TBS「ラヴィット!」が成功するためのいくつかの提案

高橋秀樹[放送作家/発達障害研究者]

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TBSが朝8時から新番組『ラヴィット!』を始めました。バラエティ番組だそうです。今の所、視聴率は低迷していますが、TBSの同時間枠は『はなまるマーケット』以来、いくつもの番組が時間枠そのものを荒らしまくってきたために土地が荒れており、ここに新しい家を立て、更に視聴習慣という堅固で高いハザードを乗り越えるのは、並大抵の努力では叶うものではありません。本稿は『ラヴィット』が成功するためにいくつかの提案をするために書かれました。

公式HPには番組のコンセプトが以下のように謳われています。

日本でいちばん明るい朝番組。『ラヴィット!』/今の暮らしが10倍楽しくなるライフアイデア発見バラエティ!/ニュースなし!ワイドショーなし!/「衣」「食」「住」「遊」をテーマに、一流のプロ達の本当は教えたくない“お気に入り=Love it(ラヴィット)”を通じて、すぐに手が届く「楽しい!」をお届けします!

率直にいって、少し長すぎると思います。もっと短くできれば。一行で収まるコンセプトを考えたほうがいいと思います。「日本でいちばん明るい朝番組」なのか「ライフアイデア発見バラエティ!」なのか「ニュースなし!ワイドショーなし!」なのか、どれがコンセプトかわかりません。コンセプトというのは番組の志です。月曜日から金曜日まで100人を超えるスタッフが一丸となって目指すべき目標です。考えも力量も異なるスタッフが目指すべき指針となるものです。外に(視聴者に)向かって言うべきことではありません。見る人にとっては打ち出されたコンセプトなどはどうでもいいのです。感じられればいいだけです。

『はなまるマーケット』には、明快なコンセプトが最初から与えられていました。TBSはオウム問題を契機にワイドショウを全廃するのが会社の方針になりました。そこでコンセプトは自動的に決まり「脱ワイドショー」、つまり「ワイドショーではないこと」になったのです。最初に集まった5人のスタッフは「ワイドショーではないこと」とはどういうことなのか、毎日集まって考えました。しかし、これは裏コンセプトにはなっても、多くの他のスタッフに伝えるコンセプトとしては否定的で伝わりにくいというのが5人の結論でした。そこで、チーフプロデューサーがある提案をしたのです。

「病院の待合室にいる人も安心して見られる番組」

全員賛成でした。でもこれとて、スタッフ用の裏コンセプト。そこで、筆者が提案したのは「見ている人が『はなまるマーケット』のファミリーに加わりたいと思えるような番組」です。台本の1ページ目にはこの言葉を印刷し、毎日スタッフに配られました。メインの岡江久美子さんより年上の人はレギュラーにしない、殆どは女性にすることも決めました。

『ラヴィット!』でもラヴィット!ファミリーと言うことばを使っているようですが、

(1)ラヴィット!ファミリーに加わりたくなるような座組ですか?

『はなまるマーケット』では、番組の形がほぼ固まった頃、筆者がある提案をしました。「番組冒頭に1 分30秒時間をください。MCの岡江さんと薬丸裕英さんに、毎日フリートークをしてもらいます」通常ワイドショーは冒頭、刺激的なVTRで始まります。トークでは視聴率が取れないという長い経験則があるからです。反対されるかと思ったのですが、。でも、そこは脱ワイドショー、5人全員一致で賛成してくれました。

こういう事を何故言いだしたかと言うと、筆者のオリジナルのアイディアではなく、ラジオでの経験からです。ラジオ関東の番組を担当した時、進行表を書いていたら、プロデューサーにこう言われたのです。「冒頭は大きく四角で囲って空欄にしておいてくれ」「そこはパーソナリティが考えたきたことを話させるから」ああ、そうか、と筆者は深く納得しました。前々から、何にも考えないでスタジオにやって来る芸能人が多くいることを腹立たしく思っていたからです。進行表に空欄があることでパーソナリティを初めてやる人も、回を追うごとにトークが上手になっていきます。松原みきさん、森進一さん、チャゲ&飛鳥、最初から上手だったのがチャー。

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この方法をテレビでもやれないか。そう思って最初にやってみたのが『王様のブランチ』です。でもだめでした。フリートークができないのです。普段から面白いことを探している芸人と違って、俳優である寺脇康文さんにこれを強いたのは筆者の大ミスです。ごめんなさい。テレビはラジオのように待ってくれない。だめな部分は躊躇なく引き算をしなければならないので2回目からやめました。

