<生放送をやめるか「27時間テレビ」をやめるか>明石家さんまのいない生放送は面白くない。


高橋維新[弁護士]

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2015年も放映されたフジテレビ「27時間テレビ」。各企画の寸評を記したいと思うが、その前に、前提として「27時間テレビ」の全体的な傾向というものを述べておく(http://mediagong.jp/?p=10438)。

  1. 生放送なので、基本的にはおもしろくない。
  2. 部分的に事前に収録してきちんと編集した映像が出てくるが、そこのところはおもしろい場合がある(「生放送」という問題点が消えるというだけなので、中身次第であり、当然おもしろくない場合もある)。
  3. 生でも、明石家さんまが出ている部分はおもしろいことが多い。

では各企画の寸評である。

<グランドオープニング>(生放送)

毎年全地方局からの中継をやっており、今年も同じだった。生放送の上に、へんに張り切っている地方局の迷走は見ていて痛々しいので、毎回苦痛に感じる部分である。

この痛々しさをイジれれば救われるのだが、生放送のために次々と進行させていかざるを得ず、一つ一つの地方局に割ける時間が少ない。そのため、十分な時間をもってイジることもできない。

中継をやめるか、生放送をやめるかである。

こういうのが毎年続いているから「局内の士気を上げるためにやっているだけではないか」と邪推してしまうのである。

<ドキッ!めちゃイケ vs SMAP 本気だらけの水泳大会>(生放送)

めちゃイケメンバーとSMAPが水泳で対決するという極めてバラエティらしい企画。だから、生でやる意味は分からない。さんまがいないので、おもしろさの密度は低く、全体的にグダグダと進行していくのでウンザリする。

<明石家さんまのダイヤモンドエイジ本気の体力測定>(生放送)

還暦周辺の有名人を集めて様々な体力測定を行うというこちらも極めてバラエティらしい企画。おもしろくなるかどうかは料理の仕方次第なので企画自体に文句はない。さんまがいたので、前の企画と違ってしっかりとおもしろさが維持されていた。

<すぽると!>

見ていません。

<さんま・中居の今夜も眠れない>(生放送)

恒例企画。「27時間テレビ」で毎年唯一見る価値のある企画である。生放送という手法の利点は、現実との即応性である。現実に起きたことをすぐにテレビで伝えることができる。これは、速報性が求められる報道番組では何物にも代え難い利点であるため、報道番組は生放送であることが多い。

ただ、バラエティではこのメリットは活かしにくく、編集ができないという弊害の方が大きいため、基本的には生放送は避けるべきなのである。

逆に、バラエティでもこの「現実との即応性」という生放送のメリットが活かせる企画は作れる。

代表的なのが、素人とリアルタイムでやりとりをする「明石家サンタ」や、この「さんま・中居の今夜も眠れない」である。共通点はさんまがメインを張っているということであり、逆に言うと、さんま以外の芸人では「生放送」のデメリットの方が大きくなるので、生ではできないということである。さんまであれば、生放送なのにおもしろさの密度を維持しつつ、現実と即応した映像を展開できる。

今回のハイライトは、さんまがラブメイトで9位に挙げた女性から実際に生電話があり、その女性が16歳の高校生であることが分かったところである。

もちろん、事前収録の場合でもこの映像は撮れるのだが、生であることで、「電話が本人から来たものである」という真実味が増すのである。この電話を受けて「笑いの引きだけは強いやろ」と即座に切り替えしていたさんまも流石である。

このコーナーでの「たけし中継」も毎年の風物詩である。たけしが様々な扮装をして色々なことをやるのだが、結局水に落ちたり爆発に巻き込まれたりしてうまくいかないという一人コントが中継される。やっていることは極めて古臭いのだが、たけしの自然に醸し出される雰囲気(筆者はこれもフラ[http://mediagong.jp/?p=459]と呼んでいいと思っている)からある程度のおもしろさが出る。これは、ビートたけしにしかない強みである。

