<止まらない電気料金値上げに警鐘>北海道・泊原発の停止だけでも年2000億円の大損害


石川和男[NPO法人社会保障経済研究所・理事長]

***

東日本大震災による東京電力・福島第一原子力発電所の事故が起こって以降、その煽りを喰らう形で全国の原発が発電再開を容認されずにいる。そのため、電気料金値上げ認可が全国の電力会社で連発している。

原発を停止すると、その分を火力発電で代替しなければならないが、燃料となる石油などの値段は原子力に比べてかなり高い。だから、原発停止が長引くと追加的な燃料費や購入電力料が巨額になるため、電気料金を値上げせざるを得なくなる。

北海道全域に電力を供給する北海道電力の場合、泊原発の停止による追加燃料費等は震災前の平成22年度(震災直前)から平成25年度(直近)で約2,000億円(=3,230億円-1,212億円)に上っている(資料のグラフを参照)。

このため、北海道電力は既に2回目の値上げに追い込まれている。震災前に比べて、平均的には、家庭用など規制部門で約24%、産業用など自由化部門で約34%の値上げ幅となっている。北海道民は「1日6億円」の追加燃料費を支払っている計算になる。

 

gazou0131

<北海道電力資料>

 

今後、これを早期に挽回しなければ、北海道電力管内での電気料金値下げもその分だけ遅れ、安全や安定供給のために必要な設備投資ができないままになってしまう。では、このような『大損失』を挽回することにはどうしたら良いか?

そこで、以下では、泊原発の再稼働によってどの程度の利益増効果を見込むことができるかを試算してみたい。

今年度、泊原発は稼働ゼロとなる。その代替として、自社の石油火力や石炭火力、他社からの購入電力で賄うことになる。泊原発が米国並みの高稼働率(90%)で稼働した時の原子力発電量が、自社の石油火力発電量・石炭火力量と他社からの購入電力量を代替するとした場合の利益増効果を算出してみる。

泊原発は1号機から3号機まで3基あるが、これら全3基が稼働率90%で稼働すると、原子力発電量は計163億kWh、核燃料費は計94億円となる。

この163億kWhは、単価の高い他社(自家発、卸供給事業者など)の全量と、単価の高い自社の石油火力の9割、国内炭の5割、海外炭の1割の合計とほぼ同量となり、これらの燃料費等は2,421億円となる。すなわち、泊原発の全3基を稼働率90%で稼働すれば、燃料費と購入電力料を節約することによる利益増効果は、2,330億円(≒2,421億円-94億円)と算出される。

このように、泊原発の高稼働率(90%)による稼働によって、泊原発の発電停止による追加燃料費等の約2,000億円を完全に挽回するための原資を得るとともに、330億円程度の余剰原資を得ることができる。

 

<筆者による泊原発レポート動画>

 

これらの原資については、北海道電力管内での電気料金値下げや、極度に悪化した財務体質の回復や安定供給確保のための投資はもちろんのこと、再生可能エネルギーのための投資にも充てることが可能となる。

そのためにも、政府が原子力規制の運用を早期に改善し、規制委の審査中であっても発電再開を容認すべきである。審査と発電は、連動させる必要はない。これは世界の常識でもある。首相がその旨を会見するだけで十分なのだ。

泊原発の再稼働は、必ずや、北海道経済に明るさをもたらすことになるはずだ。

 

【あわせて読みたい】

The following two tabs change content below.

石川和男

石川和男(いしかわ・かずお)NPO法人社会保障経済研究所・理事長。1965年、福岡県生まれ。東京大学工学部卒業。1989年、通商産業省(現経済産業省)入省。エネルギー政策、産業保安政策、産業金融政策、中小企業政策、消費者政策、物流・流通政策などに従事。2007年3月、経済産業省を退官。2008〜09年、内閣官房・国家公務員制度改革本部、東京財団上席研究員、政策研究大学院大学客員教授、政府の規制改革会議、行政刷新会議WGなどの委員を歴任。