<時事芸人・プチ鹿島の「新聞読み比べ」>読売の安倍首相動静に加計孝太郎氏が出てこない
両角敏明[テレビディレクター/プロデューサー]
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朝日の「首相動静」、読売の「安倍首相の一日」などの記事はタイトルは違えど通信社の配信でどの新聞も内容は同じと思っていました。これに一石を投じたのが 8月4日のフジテレビ「ユアタイム」でした。時事芸人・プチ鹿島さんが新聞の読み比べをする数分のコーナーで、2016年8月10日の紙面に、あれっ?と思わせるような違いがあることを指摘しました。
読売新聞 「6時21分、同県富士河口湖町の居酒屋「漁」で秘書官らと食事。」
他紙 「6時21分、同県富士河口湖町の居酒屋「漁」。加計孝太郎学校法人加計学園理事長、秘書官らと食事。」
プチ鹿島さんによれば、読売だけ加計孝太郎氏の名前がないというのです。読売が安倍さんのために配慮したのではないかと視聴者の勘ぐりを誘うような指摘です。
読売はこの「ユアタイム」の内容に腹を立てたのでしょうか、翌週から「ユアタイム」の新聞読み比べコーナーでは読売の記事使用が不許可になったとプチ鹿島さんがツイートしました。当然ながら、ネット上では読売の対応について、「ケ○の穴が小さい」などという声が多く上がりました。
こうした読売の対応は大人気ないという以前に、無用な過剰反応ではないかという気がします。なぜならこの記事は昨年8月の話ですから、まだ世の中で加計学園問題は騒ぎになっていません。
読売がこの時点で安倍さんのために加計孝太郎氏の名前を隠すべき「何か」を掴んでいたのならともかく、客観的にはこの時点で加計孝太郎氏という会食相手の名前を出そうが出すまいが、たいした問題ではありません。さらに同日の日本経済新聞・「首相官邸」を見ますと、
日経新聞 「18時21分、同県富士河口湖町の居酒屋「漁」で秘書官ら。」
読売だけでなく、日経も加計孝太郎氏の名前を出してはいないのです。要は、読売になんら批判される余地はなく、プチ鹿島さんの指摘は単なる芸人のシャレとスルーするのが大読売新聞の常識的対応というものでしょう。
読売は、安倍さんが国会答弁で憲法改正について、読売のインタビュー記事を読めば分かると言ってみたり、前川喜平前文科事務次官の出会い系バー通いを身内も訝しむ取材不足のままで大きく報じてみたり、前川氏からは和泉総理補佐官との関係を疑われたりと、かなり安倍総理寄りイメージが強い新聞です。それだけに、この程度のことに使用不許可などと目くじらを立てれば、逆に世間は微妙なものを感じてしまいます。それでもあえてナーバスな対応をしたのはなぜなのでしょうか。不思議です。
さて、ある日の各紙首相行動紙面を見てみます。
朝日・毎日・産経・東京/中日・日経はそろって、
「18時 渋谷区宇田川町の焼肉店「ゆうじ」で高橋精一郎三井住友銀行副頭取、増岡聡一郎鉄鋼ビルディング専務、加計孝太郎加計学園理事長らと食事。昭恵夫人が同席。」
読売新聞だけが、
「6時、渋谷区宇田川町の焼肉店「ゆうじ」で知人らと食事。昭恵夫人同席。」
こちらは日経新聞も加計孝太郎氏の名前を書いていますので、読売だけが他紙と判断が違うようです。さらに、プチ鹿島さんが指摘したのは8月10日でしたが、こちらは昨年10月2日のことなのです。昨年10月と言えば、加計学園の獣医学部新設問題が強引に進められ、そして様々な重要な動きが重なった時期です。その決定的な時期の安倍、加計同席の会食ですから、プチ鹿島さん、もしかしたらこちらの方を取り上げた方が良かったのかもしれませんよ。
読売新聞の振る舞いにいちいち何かを勘ぐるのはゲスと言われそうですが、読売にゲスに勘ぐられそうな事実が重なるのはなぜなのでしょう。
5月22日の前川バー通い記事について、前川氏はこう言っています。
「権力のために個人攻撃をするのは問題だと思った」
筆者ごときが言うまでもなく、メデイアが主張を持つことと権力のお先棒を担ぐことはまったく別のことです。読売ほどの大新聞がまさかかご屋さんの真似事をすることはないでしょうが、いささか心配している人も世の中には多いのでは。
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