<素人参加番組が消える>『さんまのスーパーからくりTV』終了で「素人扱いのノウハウ」も消える?


藤沢隆[テレビ・プロデューサー/ディレクター]

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9月7日をもって『さんまのスーパーからくりTV』が終了しました。この番組は視聴者からのビデオ投稿をネタにしたクイズ番組としてスタート。筆者はバラエテイ畑の制作者でもないので当初はあまり関心を持ちませんでした。

しかし、いつ頃からだったでしょうか、番組は大ヒット、視てみればその「シロウトさん扱い」の巧みさに強い関心を持つようになりました。

『ご長寿早押しクイズ』とか『からくりビデオレター』、『サラリーマン早調べクイズ』、『からくりお悩みパビリオン』などなど、どれも一般の方々、いわゆるシロウトさんを活躍させて大爆笑をとり続けた名物コーナー企画です。憶えている人も多いことでしょう。

どうすればシロウトさんがあんなにおもしろくなるのか、ジャンルは違えど同じテレビ制作の玄人のはしくれのはずの筆者ですが、この「シロウトの面白さ」は不思議でなりませんでした。どこからか「ヤラセじゃないの?」という声が聞こえることもありましたが、安易なヤラセなんぞでシロウトさんからあの面白さを引き出すことができるとは筆者にはとうてい思えませんでした。

『からくりビデオレター』に限ればバラエテイ畑ではない筆者でも、もちろんヤラセなどではなく、演出でなんとかなるかもしれないとは思いましたが、『ご長寿早押しクイズ』や『からくりお悩みパビリオン』などは出演者が後期高齢者のじいちゃん、ばあちゃん、あるいは子どもだったりしますから、ヤラセなんぞであんなにおもしろくできるはずがありません。

かといって、あれほど極端にユニークなシロウトさんばかりが毎週集まるなんていう奇跡も考えられず、『からくりTV』を視るたびに私の頭は「???」が渦巻くのでした。

『からくりTV』全盛時のある日、ちょっとした偶然で『からくりTV』の当時のプロデューサーとお話しする機会がありました。これ幸いと私はかねてからの疑問をこのプロデューサーにぶつけてみました。「どうすればシロウトさんをあれほど見事におもしろく出来るのですか?」と。

プロデューサー氏は満面の笑みと、かすかにドヤ顔をのぞかせながら、きっぱりとおっしゃいました。

「残念ながら申し上げられないのです。まあ、いろいろと細かいノウハウもありまして・・・」

と、ひとこと。まあ当然と言えば当然ですが、私の頭の中の「???」が消えることはありませんでした。残念。

一時期、各局でもてはやされた視聴者参加番組はほとんど消えてしまいました。クイズやゲーム番組もお笑いタレントやアイドル、タレント文化人のような人ばかりが出演しています。いまや民放でシロウトさんが活躍する番組と言ったら、『新婚さんいらっしゃい』と『なんでも鑑定団』などわずかしか思い浮かびません。

そんな時代にシロウトさんを扱う番組の金字塔『さんまのスーパーからくりTV』の終了を聞いて、「あの見事なシロウトさん扱いのノウハウとはいったい何だったのだろう」、そして、「その貴重なノウハウは後進にしっかりと伝えられたのか・・・」。そんなことが思い浮かびました。こうしたノウハウもテレビにとって継承すべき重要な遺産だと思うのですが。

[『からくりTV』担当の放送作家であり、メディアゴン主筆である高橋秀樹からのコメント]

「からくりテレビ」が続いてきた秘密は、ヤラセと、呼ばれる範疇に踏み出さないように、厳しくこれを諌めたことです。安易に流れればヤラセになってしまうことがありがちな、シロウトさんを使う番組です。プロデューサーが語ったように、面白さは、まさしく「ノウハウ」によって維持されました。

はっきり言ってしまえば「ヤラセ」だと、潔癖な人なら判断するかもしれないグレーゾーンの「ノウハウ」もあります。ヤラセか演出(ノウハウ)か、という、線引は人によって千差万別です。ドキュメンタリーも含めて番組には演出が必ずあって、演出のない番組など存在してはならず、もしあれば、それはとてつもなくつまらない番組でしょう。

私達は、その線引にあたって、「そのノウハウによって傷つく人はいるのだろうか」を判断基準にしていました。

それから、このノウハウが、どんなものかは「一子相伝の秘剣」のようなものであって、徒や疎かに、他人に教えることはできません。習得できる才能も必要です。番組が衰えゆく過程で、からくりテレビには習得できる者がいなくなってしまったのです。

 

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藤沢隆

藤沢隆(ふじさわ・たかし) テレビディレクター、プロデューサー。 バラエティ、報道、情報、すべての番組を手がけている。 大手制作会社・元取締役。