<テレビドラマの嘘はどこまで許される?>ドラマ「Dr.倫太郎」で描かれるめちゃくちゃな精神科医たち


高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事/社会臨床学会会員]

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ファンタジー以外のドラマで、「嘘」はどこまで許されるのか。筆者はリアリティを毀損しない限り、見るものをしらけさせない限り許されると思う。日本テレビの「Dr.倫太郎」は、どうだろう。

主人公・精神科医日野倫太郎の勤務するのは慧南大学病院、総合病院である。少なくともこの病院の精神科には「かかってはいけない」と精神科の隣接領域の専門家である筆者なら判断する。

まず、精神科の主任教授・宮川(長塚圭史)が、精神安定剤とビタミン剤の区別がつかない。どういう教育を受けたのか。

外科医ではあるが、水島百合子医師(吉瀬美智子)が「解離性人格障害」の症状を知らない。よく国家試験に合格したものだ。

さらに、精神科医である宮川が「演技性パーソナリティ障害」の病態を知らず、倫太郎に説明される。むちゃくちゃである。

ドラマでは禁忌に近い説明台詞を言うために、宮川と倫太郎がマッサージを受けながら話すという「笑いのような設定」を拵えてごまかそうとしているが、少しも笑えない。却ってドラマとしての痛々しさを感じさせてしまう。

例えば第4回においては、一話読み切りのエピソードとして挿入されるのがこの「演技性パーソナリティ障害」である。「演技性パーソナリティ障害」は演劇的あるいは性的誘惑による行動によって、自己に過剰に注目を引こうと行動するために、対人関係が不安定になるなどの機能的な障害である。過剰に誇張された感情表出も特徴である。見栄、虚言癖といった症状も見られる。

夫を失い、うつ症状を訴えて通院している牧子は世界的なプリマドンナであったが、もう2年舞台に立っていない。幼い娘の千果にも愛情を注ぐ余裕がない。

このエピソードはドラマ中で解決されるが、主人公である芸者・夢乃(蒼井優)も、そしてまた倫太郎自身も、子ども時代に自分をほったらかしにして、父親以外の男との関係に走った母という過去を持っているが、その伏線になっている。2人の母親は自分中心の行動をするが、それでいて、娘や息子に依存して子どもを呪縛する。子どもの心をむしばむ。

この状態はつまり、今、みなが口の端に載せるようになった流行中(ブーム)の病態、アダルトチルドレン(Adult Children)である。機能不全家庭で育ったことにより、成人してもなお内心的なトラウマを持つという考え方である。

この病態は拡大解釈されて機能不全家庭で育つと、必ず子どもは大人になってからすべて機能不全になってしまう、というような極端な誤った考えを広めてしまった罪がある。だが、そんな絶望的なことはあるはずがない。筆者はこうした考えが蔓延することに危惧を持っている。

話をドラマに戻すと、この一話読み切り部分のエピソードのキャスティングが弱い。第1回の放送から、ずうっと弱い。レギュラー陣のキャスティングで予算がつきてしまったのだろうか。

読み切り部分のエピソードのキャスティングが弱いと、つけ足し感が目立ってしまって、ドラマ自体を安っぽくしてしまう。第4回のバレリーナ役は草刈民代以外にあり得ない。

そして、精神科医の設定、これもじつは、余計な設定だと思うように至った筆者である。

 

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