また、仮にスベっていても、見ているさんまがきちんとフォローできるので、スベリ芸としておもしろくなる。たけしほどの大御所をスベリ芸扱いできるのは、さんまみたいな同レベルの大御所が受け止めているからという理由もあるが、たけしがスベリ芸としての受け止めも許容しているからというのが大きい(例えば「情報7days ニュースキャスター」という番組においては、たけしのバカを受け止めるのは安住アナなのだが、安住アナが辛辣に対応してもたけしはそれを許している)。

このたけしのプロ根性は、他のかっこつけている大物芸人には見習ってほしい。もっとも、たけしももっと口跡をはっきりさせるべきなのだが。

<お台場のカイダン 本当にあったフジ縛霊の怖い話>(生放送)

「27時間テレビ」の深夜枠でよくやっている、芸人を大量に集めてのひな壇トーク企画。過去の例では、「大かま騒ぎ」などが類似している。

さんまがいれば締まるのだが、いないので締まっていなかった。生放送のグダグダさだけを押し付けられた恰好である。

生のうえ深夜なので、何らかのハプニングは期待できるのだが、そういうものもなかった。芸人もたくさんいすぎである。一回もフィーチャーされていない芸人が何人もいたので、単なるギャラの無駄であった。多くいればおもしろいというもんではない。

<早朝のフジ本気ロックフェスティバル>

見ていません。

<FNSちびっこホンキーダンス選手権>

以前のコラムでも書いた通り、結局見ていない(http://mediagong.jp/?p=10578)。内容も「予言」通りになっていないことを祈るばかりだが。

<めざましテレビ>

見ていません。

<とんねるずの女気じゃんけん>(収録)

収録なのは素直に評価できる。とんねるずみたいに無茶苦茶をやる芸人(http://mediagong.jp/?p=10585)は、生だと非常に危険なので使いにくい。

とんねるずも、話芸も動きの芸にも乏しいので、生だと間が持たない。収録という形だったのは、とんねるず自身の意向も大きかったのではないかという気がする。

ただまあ事前収録でも中身が中身なので、どうということはなかった。通常版の「男気じゃんけん」(http://mediagong.jp/?p=8973)と同じく、出演者の数が多過ぎてまとまりに欠けるうえ、漫然とロケが進んでいくだけなのでおもしろくもなんともない。

<TED×27hTV>(生放送)

表向きは芸人がテレビの危機に対して本気でプレゼンをするという企画だが、実際のところはこの設定をフリとしたドキュメンタリーコントだった。

本気で喋るべきところでフザけた岡村・ホリケン・ザキヤマ・劇団ひとり。最後のシメの部分で自分の浮気現場の写真を出されたカンニング竹山。まともに喋らせてもらえずにお湯に落とされる出川。オチは、トリなのに忘れられた加藤浩次である。

ただ全部使い古されたコンセプトであり、予想ができたのが問題である。加藤のオチなど、加藤本人も指摘していたが、中居くんがフリすぎである。

あとはまあ、生放送なのでグダっているという問題は他の企画にも共通している。

<2015FNSドリームカバー歌謡祭>

見ていない。

<中居・矢部の本気のスポーツ>(収録)

収録なのはいいのだが、最後中居くんが穴や熱湯風呂に落とされるというオチだったため、感動がやりたいのか笑いがやりたいのかよく分からなかった。どちらかに特化すべきであろう。

<サザエさん>(収録)

まあ、アニメ(の声録り)を生でやるというのは今では考えられないだろう。トチったら、それがそのまま放映されてしまうからである。翻って考えてみてほしいが、それはバラエティでも同じなのである。生放送であることが利点のように喧伝される今の状況がおかしいことに気が付いてほしい。

そして、久し振りにサザエさんをちゃんと見たが、おそろしくおもしろくない。

ジャンルでいうと「日常系」「空気系」のアニメ(特にヤマもオチも意味もなく、日常生活の模様が淡々と描写される種類の作品のこと)である。この手の作品では、展開それ自体にエンターテインメント性がないので、登場人物を可愛い女の子やかっこいい男の子で固めて、性的なアトラクションを加えるというのが通常のやり方である。サザエさんには、それもない。

