<若い世代は思い切ったテレビの業態転換を>「逃げ切った世代のテレビマン」ではテレビ改革はできない


高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]

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60歳となった筆者が、20代の長男に「テレビ業界は今、衰退している」と話をした。すると長男に「じゃあ、親父は逃げ切ったんだね」と言われた。

自分ではまだまだテレビでやりたいことがあるので「逃げ切った」とは思っていなかった。しかし、筆者(の世代のテレビマン)が、テレビ業界にまだ湯水のようにお金があった時代に放送作家として生きてきたことは事実だ。

テレビ業界が衰退していると言われる昨今の状況を見れば、「逃げ切った世代のテレビマン」と思われても仕方があるまい。

よく、企業の寿命は30年と言われる。これは企業が一つの業態で食っていける時間が30年である、と筆者は理解している。テレビが生まれて60年である。護送船団で許認可事業として守られてきたテレビは、各テレビ局単位と言うよりも業界全体として考えた方がわかりやすい。

60年も食うことができたテレビ業界は、30年たった当時(すなわち今から30年前)に何も業態転換をやっていなかったような気もする。

しかし、振り返ってみれば、やっていたことに気がついた。30年前の1985年頃、テレビはどんな業態転換をしたのか? 時はバブルの走りの頃である。

当時のテレビがやった業態転換は、

「バラエティ番組のゴールデンタイム定着化」

である。それまで、テレビでは添え物的扱いだった「笑いを中心としたバラエティ番組」が堂々とメインを張る、という業態転換が行われたのだ。それは、今も続いている。

だが、あれからさらに30年も経った。また業態転換を図らねばならない時代がやって来ている。

次はどんな業態転換をすれば良いか? については筆者にもいくつか腹案はある。しかし、それは職業上の秘密なのでここには書けない。そのアイディア自体が放送作家にとっては金を稼ぐ種になるだろう。

その代わり、この業態転換を行うべき世代について一言、言及したい。それは、あと数年で「逃げ切れる」と思っている世代のテレビマンには絶対できない。それができるのは、少なくとも第二回東京オリンピックの5年後、2025年までは、テレビで食べてゆかなければならない世代である。つまり、今の50代以下の人たちだ。

思い切った改革が担える世代は、若いほど良い。なぜなら、現在の広告代理店を通してスポンサーからCM料をもらうというテレビの強固なビジネスモデルを捨てることができるのは、「テレビが美味しかった」時代を知らない人々であるはずだからだ。

「逃げ切った」と思っている世代は、本来はテレビから去るべきなのである。

もちろんこの世代にも、「年齢ではない、やる気さえあれば」という人はいるだろう。確かにそう側面もある。しかし「逃げ切れる」と思っている世代は、業態転換の最前線に立つことはやっぱり難しい。この世代は「遠吠え」をすることしかできないだろう。

ただし「遠吠え」は負け犬の専売ではない、とも筆者は考える。「狼の遠吠え」は仲間に危険を知らせる信号でもあるからだ。

さて、筆者が考える業態転換のヒントを一つだけ出そう。それは、テレビ局が日本最大最強のソフト(コンテンツ)制作集団であると言う事実だ。

 

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