<「THE MANZAI2015」全ネタ批評>爆笑問題はサンジャポのフリートークの方が面白い


高橋維新[弁護士]

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2015年12月20日放映のフジテレビ「THE MANZAI2015」。筆者の持論は、「台本を作るなら完成度を高く」「そこまでの完成度を出せないならアドリブで」というものである。これが鉄則である。

以下、「THE MANZAI2015」に登場した各芸人たちのネタについて批評したい。

0.ビートたけし

冒頭「最高顧問」という触れ込みのたけしが、海パン姿で子供用のビニールプールで泳ぐというミニコントのようなものをやっていた。たけし自身が認める通り、「27時間テレビ」の火薬田ドンコントみたいなオチもなく、非常にシュールだった。多分、笑えなかった人の方が多いと思うが、来年以降どうするかは本人に任せる。

大物になってもこういう泥くさい笑いをやり続けるたけしは偉いのだが、本人は多分好きでやっていることだろうから、「嫌いなのに芸人としてのプロ根性で我慢してやっている」わけではない。好きなことをやっているだけだから、褒めてやる必要もない。

ただ、一点だけ確実に改善できる点がある。海パン一丁になったたけしの裸が完全に爺さんの体だったため、筆者は爺さんが若手芸人みたいなバカをやっている構図に若干引いてしまったのである。もう少し、肌にハリがあるように見せるための何らかの工夫が必要だろう。

1.フットボールアワー

ボケの絶対数が少なかったが、おもしろいのでよし。前後で複雑に絡み合う台本の構成は流石である。わざわざ台本を事前に作るからには、これくらいの完成度を目指すべきなのである。

2.タカアンドトシ

フットボールアワーと異なり、「アドリブ」でやっているように見えた漫才である。

タカが「待ってたよ」というボケを繰り返すくだりがあったが、3回目でトシが「持ち時間が5分しかないからこれ以上やるな。これはマジで言っている」という趣旨のツッコミ(兼フリ)を入れ、トシが案の定4回目の「待ってたよ」を入れた。

これは、トシがアドリブで台本にない4回目の「待ってたよ」を入れた(ように見えた)ものであり、実際にウケてもいたため、タカアンドトシの実力とリラックス感を非常に感じさせる場面であった。

無論全て台本通りだったのかもしれないが、そうは思わせないのがやはり2人の実力なのである。

3.トレンディエンジェル

M-1とネタがかぶったのは、当然良くない。

M-1優勝を受けて急遽出演が決まったらしいが、この番組を見るような人はM-1も見ているだろうから、M-1と違うことをやった方が確実にいいはずである。

4.ブラックマヨネーズ

いつものブラマヨ。特に文句なし。

小杉のハゲを一切いじらずにこれだけ笑いをとれるのは、トレンディエンジェルを遙かに凌駕する実力(と華)があるからである。トレンディエンジェルも飽きられたくなかったら早くこの領域に進む必要があると思うが。

5.ナイツ

塙の小ボケを積み重ねていくいつものスタイルに、「上」が含まれる単語をとにかく挙げていくというコンセプトが絡んでいた。

ナイツの漫才は、事前に台本を考えている割に小ボケを重ねていくだけの足し算の漫才であるため、あまりハネないのであるが、「上」を絡めるというアイディアはこの点を克服しようとする試みであるため非常によい。

さすがにアドリブでこれだけ「上」を重ねるのは難しいため、前もって台本を考える意味が出てくるのである。ただ「うまい」「すごい」の世界でしかなく、笑いには一切つながっていなかったので、再考が必要だろう。

6.NON STYLE

いつものNON STYLE。石田が動きすぎで少しガチャガチャした感じを受けたが、好みの問題にしかならないだろうからこれ以上言わない。

7.博多華丸・大吉

こちらもいつもの華大。これも好みの話にしかならないからノーコメント。

8.海原やすよ・ともこ

分析的に言うと、ボケとツッコミではなく、ツッコミと相槌の漫才である。

これだと、ボケがいない。筆者の理論体系だとボケがないと笑いが生じ得ないはずであるが、このコンビはしっかり笑いをとっている。それは、きちんとボケがあるからである。

ネタでは、向かって右のともこが、自分が見た東京人や大阪人のおもしろい言動をモノマネチックに再現する。この「再現」がツッコミである。

つまり、ボケているのは街中でともこに見られた一般人なのである、一般人のそのおかしい言動を、ともこが誇張してモノマネしつつ説明することで、何がどうおかしいかを客に伝える。これはまさに「ボケの何がおかしいかを説明する」というツッコミの役割である。

やすよは、(たまにともこのモノマネに誇張が入り過ぎていればツッコミを入れることもあるが)ともこの話を聞いている人でしかない。その意味で、やすよのやっていることは「相槌」なのである。

この構造は、ともこが「再現」をした時点で笑いが起きていることからも明らかである。やすよがツッコミを入れているのであれば、やすよが何か言って初めて笑いが起きるはずである。

つまり、このネタにやすよの存在は必須ではない。このスタイルならともこ一人でも笑いは呼び起こせる。

街中のおかしい人や物を取り上げてそのおかしい点をツッコむという意味ではあるあるネタチックであり、またそれを言う人一人で事足りるという点では矢野・兵動とも似ている。ただ、やすよは矢野ほど邪魔くさくはないので、「いない方がいい」とまでは思わない。

