<巨額報酬はない?>小室母・刑事告発はフィクション越え

藤本貴之[東洋大学 教授・博士(学術)/メディア学者]

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アメリカのエンターテインメント業界は、スキャンダルのコンテンツ化が大好きだ。

放送局FOXニュースで実際に起きたセクハラ事件を基にしたアカデミー賞で3部門ノミネートの映画『スキャンダル』、カトリック教会のスキャンダルを新聞記者たちが暴いた実話を基にした88回アカデミー賞作品賞・脚本賞の受賞作『スポットライト 世紀のスクープ』などは有名だろう。

最近では、イギリス王室を捨て、アメリカに移住したヘンリー王子とメーガン妃が、米大手動画配信サービスNetflixと100億円以上とも噂される金額で契約したことが話題となった。

さて、このような話題から国内に目を向けてみれば、やはり、今話題の眞子内親王殿下と米法律事務所・小室圭職員の結婚をめぐるさまざまなスキャンダルは、まさに「日本版ヘンリー&メーガン」のようであり、巨額報酬のコンテンツ化オファーがあるのではないかと、まことしやかに噂されている。

しかし、筆者は眞子内親王殿下と法律事務所職員の「禁じられた恋」は「ヘンリー&メーガン」のようなコンテンツ化巨額オファーはないと考えている。なぜなら、眞子内親王殿下のご結婚延期をめぐる様々なトラブルと「ヘンリー&メーガン」をめぐる状況とが、あまりにかけ離れているからだ。

今回のご結婚延期をめぐる騒動の本質は、「イギリス王室のカーテンの奥で何が行われているのか?」という庶民の想像・妄想を「ヘンリー&メーガン」が暴露によって補完するという立て付けとは異なり、眞子内親王殿下の側にではなく、その相手家族である小室家の側に集中している。

眞子内親王殿下のご結婚の相手にまつわる醜聞であるため、一見、ロイヤル・スキャンダルのように見える。しかし、冷静に観察すればわかるが、醜聞のそのものは小室家のことでしかない。しかも、小室家周辺に漂う醜聞の数々は、いくらでも証言、証拠が出ている「事実」であって、「庶民の想像や妄想」が生み出した疑惑・陰謀の類でもない。

小室家醜聞の解決に眞子内親王殿下も少なからず関わっている云々、あるいは秋篠宮家の教育方針なども騒がれることもあるが、それらは小室家醜聞に花を添える程度の副次的な話であり、残念感こそ掻き立てられるが、スキャンダルと呼べるようなものではないだろう。わかりやすい例として、それらと「態度豹変ポニーテール」の一件と比べてみて欲しい。どちらの方がスキャンダラスか。

いずれにせよ、小室圭職員が渡米後に暴露することで、改めて皇室ショックが起きるような新しい「事実」などはあるのだろうか。例えば、一部週刊誌などで書かれているような「小室圭職員の背後に黒幕の影」といった疑惑でさえ、これまでの事実の流れを見れば、驚くべきことではない。留学費用に加え、長期間にわたる高額な弁護士費用など一般的な家庭ではまず払い続けることは不可能なのだから、小室職員の背後に強烈な金主がいることぐらい、誰もがわかっている。

[参考]<映画「妖僧」から見るコムロ禍>小室圭氏と皇位簒奪者・弓削道鏡

それでも、少なからず秋篠宮邸に出入りしていた小室職員である。普通の人が目にしないような宮邸のこと、宮様方、内親王方との会話なども知っているかもしれない。しかし、そういった「ご皇室の極めて個人的なこと」を暴露したところで、「非常識なやつだ」「個人情報をペラペラと喋るやつだ」というマイナスイメージがこびりつくだけだ。

もちろん、どんな些細なことであれ、皇室の私的な情報を漏洩するようなことはあってはならないが、アメリカのメディアからしたら「えっ? たったそれだけ?」と思われるような類のものになる可能性は極めて高い。小室職員にとっては、自らが負うリスクに対して旨みがあまりにも少ないように思う。

その意味では「庶民が想像する菊のカーテンの奥のこと」をエンターテインメントとして満足させられるような情報は小室職員は持ち得てないだろう。

国民誰も心配する懸案事項としては、眞子内親王殿下の複雑性PTSD発症の件がある。しかしこれでさえ、醜聞まみれの婚約内定者家族に起きた事実の連発が原因だ。そして、3年間も内親王の恋人を支えることなく、放置して海外逃避してしまった小室職員の非常識も要因の一つだろう。少なくとも、明らかなフェイクニュースサイトやアングラサイトのようなものを除けば、事実無根の虚偽や陰謀論で眞子内親王殿下を直接誹謗しているような事例など見たことがない。もちろん、小室家の醜聞を報道すること自体が、内親王殿下への誹謗である、とおっしゃられるのであれば、それはもう、別の話だが。

いずれにせよ、複雑性PTSD発症の要因の大部分が小室家にある以上、語れば語るだけ自身へのダメージとなり、巨額オファーのネタどころではない。それは小室職員自身が一番よくわかっているはずだ。

極めつけは、10月6日に発覚した小室職員の母・小室佳代氏への遺族年金詐取疑惑等による刑事告発だろう。1000年を超える臣籍降下の歴史上、刑事告発(あるいはそれと同等の被疑)を受けた家庭に皇族が嫁いだ前例などない。しかも、その疑惑が「詐欺罪」である。もはや、ロイヤル・スキャンダル・コンテンツなどといった次元の話ではない。フィクションを超えた「たんなる事件」である。

公金詐取のような「国を相手取った詐欺事件」が持つインパクトは極めて大きい。公金詐取はいわば「国家への挑戦」であるのだから、警察や関係当局の神経も過敏になる。この刑事告発によって、小室職員の醜聞と一緒くたにされていた「内親王の結婚延期をめぐる問題」は、本来の「小室家の醜聞」へと一本化され、軌道修正されたようにも感じる。

ロイヤル・スキャンダルでもない以上、大手メディアが巨額オファーをするとは思えない。目の肥えたアメリカの巨大メディアの期待に応えられるようなロイヤル・スキャンダルのネタを持っていないどころか、むしろ掘られてはマズい自分たち家族の不利な情報の方が多いのではないか。いづれにせよ、小室圭職員がアメリカでご皇室にまつわる暴露話で巨利を得るような可能性は非常に低いように思う。

結婚後に金に困った小室職員が妻となった眞子内親王殿下に「皇室の暴露話の販売」をさせるのではないか、といった邪推も散見される。しかし、その部分こそ、眞子内親王殿下が、ご皇室の一員として30年間すごされたお育ちを信用しようではないか、と思う。どんな状況下になっても、出身であるご皇室を貶めるような挙動は、いかに愛しい恋人・夫から強要されたとしても、微塵も応じることはないと信じたい。忘れてほしくないことは、騒動の本質は小室職員でしかなく、眞子内親王殿下ではない、ということだ。

小室職員への米エンターテインメント業界からの巨額報酬オファーはない。こう信じる筆者は楽観論者なのだろうか?

 

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