[江川達也]<「演出」は詐欺師の技術だ>こどもの写真・証言は大人の心を動かすからこそ要注意


江川達也[漫画家]

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シリアからの亡命の途中、トルコの海岸で溺れて打ち上げられた3歳児の遺体写真が公開された。それが世論を動かし、ドイツがハンガリーにいるシリア難民の受け入れを決定する後押しとなったが、実はその写真が「やらせ」ではないかという疑惑が浮上した。

捏造写真には注意しなければならない。1枚の写真が人々の心を動かし、社会を動かすことがある。そういう写真はだいたいが「ニセもの」と思った方がよいのかもしれない。

特に子供の写真や子供の証言には、大人が心動かされる要素が多いので、特別な注意が必要だろう。かわいらしい子供が泣きながら「あの国の人にヒドい目にあった」と言う。

ヒドい目にあっているかわいい子供の写真を見せる。しかも、作為によって偽造された写真や、発言の方が、事実より説得力があったりする。

国民は怒りを増幅させて、戦争を仕掛け、結果、相手国のかわいい子供達を多数殺しまくってしまうことになりかねない。一時期の感情や正義感に動かされず、長期的な視野も持ちながら慎重な判断が必要だろう。人からの罵詈雑言は覚悟で。

しかし、難しいものだ。捏造か真実かを判断することは。

合理的に考えて不自然なもの、つじつまがあわないものを見分けるよう注意が必要なのだろう。感情に訴えるものは本当に危険だ。感情に訴えることが仕事になると、おのずと見えてくるものはあるが。

本当に詐欺師の技術だ。演出というものは。

 

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江川達也

江川達也(えがわ・たつや)漫画家。1961年、愛知県生まれ。愛知教育大学教育学部卒業。 アシスタントの傍ら描いた習作『Don't Give Up』が『コミックモーニング』編集部の目に止まり、1984年、「BE FREE!」(『モーニング』)でデビュー。その後『まじかる☆タルるートくん』を始めとする少年誌向けのギャグ漫画や、『東京大学物語』『GOLDEN BOY』などの青年誌向けのストーリー漫画まで幅広い分野で執筆し、作品がアニメ化されるなど、立て続けにヒット作を生み出す。