そして、満を持して岡江さんと薬丸さん。見事でした。岡江さんは芸能人のオーラを消せる特異な人ですが、喋る内容はまさに主婦の立ち話そのもの、薬丸さんはちょっとうるさい旦那タイプですが、岡江さんの勢いに適切に合わせてくれました。いわゆる主婦の立ち話がテレビで再現されているのです。見ている主婦たちは「あの立ち話にわたしも参加したいなあ」と思っているだろうなあと筆者は感じていました。このオープニングトークは1 分30秒どころか、どんどん長くなって行き5分を超えました、分刻みの視聴率で確認すると、その間、どんどん数字が上がり続けているのです。

翻って『ラヴィット!』の川島明さん(麒麟)も、冒頭で話をしています。川島さんは漫才師で話のプロです。内容は面白くて当然です。普通の話ではなく、すべらない話が求められます、別の意味で大変です。ある回では「その日は娘の入園式当日で、可愛らしい娘を見ていたら番組を休んで式に出ようかと思った」と話し、スタジオは笑いに包まれます。いけないのはその後、大阪の笑いの人の悪い癖で、すぐ落としに行くのです。「休んだらだめでしょ」の大合唱。田村真子アナウンサーも同調します。これでは話がそれで終わってしまいます。話を盛り上がるようにするには、田村アナウンサーが「休めばいいんですよ」と言ったらどうでしょう?「私が代わりにやっときますから」「いや、ダメダメ休まへん」と話が広がります。

(2)川島さんの冒頭のトークには破調が必要だと思いませんか?

一人で面白いのは往年のビートたけしさんと、絶頂の横山やすしさんくらいです。

(3)長い拍手とともに出演者全員を写すショットは必要ですか?

必要だという人はもちろんいるでしょう。でも、そこをカットしても視聴率は下がらないと判断するなら、一人でも嫌悪感を感じるところはカットしたほうが良いです。カットしても視聴率は下がらないのですから。番組はマイナス、引き算で作らなければならないこともよくあります。積極視聴の番組を狙うか、消極視聴の番組を狙うか、いつも20%を狙う必要はないのですから、どちらもあるというのが筆者の考えです。

どの冷凍食品が美味しいかのランキングを、番組のターゲットとする若い主婦は本当に見たいのでしょうか。他の番組でもやってはいましたが。

(4)番組は主婦を侮っていませんか?

「冷凍食品にはしたくないけど、今日は疲れたから、これで済ませたい。だけど少しでも美味しくしたいから、なんかの番組で言ってたけど、冷凍食品は袋に書いてある調理法を厳密に守って作ると美味しいのよね。でも、なんでなの?」など、結構高度なことを考えているのが主婦です。主婦は大変な情報通です。ディレクターのあなたなんかよりずっと食品のことを知っています。さわらの旬も知らないディレクターは主婦の知りたいことを謙虚に学習しなければなりません。

前の質問を変えます。

このコーナーを作った人は毎日スーパーマケットに行ってますか。『はなまるマーケット』で、こんな事がありました。ディレクターがから「白菜一個のまるごと使い切り術」を、やりたいとの提案です。大反対しました。白菜をまるごと一個売っているスーパーはもうありません。6分の1カットで売っているのが普通です。ならば。6分の1白菜の目利きのほうが主婦は知りたいです。

漫才の見取り図が、ホットプレートの新しい使い方を巣材していました。

(5)リポーターは(見取り図)は、取材の内容に本当に興味がありますか?

食リポには慣れているのでしょう。上手でした。でも、本来のホットプレート利用法には興味がないのでお付き合いしている感がいっぱいでした。こういうのはバレます。せめて、リポーターとは『ラヴィット!』の取材守備範囲内で何が興味があるか打ち合わせしてください。そこにお宝が潜んでいるかもしれません。あっ、それからアンケートを配って芸能人に取材するのだけは止めてください。どの番組もアンケート、アンケート。芸能人はアンケートを書くのにもういい加減嫌気が差しています。それから、TBSも含めて在阪、在京のキー局がみんな吉本興業の株主だからといって吉本の芸人ばかりをリポーターに使う必要はありませんよね。それとも、ギャラのディスカウントでもあるのですか。

(6)時代と同衾していますか?

視聴率が取りたくなってニュースや芸能に走ったりするのはやめてください。志通り。攻めた企画をお願いします。但し、時代と同衾しないのはありえません。それはテレビではないからです。

(7)女性スタッフは全体の半分以上いますか?

いないのなら早急にスタッフ構成を改めるべきです。

最後にお断りしておきますが、この提案はなにも『はなまるマーケット』をつくれと言っているのではありません。独自の『ラヴィット!』を作って欲しいから、参考になるかもしれない経験を提案したのです。

そういえば、筆者は、ずっとNHKの『あさイチ』を見ていたのですがCOVID-19が流行してから、テレビ朝日の『羽鳥慎一モーニングショー』にチャンネルを代えたことを付け加えておきます。強固な視聴習慣も変わります。最も筆者はテレビ局が欲しい視聴ターゲットの年齢を遥かに超えるジジイですが。

 

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