<低い費用対効果と高い消費者負担>発電量わずか3%の自然エネルギーのための「年間1兆円の補助金」は消費者負担

政治経済

石川和男[NPO法人社会保障経済研究所・理事長]
***
今の日本は、エネルギー資源を殆ど持ってない。太陽光や風力などの「自然エネルギー」をめいっぱい導入しようという気持ちになるのは、日本人として、ごく当たり前のことだ。
東日本大震災による原発事故を経験した日本では、なおさらかもしれない。しかし、それがあまりにも費用対効果の低いことだとわかってしまうと、急に萎えてくる。
自然エネルギー、すなわち「再生可能エネルギー」は、固定価格買取制度(FIT)で優遇されている。「固定価格買取制度」とは、再生可能エネルギー源(太陽光、風力、 水力、地熱など)で発電された電気を、10~20年間、電力会社が一定価格で必ず買い取るという制度だ。
経済産業省が毎月更新している再エネ情報サイトによると、今年4月~8月の5ヶ月間で、再エネ発電量は119億kWh、再エネ買取額は4,323億円。残り7ヶ月(今年9月~来年3月)で、再エネ発電が前5ヶ月と同じように推移すると、2014年度で、再エネ総発電量は286億kWh、再エネ買取総額は1兆365億円となる。
太陽光や風力はまさに「自然エネルギー」であり、晴れか曇りか雨か、風が強いか弱いかなど、“地球のご機嫌”に大きく左右される。実際の発電量は、終わってみないとわからないが、再エネ買取総額は年間1兆円を超える勢い。これは再エネ向けの“補助金”そのものだ。
この巨額のおカネは、我々消費者が毎月支払う電気料金に含まれている。あまり気付かないかもしれないが、毎月の明細書に“再エネ賦課金”として、しっかり掲載されている。4人家族の我が家は節約志向であるためか、再エネ賦課金は毎月300~400円台。100~200円台の消費者もいれば、1,000円を超える消費者もいる。
エネルギー分野で年間1兆円規模の“補助金”というのは、超ド級である。国がエネルギー政策を進めるための予算枠として、「エネルギー対策特別会計」というのがある。2014年度予算額は約9,100億円で、原子力安全対策、石油備蓄、天然ガス・石油・石炭の利権取得、再エネ新技術開発、CO2削減技術開発など様々な施策に充てられる。
これだけ見ても、再エネ買取に年間で総額1兆円が注ぎ込まれていることの凄さがわかる。ところが、1兆円を使って買い取っている再エネ総発電量は286億kWhであるが、それは日本の総発電量からすると微々たるものでしかない。日本の最近5ヶ年(2009~13年度)の年間平均の総電力量9,597億kWhの3%弱に過ぎないのだ。
要するに、再エネ発電の費用対効果はあまりにも低く、すぐには原子力や石炭火力の代わりにはなり得ない。どんなに再エネを美しく語り、素晴らしいものだと礼讃したとしても、残念ながら厳然たる現実を直視せざるを得ない。
来月12月14日の衆院選の公示は来月4日。だが、選挙戦はもう始まっている。我々はどの候補者、どの政党に投票すべきか?それ以前に、どの政党、どの候補者を信用すべきか?今月11月22日、筆者は次の2つのことをツイッターに投稿した。

「原発ゼロをすぐ実現させます!自然エネルギーをどんどん導入するので心配ありません!」と語る候補者は信用できない。(@kazuo_ishikawa)

「原発ゼロを目指し、自然エネルギーを推進しますが、そのためには時間が必要です。当面は原子力も自然エネルギーも化石燃料もバランス良く使っていくしかありません」と語る候補者は信用できる。(@kazuo_ishikawa)

はてさて、皆さんはどうだろうか?
 
【あわせて読みたい】