朝日新聞がスポンサーの「甲子園」をテーマにしたテレ朝「アメトーーク」の眉唾感


高橋維新[弁護士]

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2015年7月18日放送のテレビ朝日「アメトーークSP」は、通常放送が休みの代わりに土曜日に2時間スペシャルという形で放映された回である。テーマは、「高校野球大好き芸人」であった。

「アメトーーク」はテレビ朝日の番組である。そして、朝日新聞社は「甲子園・全国高校野球選手権大会」の主催者である。つまり、そういうことである。

要はこれから始まる「夏の甲子園」を宣伝するための回であり、「何かを褒める回」であって、おもしろくないことが予想された(http://mediagong.jp/?p=8317)。そして、今回の放送がこの予想の外に出ることは基本的になかった。

今回の放送の中で「ファニー」だったのは、主にザキヤマ(山崎弘也)がおもしろいことを言った時と、狩野英孝の天然が出た時の二つである。こういうコンセプトの企画でもおもしろいことがポンポン言えていたザキヤマはやはり流石である。

それ以外の部分は、基本的に甲子園の「凄い選手」や「凄い試合」の紹介に終始していた。個人的には興味深くはあったので、退屈ではなかったが、ファニーだったわけではない。

ザキヤマや狩野に頼らずに、甲子園の選手や内容自体からファニーを出すとなると、いわゆる珍プレーやら、風貌や挙動のおかしな球児やら監督やら、バカにできる何かを甲子園から見つけてくる必要がある。

今回も、「独特すぎる那覇高校」だとか、「伝令の選手のおもしろい動き」だとかを引っ張ってきてポツポツとこのような形でファニーが生み出されていた。しかし、いずれも題材の一つ一つがぶつ切りだったので、パッとはしなかった。こういうのは「マツコ&有吉の怒り新党」(テレビ朝日)の「新・3大〇〇調査会」の方が巧い。あちらは確固たるテーマ設定と、全体的に統一感を持った編集が為されている。

さて、今回の「アメトーークSP」は「甲子園の魅力を紹介する」回だったので、番組から得た知識や情報を踏まえて、「甲子園の魅力」についての筆者の正直な感想を記しておく。

まず、素人考えだと、甲子園は高校球児の大会に過ぎないので、プロ野球や社会人野球や大学野球よりはレベルが低い(=すなわち、試合やスポーツとしての魅力にも劣る)ような気がする。これが間違いだというのなら、今回の放送でそれを否定してくれれば良かったのだが、そこまでには至らなかった。

甲子園の魅力として番組で主に紹介されたのは、後にプロの世界で有名になった選手が甲子園に出場したときの映像と、シーソーゲームのようなおもしろい試合の2つである。

前者については、別に、後にプロで有名になった選手(松井秀喜・松阪大輔・田中将大・ダルビッシュなど)であればプロ野球で見ることができるので、まだ技量も経験も乏しい高校時代にその人を見ることがプロ野球を見るより魅力的だとは思えなかった。

また別の見方をすれば、甲子園には(後に)プロになる人は一部しか出ていないということになるので、全員がプロのプロ野球よりはやっぱりおもしろくないのではないかという風に思えてしまう。プロに行くような人材を「発掘」する面白味はあるのかもしれないが、それは知識に乏しい素人にできる楽しみ方ではないため、「甲子園の魅力を広く一般の人に分かってもらう」場で取り上げるべき魅力ではない。

後者についても、そもそもシーソーゲームになるのはそれこそレベルがプロ野球や社会人野球より低いからだという見方もできる。番組で紹介された試合を見た限りで筆者が覚えた感想は、「選手の技量が低いから、締めるべきところで締められず、試合がズルズルと長引くのだ。見ている方もそのうちウンザリするのではないか」というものである。

そして、両者に共通して言えることであるが、番組で紹介している甲子園の「すごい選手」や「すごい試合」は、松井秀喜が取り上げられていることからも分かる通り、20年以上前のものから現在に至るまでの全試合の中から選別・抽出されている。

筆者の様な天邪鬼は、

「それぐらい選定をして2時間分に凝縮した今回の『アメトーーク』はおもしろかったけど、じゃあ、今回『アメトーーク』で取り上げられず「落選」したものはおもしろくないのだろう」

と思ってしまう。そして、大体これはその通りなのである。

別の話だが、筆者も「松本清張がおもしろい」という話を聞き、代表作として教えられた『ゼロの焦点』『点と線』『砂の器』などを読んだ後に他の松本作品にも食指を伸ばしてみたが、この3作は流石に代表作と言われているだけあって、他のは大体がおもしろさで劣っていた。

ある事物の魅力を他者に伝えるときに、その事物のおもしろい部分だけを抽出してプレゼンをすると、後で「おもしろくない部分」に気付かれた時に受け手をがっかりさせてしまうのである。それは別に高校野球や松本清張に限った話ではない。

まとめると、筆者には高校野球の魅力(プロ野球や大学野球と比較したうえでの魅力)は、本放送からはよく伝わらなかった。それは筆者の根性が曲がっているからかも知れないが、どうもそうとは思いきれない部分があるような気がした。

そもそもスポンサー的な立場にあるテレビ局がいくら甲子園をおもしろいと言っても眉唾感は拭えないため、別のところにやってもらった方がいいだろう。やっぱり最後は身も蓋もない話になってしまうが、そういうもんだろう。

 

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高橋維新(たかはし・いしん)弁護士、コラム二スト。1987年、東京生まれ。2006年、東京大学法学部入学。2010年より「マヒ郎」のペンネームでファミ通町内会へ「ハガキ職人」として投稿を始める。現役ハガキ職人を続けながら、2012年に司法試験合格。2013年、弁護士登録(函館弁護士会)。ファミ通町内会長(第5代)。