<決定版・欽ちゃんインタビュー>萩本欽一の財産(24) 「ナゼ、ダメ出しをするのか」

エンタメ・芸能

高橋秀樹[放送作家]
***
これまでのインタビューはコチラ

「大将(萩本欽一)は『欽ドン!良い子悪い子普通の子』の時に、松居直美ちゃんに20回、ダメを出し続けたことがあります」

「あるよ、直美は14歳の中学生で歌が上手いだけで、なあんにも知らなかった」

「どうして20回も」

「うん、ひとつは、カメラマンや、照明さんや、効果さんや、小道具さん、スタッフに見せたかった、直美がこんなに頑張ってるんだから。みんなもよろしくって」

大将は、リハーサルの時は、自分は演じない。『欽ドン!』なら、関根勤さんに代役をやらせて、自分は客席から見ている。その理由は自分がやってしまうと、本番で板(舞台)に立ったとき、新鮮味が薄れるから。もうひとつは振りをやる役目として、他の人の動き全体を、引きで、把握しておきたいからだ。

「常田さん(久仁子。プロデューサー)に言われたの。もう一回、もう一回て欽ちゃんは言うけど、どういうふうに変えてもう一回やればいいか言わない。それじゃ直美が可哀想だって。直美もわからないからずっと同じにしか出来ないんだけど、俺は、直美が、何回もやり続けて同じようにやるのが飽きちゃって違うように演じるようになるのを待ってるの。それでも、20回やって変わらなきゃ、あとは自分で処理しなきゃって決めるの、結局その時は最初ので行こうって、20回も前にやったこと覚えてないよね」

常田プロデューサーは大将にとって母のような存在である。

「常田さんにはいろんなこと教わったよ。まず、コメディアンは汚いからダメだって。だからスポンサーもつかないしギャラも上がらないんだって、欽ちゃんキレイにしなさいって言われた。コメディアンのギャラが3千円なら、役者さんは3万円、映画スターは300万円ていう時代だった」
「常田さんは女の人だから、俺が気づかないことを気づく」
「もちろん女の人はシモネタは絶対ダメ」

「『秋房子』っていう名前の人が企画として名前がスーパーされてますが」

「これもね、世の中の半分が女の人なのに男ばっかりで作ってるのはおかしいって入れたの。そしたら、ヒット番組をたくさん作ってる秋さんてどんな人ですかって取材依頼が殺到して」

「番組の終わりに、スーパーでほんの一瞬流れる名前が注目されたんですね」

「女に人の名前だから目立ったんだよね。結局ボクのペンネームだって明かすことになった。秋深し 隣は何を する人ぞ の『あきふかし』をもらった。姓の秋は萩本の萩から、くさかんむりを取って、秋。房子は初恋の人の名前」

 
【あわせて読みたい】