なんでこれが何十年も続いて今でもかなりの視聴率をとるのかが謎である。推察するに、「ただチャンネルを点けているだけ」という家庭が多いのではないだろうか。

あと、岡村・矢部・中居・江頭の4人が声優として出演していたが、江頭が一番巧かった。

<テレビのピンチをチャンスに変えるライブ>(生放送)

岡村が延々他のアーティストに混ざってダンスをする企画。

岡村が通常のアーティストのライブに混ざってふざけたダンスをするというのは、めちゃイケの、特にオファーシリーズによく見られるコントである。このコントは、岡村に対する「言われたことしかやるなよ」というフリと、モニタリングしている矢部のツッコミがあって初めて完成するものである。

本企画は、岡村がただただ真面目に踊っている様を見てほしい企画だったのかもしれないが、その割にはお笑い寄りの演出が多かったので、見ている方としてはどう反応すればいいのかよく分からなかった。お笑いをやりたかったのだとすれば、フリは足りないし、矢部のツッコミも生なのでグダグダだった。

佐野アナの実況も、生に強いアナウンサーを入れることで矢部を助けたかったのかもしれないが、ツッコミに特化していたわけではなく、おもしろいことを言っていたわけでもなかったので、音楽と被って邪魔なだけだった。

<めちゃイケサイドストーリー>(生放送)

なんかあんまり記憶にない。15の夜をみんなで歌っていた気がするが、なんだったのだろう。

<グランドフィナーレ>(生放送)

大久保のゴールのタイミングは絶妙だったので、何らかのテレビ的な調整が入った可能性はある。結局大久保マラソンは「感動」企画扱いであり、オチのお笑いを担当したのは白鳥だったのだが、これについては後述。

<白鳥バンジー>(生放送)

白鳥が1日に158回のバンジージャンプというギネス記録に挑戦するという触れ込みの企画だったが、10回飛んだところでドクターストップがかかってしまい、その後は反省すべき人が飛ばされるだけの中継になっていた。

結局ほとんど何もできていなかった白鳥が、番組の最後の最後に一本飛ぼうとして、それをみんなから止められるというのが大オチになっていた。この大オチからすれば、途中でドクターストップがかかるというのは既定路線だった可能性もあるが、よく分からない。

<大久保マラソン>(生放送)

基本的には中継が入るたびにミニコントが入っていたので、加藤マラソンみたいなお笑い企画を志向していたと考えられるが、最後は矢部マラソンのように感動で締めてしまったので、中途半端である。感動がやりたかったのだとすれば、前述の通りゴールのタイミングが絶妙すぎたので、大久保が本当に限界だったのかが疑わしく、感動しにくかったのが難点である。

<鶴瓶の長すぎる話>(収録)

全体的には特に文句はないが、毎回「もう少し見たい」というところで終わってしまうので1回1回の尺をもうちょっと伸ばした方がよかったと思う。箸休めのこの企画を見たいと思ってしまうのは本編の生の映像がおもしろくないからだとは思うが。

<総評>

「笑いの中に感動を盛り込んだエンターテインメント」といえば聞こえはいいが、筆者からすればどっちつかずの中途半端な企画が多かった。もっとどちらかに特化すべきであろう。

ただ笑いか感動かが分かりにくかったのは、生放送で進行がグダっていたからというのもある。普段、事前収録の形になれている芸人やタレント達は、生放送だとあまりキビキビと動くことができていない。

生放送をやめるか27時間テレビをやめるかという2択である。正確に言うと、もう一つ「生放送の部分には全部さんまを出す」という解決策もある。

 

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高橋維新(たかはし・いしん)弁護士、コラム二スト。1987年、東京生まれ。2006年、東京大学法学部入学。2010年より「マヒ郎」のペンネームでファミ通町内会へ「ハガキ職人」として投稿を始める。現役ハガキ職人を続けながら、2012年に司法試験合格。2013年、弁護士登録(函館弁護士会)。ファミ通町内会長(第5代)。