<小企業が技術力で大企業相手に奮闘>ドラマ「下町ロケット」は昭和人度のバロメーター


齋藤祐子[神奈川県内公立劇場勤務]

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TBSドラマ「下町ロケット」の勢いが止まらない。原作を読んでいるので筋はわかってはいるのだが、案の定な「小さいけれど技術力のあるメーカーが大企業相手に奮闘し、技術で勝利し認められる」という展開にベタで昭和なドラマだなあ、と思いつつ、贔屓の立川談春のせりふにうっかり感動して涙ぐんでしまう。

社員は大企業の厳しい性能検査に徹夜。社員食堂も総出で朝ごはんをふるまう。幹部の会議には当然女子社員はおらず(まあ、町工場に毛の生えた古い体質のメーカーだし)、でも品質が認められて、それまでコケにされ続けていた社員がガッツポーズ・・・。と典型的な男子受けする男噺。50代の会社員男性に受けている、という話も頷ける。

実際には、これだけの研究開発は大企業でないと続けられない、とは作者の池井戸潤自身が芥川賞受賞の際に東野圭吾との対談で明かしているが、感動できるエンタテイメントとして成立させるための工夫、ちょっとした嘘が作話の手法として含まれている。

日本人は、たとえば相撲でも圧倒的な強さで押し切って勝つスタイルより、先代の貴乃花のように、身体も小さく寄り切られそうではらはらさせられながらも、耐えに耐えて、最後に技のうまさで巨体力士に勝つ、みたいなスタイルが好きである。

だから、こういう話はまさに昭和の感性、昭和人の血の濃さをはかるにふさわしいところがあって、「このドラマで感動できたら血中昭和人度が高い」などと言えるような気がする。

筆者もかつて、セブンイレブンという会社にほれ込み、株式を買って応援していた。親会社のイトーヨーカドーが業績不振にあえぐ一方で、商品開発力や従来にない全く新しい展開で同業他社を悠然と引き離し、それどころか同業他社をライバル視もせず常に先を読んで早い意思決定をする姿に、小さくともアイデアと開発力で業績を伸ばす姿勢が、とても素敵に思えたからだ。

それだけに、グループ企業としてセブンアイという企業体に株式が変更された時はがっかりした。応援したいのはヨーカドーじゃなくてセブンイレブンなんだから、と。

現実には、資本力の差が技術力や商品開発力の差に直結することは多く(というかほぼそうで)たとえば黎明期ならともかくインターネットの世界でも、検索エンジンはグーグルの一人勝ち、ベンチャーが入り込む余地はすでになくなっている、というように、日本人的なというべきか、昭和の感性というべきか、小が工夫で大に勝つという感動できる話は少ないのが現実だ。

とはいえ、というかだからこそ、というべきか。そういう小が大に勝てない当たり前な世の中、加えて人口減だの原発事故だのでいいところもなくいい話もなく自信喪失気味、オリンピックで一時的には盛り上がってもその先それほどいいことがなさそうなこの国日で、やっぱりこの手の「昭和な感動」の強さ、見終わってすっきりする度合は最強である。

このあと、第2部の医療編(技術品質が人の命を左右する)に突入する中で「血中昭和人度」が保てるのか、多少冷静になって成り行きを見守るとするか。

いやいや、そんな風に斜に構えるよりうっかり感動して涙ぐみ、見終わってすっきりしてまた週明けの仕事に向かうほうが、サラリーマンとしてはテレビの日曜ドラマの正しい楽しみ方なのかもしれない。そう考えると、昭和人の血に訴えかけるのは、ドラマ業界ではまだまだ強い切り札ということか。

それとも、苦難を受け入れる哀しみよりは、苦難と闘って打ち勝つ話のほうが、誰だって好きだよね、ということなのか。あれこれ考えつつ、日曜ドラマで感動してすっきりするのが、しばらく癖になりそうである。

 

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齋藤祐子

齋藤祐子(さいとう・ゆうこ) 1984年、筑波大学卒。現在、文化施設に勤務。文化政策や現代美術、落語等の分野に関心が深い。