渋谷直角の漫画「奥田民生になりたいボーイ 出会う男すべて狂わせるガール」がおもしろい!


高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]

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「奥田民生になりたいボーイ 出会う男すべて狂わせるガール」(扶桑社)という漫画を読んだ。

作者は渋谷直角という人で、1975年(昭和50年)生まれだという。筆者より20歳年下である。有名なのだそうである。筆者は初めて読んだ。

さてこの作品、まずタイトルが魅力的である。筆者は最初「奥田民生に」と「出会う男すべて」の2作品が所載された漫画だと勘違いしていた。「奥田民生になりたいボーイ」なら、是非読みたい。どういう点で奥田民生を目指すのか、なぜ奥田民生なのか、興味は尽きない。

ところが読み始めて分かった。35歳の編集者コーロキは家電紹介雑誌からライフスタイル提案雑誌に異動してくる。ライフスタイル雑誌はおしゃれである。「おしゃれなこと」を紹介する雑誌ではなく「おしゃれなことをやっている自分はすてきである」ことを主張する雑誌だと言うことも分かっている。

異動先にいるのは「奥田民生になりたい」という自分とは違うスカした連中ばかりだと危惧しているが、移ってみるとそうではなかった。皆いい人だ。編集長に早速仕事を任されたコーロキは、アパレル関係の候補の女性・あかりと出会う。

あかりは、今まで出会ったことのないほど、自分の好みで魅力的な女性だった。あかりとの関係はコーロキの妄想よりも、急展開で発展していく。あかりは、あっという間に自分の腕の中にいた。

そのあかりが実は「出会う男すべて狂わせるガール」であることが次第に分かっていく・・・と言うストーリー。ストーリーの運びがすごくうまいので、あっという間に熱中できる。筆者はあまり恋愛関係の話には興味がないが、コーロキが恋愛しながらも翻弄されながらも「奥田民生」であり続けようという姿に関心を惹かれる。

舞台設定はおしゃれだし、展開も今風のエピソードがちりばめられている。だから、そこを味わう漫画なのかも知れない。だが筆者は「奥田民生」への耽溺に興味が行く。

筆者なら「奥田民生」の所に誰の名前が入るのだろう。何人か思い浮かぶ。忌野清志郎であり、井上陽水であり、中島らもである。筒井康隆であり、山田風太郎であり、太宰治であるかもしれない。後者3人はジャンル違いだろうが。

何か、いろいろな選択肢があったときに「奥田民生なら、忌野清志郎ならどうするだろうか」と、考えてみることは有効なのかも知れない。

吉田戦車が育児マンガに行って、帰ってこなくなってしまって以来、読む漫画がなくなってしまった筆者は、すべての渋谷直角の漫画を古本屋で買った。

「カフェでよくかかっているJ-POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生」

「RELAX BOY」

「直角主義」

「a girl like you 君になりたい。」

(筆者註)過去の出版されている全作品を読み終えた。すべては本作への助走であった。故に、渋谷直角が初めての人は、本作から始めた方が誤解を生まないだろう。

 

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