<元海上自衛隊トップ・海将が緊急提言(5)>「集団安全保障措置」って何?国家が個別の意志で他国に武力行使することは国連憲章違反


伊藤俊幸[元・海上自衛隊 海将]

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今回は「集団安全保障措置」について説明したいと思います。

国連ができた70年前から地球上の全ての国家に認められる武力行使とは、

「国連の安保理決議に基づくか、或いは一定の国際社会が合意して許可する『武力制裁』しかない」

ということを皆様ご存知ですか? これを「集団安全保障措置」といいます。

そして国際社会がこの措置を取るまでの間だけ許される武力行使が「個別的又は集団的自衛権」であることは前回ご説明したとおりです。これ以外に国家或いは国家に準ずる組織が個別の意志をもって他国に武力行使することは全て「国連憲章違反」なのです。

戦前においても不戦条約により「戦争の違法化」は議論されていましたが、国連憲章第2条4項では「『武力による威嚇』又は『武力の行使』を慎まなければならない」と規定しました。「集団安全保障措置」とは、悲惨な大戦を三度は繰り返さないと国際社会が強く誓って創り上げた世界平和を維持する基本的考え方なのです。

地球上の全ての国家を一塊の集団として扱い、もし不当にも他国を侵略した国が存在した場合、その他の国々が集団で制裁を加えて止めさせる。この典型的な事例が、1990年8月イラクによるクウェート侵攻後の国連安保理の対応でした。

「悪いのはイラク」と認定し即時無条件撤退を求める「非難決議」を採択。それでも撤退しないイラクへの全面禁輸を求めた「経済制裁」、更に「経済制裁を実効足らしめる措置」が決議され、各国の海軍艦艇が参加する船舶検査活動が開始されました。

そして最後通牒としてイラクに対する「武力制裁容認」が決議されました。当時日本では、「米国中心の多国籍軍による湾岸『戦争』」と報じられていましたが、国際社会の為政者達は「国連による『武力制裁』」と認識していたのです。

一方で我が国は、憲法98条2項で「締結した条約及び確立された国際法規は誠実に遵守する」とありつつも、「必要最小限度の実力行使」、つまり他国の領域に行っての交戦権は否定されていますから、いくら国連が決議をしても「武力制裁そのものに参加」し武力を行使することはありえないのです。

ここで重要なことは、国連決議等に各国は従う義務がありますが、

「連絡員として軍人を派遣するだけ」

「後方支援だけ」

参加するのは各国の事情に合った方法で良いということです。但し、お金を出すだけで「軍人を一人も出さない」場合は、「参加」として認識されないことは皆様も良くご存じのとおりです。

 

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伊藤俊幸

伊藤俊幸(いとう・としゆき)元海上自衛隊トップ・海将。 昭和33年生まれ。防衛大(機械工学)卒業。筑波大学修士課程修了。海幕防衛部防衛課(平成6)、潜水艦あらしお副長兼航海長(平成8)、潜水艦はやしお艦長(平成9)、外務事務官(平成11)、第2潜水隊司令(平成14)、海幕監理部総務課広報室長(平成15)、海幕指揮通信・情報部情報課長(平成18)、情報本部 運用支援担当情報官(平成21)、海幕指揮通信・情報部長(平成22)、海上自衛隊 第2術科学校長(平成23)、統合幕僚学校長(平成25)を経て。平成26年、呉地方総監。平成27年退職。