上西小百合議員に「誤報」といわれた「とくダネ!」は事実関係をはっきりさせた放送すべき

政治経済

両角敏明[テレビディレクター/プロデューサー]

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テレビでの放送上のミスはたくさん起こります。
もちろん、ミスをなくそうといろいろな手を打つのですが、人間のやることでノーミス100%は難しいものです。それにしても・・・です。4月8日朝の日本テレビ「スッキリ!!」は散々なものでした。
国会を病欠して旅行に行っていたとして問題になっている「浪速のエリカ様」こと上西小百合議員。この騒動を阿部レポーターが直撃取材で伝えたのですが、こんなテロップで問題になった上西議員の行動を説明しました。
先月12日

  • ウイルス性胃腸炎と診断

先月13日

  • 体調不良で国会を欠席
  • 3軒ほど飲食店をはしご

欠席したと批判されている予算案本会議は3月13日の夕方17時~19時でしたから、「3軒ほど飲食店をはしご」したのが3月13日というのは、明らかに12日の間違いです。
これはこのネタのもっともキモなのですから大ミスにして凡ミスです。しかもこのテロップは訂正されないままもう一度出ますので、サブ(副調整室)のスタッフもしっかりとOA画面を視ていなかったことになります。
さらに加えて、維新の党・松野頼久幹事長のコメントフォローテロップでは、(党規委員会から)「答申」があったとすべきところを「党針」と表記したテロップを出していました。こちらも事前チェックミス、かつサブのみなさんも見落としていたわけで、いくらなんでもこれではスッキリと番組を視られません。
肝心の内容ですが、阿部レポーターが直撃すると、上西議員は殊勝な様子はまったく見せず、あの日の公設秘書さん並みにエモーショナルなご様子でこのようにおっしゃったのです。

「記者会見3時間もしたんですよ!」
「前に話したでしょ!」
「いつまでこれに付き合わなければいけないんですか!」

そして最後にはこうまでおっしゃいました。

「こんなふうに報じたのはマスコミじゃないですか!」

今回の騒動はマスコミの伝え方が問題なのだと上西議員がおっしゃるには上西議員なりの論理があると思われます。それは4月3日、維新の党・橋下徹最高顧問と同席して開いた記者会見を詳細に見るとわかります。3時間におよぶ長い記者会見でしたが、結局のところ上西議員はある一点についてしかきちんとした謝罪をしていないのです。

「前夜12日夜の体調管理が甘く、13日の本会議に欠席したことは申し訳ない。」

3時間の間、きちんと謝罪したのはこの一点だけです。この会見では、マスコミが伝えた秘書との旅行疑惑については全否定し、とりわけ関西テレビについては、事実と違う、誤報とまで繰り返し指摘しています。
その関西テレビ(とくダネ!)が伝えた、公設秘書と旅行していたのではと疑われる上西議員の15日の行動ですが、関西テレビ(とくダネ!)は4月3日の放送で京都・宮津でカフェ(飲食業?)を営む公設秘書の兄を取材しOAしています。この兄は関西テレビのインタビューに対して、

  • 15日午前中に弟である公設秘書が電話で午後に食事をしに行くと言ってきた。
  • 午後2時過ぎに公設秘書と上西議員が二人でやってきた。
  • 兄貴の店だからゆっくり宮津で食事をしようと思って来たということだった。
  • 宮津でしか食べられないものと言って、エイの胆とか刺身や煮付けをゆっくり食事していった。
  • 店を出たのは、午後6時は回っていたのでは。その後どこへ行ったかわからない。

と答えています。一方で、上西議員側の主張ですが、会見での話が何度も前後し理解が難しい部分もあるのですが、なるべく常識的に整理すると、次のようになります。

  • 15日午前中、地元(大阪・吹田市)の市会議員候補者の事務所開き&地元行事など。
  • 大阪から宮津まで秘書が運転し兄の店へ到着したのは午後3時半か40分。
  • 兄の店で、二人で飲食した事実は一切ない。
  • 兄の店で待ち合わせた与謝野町議会議員、企業経営者2人と合流して店を出たのは4時半。
  • 企業経営者の運転する車で町長の自宅に迎えに行き、別の店で2時間ほど飲食歓談。
  • その後、兄の店へ送ってもらって戻りみんなで30分ぐらい話をして解散。
  • その後、公設秘書の実家へ宿泊。

どうですか? 主張には相当の違いがありますね。「とくダネ!」が伝えた兄の話では、上西議員と公設秘書が二人で、天橋立で知られる宮津までドライブし、兄の店へゆっくり食事をしに来た、というニュアンスに受け取れます。
一方、上西議員側は、15日は一日中党務・政務にあたっており、秘書と二人で旅行などとはとんでもない、と主張しているわけです。上西議員側の主張を裏付けるように、山添藤真・与謝野町長がテレビで宮津市内の小料理屋で会食し、

「会合は2時間ほどで、上西議員は乾杯でビールか焼酎のグラスをもっていました。」

などと語っています。もし、上西議員側の主張が正しいとすると、公設秘書の兄は、二人が来た時間を勘違いし、食べてもいないエイ肝や刺身を食べていたと言い、夜になって数人で戻ってきたこともすっかり忘れていることになります。
この事実の食い違いを上西議員は「誤報」と言っているのですから、テレビ局にとっては沽券にかかわるわけで、関西テレビ(とくダネ!)はぜひとも事の真実を取材し放送して欲しいものです。「とくダネ!」を全日、全編視ているわけではないので断言はできませんが、4月19日現在、いまだこれについての放送はされていないように思います。
さて、維新の党を除名になった上西小百合議員ですが、2度の選挙はともに小選挙区では落選し比例代表での復活ですから、党から除名されたら議員辞職するのが当然というのが大方の声のようです。除名後、維新の党・橋下徹最高顧問はこういう人に税金で高額の歳費を払うのは間違っていると口を極めています。
ところで、もし、お時間があったら上西議員の公式ホームページをご覧になることをお勧めします。どのページもなぜか「ネット献金のお願い」ばかりがやけに目立つ、他の議員と比べてもうすっぺら感の強いホームページなのですが、「うえにし小百合の取り組み」というページがあります。
そこには上西議員が政治家として力を入れて取り組む5つの項目が上げられているのですが、その第1に掲げられているのがなんと「税金の適正な使途の追求」なのです。
上西議員には、体調管理をサボって体調不良、なぜか大阪へ帰って最善義務を果たさずに予算案採決本会議を欠席する議員や、比例代表で当選し党派から除名された議員に高額の歳費をお支払いするのは「税金の適正な使途」なのかどうか、こちらの方をぜひとも厳しく追求していただきたいものです。
 
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