< 「人志松本のすべらない話」の困難>普通のトーク番組にしない工夫が一番難しい


高橋維新[弁護士]

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2015年1月10日に放送された「人志松本のすべらない話」(フジテレビ)について論じてみる。

[1]観覧ゲスト

今回、観覧ゲストはゼロであった。それによって、観覧ゲストからコメントをとったり、冒頭に歌ってもらったりといったことで尺を食うことがなくなった。前回の放送(第26弾・2014年6月28日放送)でも、観覧ゲストはいることはいた。ただ、その前の第25弾以前とは異なり、(別のスタジオから見ているのではなく)しゃべり手のいるスタジオの後方で見学している形だった。

これは、初めて観覧ゲストというものを入れた第8弾(2006年12月29日放送)と同じ形態である。つまり、だんだん肥大化していった観覧ゲストについて、揺り戻しが来て、縮小の方向に向かい、結局廃止されたということである。

「すべらない話」の人気自体が落ちてわざわざスタジオで観覧したい有名人が集まらなくなっただけかもしれないし、単にギャラを節約したかっただけかもしれない。しかし、少なくとも演出上は(従来の形の)観覧ゲストというものは全く不要であったように思う。

そもそも彼ら(=観覧ゲスト)は、コメントをとっても、しゃべり手を褒めるだけで、全くおもしろいことを言わない。これを聞いたしゃべり手も、基本的には「ありがとうございます」と言うだけで、全くおもしろいことを言わない。観覧ゲストを導入しても、おもしろくない時間が増えるだけなのである。

では、なぜこんなものが存在しているのか? を考えてみた。そして筆者は「芸人やスタッフが自尊心を満たすため」だけに存在しているのではないか? という仮説に行き着いた。

同じフジテレビの「IPPONグランプリ」にも観覧ゲストというのがいたが、彼らは口を揃えて芸人たちの技術を「すごい」「素晴らしい」と褒めちぎる。つまり、普段の仕事で諸々をバカにされてばかりの芸人(とスタッフ)たちがここでHPを回復し、自信を取り戻すためにこういう演出をしていたのではないか、とさえ思えるのだ。

それだけだったとすれば、そんなものに視聴者が付き合う義理は全くないので、やるにしてもカメラが回っていないところでやってくれればよい。まあ、カメラが回ってるから褒めてくれるんだろうが。

別稿(<「笑い」の本質>芸人がモテようとしたり、カッコつけたら終わりである)でも書いたが、笑いの本質とは「カッコ悪いこと」である。よって、芸人というのは全て・常に笑われることを覚悟しなければならない。自尊心を得たかったら、笑ってもらうしかないのだ。

[2]しゃべり手について

①常連出演者

常連は、木村祐一を除いて、大体が参戦していた。前回は、松本人志・千原ジュニア・宮川大輔の3人しか常連がおらず、他の参加者には新鮮な顔ぶれが揃っていた。そして結論から言ってしまえば、前回の方がおもしろい話が多かった。

常連組にはもうほとんど勝負できるような話が残っておらず、出がらし状態になっている。常連組は、話し方はうまいのかもしれない。しかし、「すべらない話」で一番大事なことは、話し方よりも話の中身である。

よって、「人」よりも「話」で出る人を選んだ方が良いのだ。無名の芸人でも、キラーコンテンツたり得るような話を「一つだけ」持っているような人はたくさんいる。そもそも芸人でなくても良いし、話がおもしろければ芸能人ですらなくてよい。

もう番組自体が終了したが、「人志松本の○○な話」には、話自体のおもしろさを重視して、無名芸人から広く話を聞くコーナー(「決めてほしい話」)があった。そして、そのコーナーの方が「すべらない話」よりもおもしろかった。やはり視聴者としては、今後のキャスティングでは人よりも話を重視してほしいと思う。話し方がマズい人もいるだろうが、そんな時こそスタッフによる事前の改善で対処できるはずだ。

②ウーマンラッシュアワー・村本大輔の存在意義

前々回の第25弾(2014年1月11日放送)でスベり倒したにも関わらず、なぜか前回の第26弾にも出場。そして、そこでもスベり倒したものの、今回もまたも呼ばれた出演者がウーマンラッシュアワー・村本大輔だ。

なぜ村本は呼ばれ続けるのか。この疑問の解は、今回の放送を見て明らかになった。村本は明らかに「スベリ」枠としての扱いを受けていたのだ。「ガキの使いやあらへんで」における山崎邦正(現・月亭方正)、「めちゃ×2イケてるッ!」におけるよゐこ・有野晋哉のポジションである。

以前、「フジテレビ『すべらない話』が持つ致命的欠陥」でも書いたが、「すべらない話」という番組の致命的な欠陥は、「スベる」という形で笑いがとれなくなり、笑いがワンパターンになることである。「スベる」という失敗を犯しても、そのことをツッコめば笑いに変えられるのが、笑いというコンテンツの強みであるはずなのに、それを自ら放棄しているのが「すべらない話」なのである。だから、スベって笑いをとるというパターンがよく見られる「人志松本の○○な話」(の「決めてほしい話」や「ゾッとする話」といったコーナー)の方が筆者としては好ましいと感じていた。村本の起用は、今後「すべらない話」でも「そのパターン=スベって笑いをとる」を入れていくということなのだろう。しかし、村本だけだとやはりワンパターンになるので、色々な芸人さんにスベって欲しいとは思う。まあ、あの場で村本ほどの無茶ができる芸人もなかなかいないだろうが。

③SMAPのキャスティング

①でも述べた通りで、話さえおもしろければしゃべり手を芸人に限定する必要はない。もちろん、SMAPである必要もない。それ以上は、特に言うことがないが、香取慎吾の話には可能性を感じた。稲垣吾郎の話にも、スベリ枠としての可能性を感じた。

[3]今後の展望

本稿で述べたことを全部実現すると、「すべらない話」というタイトルをやめ、スベった時にはスベった扱いで笑いがとれるようにして、人よりも話重視で出演者を選ぶということになるので、完全に「人志松本の○○な話」になってしまう。こちらの方はなぜか先に終了してしまったが、不可思議である。

 

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高橋維新(たかはし・いしん)弁護士、コラム二スト。1987年、東京生まれ。2006年、東京大学法学部入学。2010年より「マヒ郎」のペンネームでファミ通町内会へ「ハガキ職人」として投稿を始める。現役ハガキ職人を続けながら、2012年に司法試験合格。2013年、弁護士登録(函館弁護士会)。ファミ通町内会長(第5代)。