ピン芸人にとっては、大いに参考になるスタイルだろう。

9.笑い飯

「ガムの妖精」を交互に繰り返すネタだが、実際にガムの妖精が出てくる前にも毎回ボケが入るので、少しテンポが悪い。

あとは、ガムの妖精の足音とか、ふくらましているガムの大きさとか、二人の声とジェスチャーだけでは表現しにくい部分のボケが多く、漫才には向いていないネタだと感じた。ガムの妖精の「ガムガム」という足音を口で言われても、何の音なのかパッと見だと分からないだろう(筆者はガムを噛んでいる音かと思った)。

10.メイプル超合金

やっぱりM-1とネタがかぶっていたので、そのへんはどうにかならなかったのかというのが正直なところ。ネタ自体はM-1での感想に記した通り。

11.サンドウィッチマン

ボケとツッコミのセットを一つずつ積み重ねていくだけの典型的な足し算の漫才。これで持っているのは、伊達のツッコミに迫真性があるから。

12.三四郎

最初は普通に漫才をやっているのだが、最後の方にはツッコミの小宮の滑舌の悪さがイジられる。そういう意味ではたけしも言っていた通り「ゲテモノ」である。

何というか、少し取り扱っている題材がマニアックすぎる。

13.おぎやはぎ

小木のマジでボケている感は富澤や塙にもっと見習ってほしい点である。

14.キャイ~ン

やっぱり天野が考えたボケをウドに言わせることでウドの魅力がものの見事にスポイルされているのが残念なところ。もっとざっくりとした設定でウドにアドリブで泳がせた方が絶対におもしろいはずである。

ただその場合、ツッコミ役にウドの挙動の全てを受け止める確かな実力が必要である。天野だけだと、ちと不安なので、さんまあたりをあてがいたい。

15.ますだおかだ

これも典型的な足し算の漫才。増田がボケる時にほんの少しドヤ顔っぽくなるので「俺は今からおもしろいことを言いますよ」というのがにじみ出てしまい、こちらのハードルを上げている感がある。小木のようなマジでボケている感をもっと出してほしい。

16.チュートリアル

特に言うことなし。

17.パンクブーブー

雲を何で例えるかというボケをひたすら挙げていくだけのものであり、パンクブーブーには珍しくただの足し算の漫才になっていた。パンクブーブーならもっと練った奴が作れる。

18.ハマカーン

神田の変人っぷりに浜谷がキレながらツッコむというブラマヨみたいな漫才。いつものハマカーンなので、これはあり。

19.ジャルジャル

M-1と同じだった。

20.ウーマンラッシュアワー

これもウーマンラッシュアワーのいつものネタ。

村本が持ち時間を無視して暴れたようであり、それ自体の当否は両論あり得る。ただ筆者としては、ネタをやるだけじゃなくてそういう方向の笑いをもっと増やしてほしいということをずっと言っているため、村本の試み自体は買いたい。

とはいえ本人が嫌われ者なので村本がこういうことをやっても邪険に扱われることが多く、今回もあまりいい扱いは受けていなかった。ウドみたいな愛されキャラにこういうことをやってくれれば、突破口が開ける気がするが。

21.矢野・兵動

ウーマンラッシュアワーが持ち時間を無視したことをアドリブでイジれるのは流石。

やすよ・ともこの項で述べた通り、兵動が街中で見たおかしい人や物のことを話すといういつものスタイル。やすよ・ともこと同じく「ツッコミと相槌」の漫才であり、「相槌」役の矢野はいなくてもいいというのも同じ。

ただ、今回の矢野は2回目のENGEIグランドスラム(http://mediagong.jp/?p=10728)に出てきたときほど邪魔くさくはなかった。

まとめると、岡村も言っていた通り、単なる「兵動のすべらない話」である。ただこのことは、1回目のENGEIグランドスラム(http://mediagong.jp/?p=9977)に矢野・兵動が出てきたときに筆者が言っている。筆者の方が先に言っている。

岡村さ~ん! もしかして私の書いたもの読んでますか~!! 私の自意識過剰ですか~!!

22.中川家

可もなく不可もなく。

23.爆笑問題

何度でも言うが、これも典型的な足し算の漫才に過ぎない。太田は、アドリブで暴れた方がおもしろくなる。隣には田中という最高の御者がいる。

もっと分かりやすく言うならば、サンジャポの合間の爆笑問題の方が、確実にネタをやる爆笑問題よりおもしろいのである。それは、ネタという形でやっている(はずな)のに、サンジャポの合間でしゃべる時と全然クオリティが変わっていないからである。

クオリティが変わっていないのにおもしろくなくなるのは、「事前に台本を考えているからにはおもしろくなっているだろう」と考えた視聴者のハードルが上がっているからである。

 

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高橋維新(たかはし・いしん)弁護士、コラム二スト。1987年、東京生まれ。2006年、東京大学法学部入学。2010年より「マヒ郎」のペンネームでファミ通町内会へ「ハガキ職人」として投稿を始める。現役ハガキ職人を続けながら、2012年に司法試験合格。2013年、弁護士登録(函館弁護士会)。ファミ通町内会長(第5代)。