<もはやテレビドラマのシナリオだ!>我が家にきた「オレオレ詐欺」完全レポート(その②)

社会・メディア

藤沢隆[テレビ・プロデューサー/ディレクター]
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前回に引き続き、筆者の自宅にかかってきたオレオレ詐欺の実況続報である。
これまでのやりとりで、犯人はオクサンの携帯番号のほかに、息子に関するいくつかのデータを手に入れています。犯人はこのデータを充分に考慮に入れたストーリーをチョイスして、いよいよ次の一手をかまして来たのでした。
さて、心配で眠れぬ一夜を過ごしたわがオクサンの携帯が鳴ったのは翌日の昼過ぎでした。

犯人「おれ、ヨシヒコだけど」
オクサン「どうだったのよ、病院の結果は?」
犯人「こぶの組織をとって検査したけど結果は明日だって。それまでなんとも言えないって。」
オクサン「あ、そう。風邪の方は大丈夫なの」
犯人「うん、熱もいくらか下がったみたいなんだけどさ・・・。あのね・・・別にさ・・・言いにくいんだけど相談ていうかお願いがあるんだけど・・・マサコに言えないし、オフクロ以外だれにも相談できなくてさ・・・」
オクサン「なによ、ほかにもなにかあるの?」
犯人「実はさ、恥ずかしいんだけど会社の女の子とちょっとあってさ、知らなかったんだけど妊娠しちゃったっていうんだよ。そんなこと急にさあ、びっくりしちゃって。そんで昨日仲介人とかいう人から連絡があってさ、向こうの両親がカンカンでね、訴えるとか言ってるらしいんだよ。マサコにバレたら大変だしさ、会社に知れたらクビになっちゃうし・・・」
オクサン「あなた、なに馬鹿なことしてるの、それじゃ大変じゃないの。どうするのよ。」
犯人「恥ずかしいけど。ほんと困っちゃってるんだ。それでね、その仲介人の人が言うには、向こうの両親はカンカンだけど話はできるから、すぐに誠意を見せればなんとかなると思う、って言ってくれてるんだ。」
オクサン「誠意ってなに? お金?」
犯人「うん、そうだと思う。」
オクサン「お金って、いくらよ?」
犯人「100万とか言ってたけど、オレいまそんな金ないし・・・」
オクサン「そう・・・。でもお父さんに相談しないと・・・」
犯人「オヤジにはぜったいに黙っていて欲しいんだ。恥ずかしいし、あの性格だとどう出るかもわからないしさ。オフクロだから相談してるんだよ。それに向こうはすごく急いでやらないとダメだと言ってるし・・・」
オクサン「困ったわね。100万円って大金じゃないの。現金なの・・・? ちょっとどうできるか考えるから、少し後でまた電話して」

たんなる風邪からから始まった話は腫瘍話がかぶさって深刻化し、さらにここで浮気・妊娠騒動というやっかいな話に転じました。まさに起承転結の“転”です。そして、ついに100万円というお金の話が出てきました。まさにオレオレ詐欺の本性がむき出しになってきたのでした。
すでに犯人は周到にいくつかの伏線を張っています。

  1. ヨシヒコのスマホは修理中でこちらからは電話できない
  2. 妻のマサコにはぜったいに内緒
  3. 父親や会社にもぜったい言ってはだめ

最愛の息子の窮地にただひとり頼られたオクサン、100万円を用意すべきどうか、心は千々に乱れるのでありました。さすがに話があまりに典型的なオレオレ詐欺のようで、その疑いも払拭しきれないオクサンは悩んだ末思い切って修理中だという息子のスマホに電話をかけてみることにしました。
息子が出れば当然事実がわかりますし、スマホの修理が事実なら修理先の人が出るかもしないと考えたのでした。ここで、犯人には幸運が訪れます。息子のスマホにかけた電話に誰も出なかったのです。オクサンは、やはりこれはほんとうの話なのだと思うしかありませんでした。(その③につづく)
 
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