<悪い素人と悪い編集>11月22日の放送で「めちゃ✕2イケてる」が犯した2つの間違い


高橋秀樹[放送作家]

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11月22日土曜日放送のフジテレビ「めちゃ×2イケてるッ!」(以下「めちゃイケ」)は、2つの間違いを犯していた。

1つ目は「素人の使い方」、2つ目は「編集の方針」である。

1つ目の「素人の使い方」の話から始めよう。11月22日放送時の企画は「ユニークな食べ物(まずい、売れない)」「もう懲りたと言ってしまうような食べ物」を食べに行く「コリタ食堂」。ゲストはヒロミと夫人の松本伊代。ロケに参加している矢部浩之、岡村隆史、プロデューサーの通称ガリタを加えた総勢5人。

さて、この企画では登場した「素人」は2人とも、「素人を使う番組」を制作している人間なら、誰でも「使ってはいけない」と知っている、いわゆる「悪い素人」であった。

最初、筆者は「めちゃイケ」ほどのバラエティの作り手なら、おそらく知っているだろうから、「わざと、悪い素人を使っているのではないか」とさえ思った。そして、何かやるつもりだ、と。ところがそうではなかった。それがわかったのは、2つ目に登場したのも「悪い素人」だったからである。

素人の出演者には「いい素人」と「悪い素人」がいる。「悪い素人」と言うのは、笑いを取ろうとして、自分から余計なことを言いに来る「でしゃばりな素人」である。プロでもネタを「言いに来る」「置きに来る」と、面白く無いのに、素人でそれをやる人を見ると腹が立ってくる。そういう人が「悪い素人」である。

一方、「いい素人」は基本的に受け身の人である。聞かれないと喋らない人である。1つ目の「ちゃんぽん屋の店主のミャンマー人」はそういう意味で「いい素人」であった。ところがそこに居た客が典型的な「悪い素人」だった。

「良い、悪い」という言葉を使っているが、もちろんこれは素人自身に責任は全くない。これは作り手に責任がある。

「めちゃイケ」は基本的にドキュメンタリーという体(てい)で、あるいは、本当にドキュメンタリーで撮っているので、「悪い素人」のことは、分かっているが、出てしまうのは仕方がない、という意見もあるだろう。しかし、それは違う。

ここがで、2つ目の間違いポイントである「編集の方針」の問題になる。

「悪い素人」は、編集で「いい素人」にできる。バラエティをやる人間であれば、それは誰でもがわかる[高橋秀樹]<悪い素人と悪い編集>11月22日の放送で「めちゃ✕2イケてる」が犯した2つの間違い。例えば、カットして全体尺を短くすることだ。今回の放送では、それが行われていないどころか、むしろ長い。「めちゃイケ」が得意なはずの編集で「悪い素人」の部分をカットしようとした痕跡が全く見えないのだ。内容が足りなかったのか。間に合わなかったのか。いづれにせよ「悪い素人」の様子が編集されずに放送された。

「悪い素人」ぶりが、全面的に押し出されてくるので、見ている筆者の方が見続けるのが辛くなったぐらいだ。面白そうなところを探して出して、画をつなごうと汲々とするあまり「本当に面白いところがどこだかわからなくなっている編集」だった。「おもしろそう」と「おもしろい」は全く違うのである。特に素人に「おもしろそう」をやらせては絶対にいけない。

もし、この「悪い素人」が仕込みだったとするならば(筆者はこの手の仕込みはあってしかるべきだと思うが)岡村にとってそれは拷問であり、スタッフへの信頼を無くす方向に、岡村の力は働くだろう。

「編集の下手さ」は、今回では他の部分でも目立っていた。加藤浩次が後輩芸能人にアドヴァイスするというコーナーで、加藤の言葉をリフレインさせる編集になんの意図があるのか。「めちゃイケ」は笑いを取ろうとしている番組ではないのか。

編集のダメなところはまだある。ゲストのヒロミは、落としのセリフが思いつかないので、しょうがなく岡村の頭を叩いて落とす。その回数が多すぎる。

ヒロミが好きなら(好きだからキャスティングしたのだろうが)3分の1くらいにしてあげないと、タレント・ヒロミにとって非常に損なシーンばかり放送されたということになる。その一方で矢部は、ヒロミの人を叩いて「落とす」という突っ込みが強烈過ぎて、他に突っ込みようがなくなってしまった。(例えば、ハリセンで殴られた後には、言葉でどんな突っ込みをしても落ちないものだ)

矢部は放送を見る限り、その場面では「ツッコミの出来ないただの凡庸な芸人」になってしまっていた。たったひとつ矢部が、はっきり「落とし」のセリフを入れたところがあった。岡村に新刊の料理本のゴーストライター疑惑をいじられた松本伊代。否定しながらも、内容を確認されて「まだ見てないんです」と答えた。それに対する矢部。

「いつまで経っても読んでないなんて、最高のボケですよね」

しかし、そのセリフは素人でも言わないような平凡な「落とし」だった。「落とし」でもないか、絶対に芸人がやらない、演ってはいけない「説明ゼリフ」だった。この矢部の発言も、芸人・矢部を愛しているなら編集で切ってあげるべきだ。素人に見える矢部の画(え)は、矢部にとっては「損」以外の何物でもないだろう。

筆者が1か所だげ「声を上げて笑ったところ」があったので書いておく。

薬草の大好きな店主の店で薬草茶を飲み、薬草臭いラーメンをすすり、そして、一同はチャーシューを食べた。すると、このチャーシューの味もどこか可怪しい。岡村が店主に聞く。

岡村「ご主人、このチャーシューもやっぱり……?」

店主「ああ、それは古いから」

ここは、見事な「いい素人」になっていた。だから笑えたのである。

 

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