<原子力規制委・規制庁に適正手続と科学的説明を義務付けよ>崇高な精神論だけで具体的な実行手法は示されていない「中期目標」に疑義


石川和男[NPO法人社会保障経済研究所・理事長]

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2011年3月の東日本大震災以降、「原子力」という文字が新聞・テレビで取り上げられない日はない。だが、原子力に限らず、何を報道するかは報道関係者の胸三寸。報道関係者が関心を持たないものは、たとえ原子力に関する重要なことであっても記事にならない。

今月2月12日、国の原子力規制委員会は、2014年度の56回目の定例会合を開いた。ここでは、今後の「中期目標」というものが決まった。しかし、これを報じたのは一部の専門紙だけで、一般向け全国紙では一言も報じられていない。この中期目標とは、どういう内容なのか?

規制委は、事務局である原子力規制庁とともに2012年9月に発足した。以来、これまで2年超の規制委・規制庁の行政手法を俯瞰すると、適切な組織マネジメントがなされていないと強く感じる。

規制委・規制庁による諸々の審査や検査について、全体的な手続期間が設定されていないため、規制される側である電力会社など原子力事業者が、以後の事業継続の適否を予見することができないのだ。規制委のHPで公開されている議事録や動画からも、規制委・規制庁側が次か次へと“宿題”を出したり、科学的な説明がなく判断が下されたりする様子が見て取れる。

そうした規制運用面への反省も込めてであろう、規制委・規制庁の業務品質を向上させるための「マネジメント規程」が昨秋から施行された。今般決まった中期目標とは、その規程に対応しながら、

  1. 原子力規制行政に対する信頼の確保
  2. 原子力施設等に係る規制の厳正かつ適切な実施
  3. 東京電力福島第一原子力発電所の廃炉に係る安全確保・・・等々

など6項目について、適切な規制運用の手法を掲げるもの。

しかし、この「中期目標」は、致命的な欠陥を抱えている。まさに、規制運営面への反省として挙げるべきことへの具体的な対処方針が全く示されていない。例えば、「破砕帯調査有識者会合」での排他的ないし一方的な議事運営や科学的とは到底言えない判断に対する自省の意識は微塵も見当たらない。

或いは、規制基準の審査の過程で根拠に乏しい理不尽な要求してきたことに対する自己改革の意思も感じられない。これは、当日の会議映像を視聴した感想でもある。外部からの指南などを受けない議事である以上、仕方ないと言えば仕方ない。

要は、

「あらかじめ決められた適正な手続に沿って、議事運営を公明正大に進めていく。」

という当たり前のことが欠けているのだ。規制する側(規制委・規制庁)の一挙手一投足に規制される側(原子力事業者)が一喜一憂するようなことではいけない。

「独立性」を強調したいがために、それが行き過ぎて「孤立性」を帯びてしまい、原子力規制に係る基本中の基本である適正手続と科学的説明が蔑ろにされたままだ。規制委・規制庁自身が、その問題の深刻さを自覚していないのではないか。

「中期目標」には、

「意思決定のプロセスを含め、規制にかかわる情報の開示を徹底し、説明責任を果たす」

などと崇高な精神論は随所に書かれている。しかし、そうした精神論を具体的にどのように実行に移していくのかという手法論は何ら示されていない。

「中期目標」の6項目の筆頭に掲げられている「1. 原子力規制行政に対する信頼の確保」を先ず実現していくには、我々一般国民からの信頼確保はもちろんのこと、それ以前に、規制に係る当事者の一方である原子力事業者や関係自治体からの信頼確保が先ず以って必須だ。

そのためにも、適正手続と科学的説明を徹底することを宣言するだけでなく、「中期目標」の設定を機に、原子力プラント全体に関する合否を決するまでの処理期間の設定、科学的判断根拠の開示といった具体的手法を義務付けていくべきである。それは、原子力規制の品質向上に必ずや資するはずだ。

 

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石川和男

石川和男(いしかわ・かずお)NPO法人社会保障経済研究所・理事長。1965年、福岡県生まれ。東京大学工学部卒業。1989年、通商産業省(現経済産業省)入省。エネルギー政策、産業保安政策、産業金融政策、中小企業政策、消費者政策、物流・流通政策などに従事。2007年3月、経済産業省を退官。2008〜09年、内閣官房・国家公務員制度改革本部、東京財団上席研究員、政策研究大学院大学客員教授、政府の規制改革会議、行政刷新会議WGなどの委員を歴任。