[茂木健一郎]<「宅配ドローン」に疑問>ドローンにはもっと違うイノベーションがある


茂木健一郎[脳科学者]

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ぼくはイノベーションを推奨する立場で、特に、破壊的イノベーションと呼ばれる、既存の制度やシステムを破壊するようなイノベーションこそが、文明を進めると信じている。

そのぼくが「ドローン宅配」については、今ひとつよくわからないというのが正直なところ。

Amazon Prime Airが発表されたとき、面白いからその動画を大学の授業とかで見せて、学生に「これどう思う?」とか聞いたけれども、その時も、このイノベーションがどう画期的なのか、自分の中でもよくわからないな、と思っていた。今でも、よくわからない。

ドローンを使うんだったら、もっと違うイノベーションがあるように思う。空撮映像が常に手に入ることによってできることはたくさんあると思うし(例えば交通量の把握とか、警備とか、環境因子の把握とか)、宅配に使うことが画期的という感じが、今ひとつしないのである。

おそらく、宅配ドローンは、注文してから配達までの時間が圧倒的に短縮できることがメリットとなる、ニッチなマーケットでは有効だと思うのだが、それが何なのかわからない。報じられているように医薬品などかもしれないが、それも事例が限られるような気がする。

必要が生じて、注文してからデリバリーまでの時間が短いとうれしいのは、典型的には食事だと思うが、食事をドローンで運ぶことが重量的になどどれくらい現実的なのか、わからない。結論として、宅配ドローンが画期的な効用をもたらすイメージが、どうもわかない。

一方、世の中には、ICTを使って起こせる画期的なイノベーションがたくさんあるような気がする。Airbnbや、Uberはそのような方向性の代表例だろう。ここでは、規制や法律が足かせとなって、思うような発展が見られないのが現状である。

Teach for America(アメリカ・ニューヨークに本部を置く教育NPO)の日本版がなかなか普及しないのは、教員免許制度のせいだということを聞いたことがある。小学校や中学校などで、ある教科を担当するのに、免許が必要だという理由がよくわからない。このあたりを規制緩和すれば、ずいぶんいろいろなことができるだろう。

新卒一括採用などの、日本独特の雇用に関する慣習も、よくわからない。大学入試が、国の主導で一斉に同じように変わるのもわからない。国立大学が併願できないのもわからない。要するに、教育でイノベーションを起こせる種はいっぱいあるような気がする。

日本の経済は成長して欲しいし、さらに発展した国になることを望むけれども、破壊的イノベーションの「本丸」は、宅配ドローンにある気がどうしてもしない。

要するに「見た目に派手だし、イメージしやすい」ということ以上の意義を、私は宅配ドローンに見いだせない。間違っているかもしれないけど。

 

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茂木健一郎

茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)脳科学者。株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所上級研究員。1962年10月20日、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程終了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を出て現在に至る。「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに文芸評論、美術評論にも取り組んでいる。