで千葉県の管轄として福祉ふれあいプラザが入っており、我孫子市としては市民生活の拠点施設として、千葉県と我孫子市それぞれの役割分担のもとに整備しているが、好立地な場所ということもあり、施設のあり方には多くの意見が出ている。

横断歩道や信号などの警察関係も県である。しかし、我孫子市にあるものは我孫子市で管理しているとついつい誰でも考えてしまいがちだ。県政に関わる政治家がもっと市民・県民に市政・県政・国政の違いについて説明すべきである。筆者が県議1期目は、県政の役割を粘り強く市民に伝えてきた。どれだけ、県政が市民生活に影響を与えているか、を。野田市で発生した児童虐待死事件でおそらく初めて児童相談所は県が運営しているということを知った人も少なくないであろうし、実際に新型コロナウイルス感染症の対応も都道府県が保健所を運営している(政令指定都市・中核市等は独自設置)。きわめて県の役割が大きく、そのリーダーを決める非常に重要な選挙なのだ。ひとりひとりが持っている貴重な1票を無駄にしないようにと千葉県内ではあらゆる取り組みが行われている。

[参考]容姿で渡辺直美を侮辱する五輪演出家問題から考える「わきまえた女性」

若者の投票や政治参加を促す一般社団法人「NO YOUTH NO JAPAN」に所属する県内の大学生ら30人が始めたのが、投票済証明書を持参すると飲食店などでサービスを受けられる「選挙割」などのプロジェクトだ。まずは関心を持つことが大切なのではないか、と我々の世代も共感している方々多い。

千葉県銚子市では車を使った移動式の投票所で期日前投票を受け付ける新たな取り組みが行われている。施設の老朽化や経費削減のため、約4割の投票所が廃止されたことから、投票所までの距離が遠くなった地区の住民のために導入された「移動期日前投票所」は、投票箱などを車に積んで臨時の投票所を開設するもので、6か所を巡回して期日前投票を受け付ける。

県民一人一人の一票が千葉県を、自分の住んでいる地域を変えていく。行政が積極的に投票率向上に取り組むことが必要なのは言うまでもなく、有権者たち自らが何かしらのアクションを起こしていくことで、確実に政治は変わっていくとともに、あらゆる層の有権者の目があることは政治家の襟を正すことにもつながる。

政治は政治家のためにあるのではない。もちろん、Youtuberの動画素材やワイドショーのゴシップのためのエンタメ製造機でもない。市民・県民・国民の為にある。主要政党同士の政治力学に支配されるようなものでもない。実際、政党などの支援を一切受けない筆者であっても、1日1日の地道な活動や市民一人一人の力によって、無所属でもしがらみのない仕事ができている。

それはひとえに、インターネットによって、個人が様々な情報発信ができるようになったからにほかならない。筆者も、あらゆるツールと環境を駆使して、情報発信をしている。もちろん、批判や反論を受けることも多いが、それでも、情報発信ができなければ、存在さえ認知されないのだから。地方の首長選挙にも関わらず、異色候補たちが国政選挙なみ注目を集め、メディアを賑わせていることも、その功罪だろう。

政党政治色が強くなっている「県」の選挙の場合、筆者などは、ひと昔なら確実に泡沫候補だっただろう。しかし、多様なツールと環境を駆使することで、何の後ろ盾もない政策だけで闘う元会社員の女性であっても、政治の世界に入って、地域の声を代弁できるまでになっている。そして進めることができている。だからこそ、その一票を決して無駄にしないで欲しいと心から願う。

 

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