笑いの番組は情報に決然として別れを告げるべきである


高橋維新[弁護士]

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2016年1月8日放映のアメトーーク、テーマは「にんにく芸人」であった。ひとつの食材や料理を題材とした「食シリーズ」の一つであり、にんにくがいかに凄いかを語り合う典型的な「ホメ回」である。

ホメ回は、笑いのエンターテインメントとしては大してハネないというのは常々述べているところである。そのため,良質の番組にするには、「視聴者の知的訴求」に応える部分を押していくよりない。

普段の「ホメ回」だとこのあたりの手当てが全く為されておらず,げんなりしたまま番組を見続けることになるのだが、今回は少し違った。

「ニンニクという食材は、本来好きな人が多いのに、においのことが気になって好きだと公言できない人が多い」

というマクラから始まったのである。これを見て筆者は、少し「おっ」と思った。もしかしたら、最終的に「においのことが気になる」という問題点に解決法を与えて視聴者の溜飲を下げるオチになっているのかもしれないと期待できる入り方だったからである。

このオチが実現していれば,(「アメトーーク」でそれをやるかどうかはともかくとして)「ためしてガッテン」的な知的訴求に応えるバラエティとして一応の体裁を保てていたと思われるのである。

ところが、最終的には冒頭に提示されたこの問題点に対するスッキリとした解決法は全く与えられなかった。

「にんにくはすりおろしたり刻んだりして繊維を破壊するとにおいを発するので,丸のままであればさほどにおいはない」

ということが簡単に触れられたのみで、においを封じ込める方法を紹介するわけでもなく、においは実は気にしなくていいのだというコペルニクス的転回が提示されるわけでもなく、問題点が放置されたまま番組が終わってしまった。

「おいしいんだから別に臭いのことなんかいいだろ」と言わんばかりの終わり方であったが、そういう問題ではないだろう。

肝腎の中身もニンニク料理の店だとか、芸人が言うニンニクあるあるだとか、渡部と長野が紹介するニンニク料理だとか、安田美沙子のVTRだとかが順番に紹介されていっただけで全てがぶつ切りであった。

これでは構成もクソもない。番組全体を通して、冒頭の疑問が徐々に解消されていく(無難だが)堅実な作りの「ためしてガッテン」を見習ってほしいところである。

この程度であれば冒頭に設定した「においのせいでニンニク好きを公言できない」というテーマも、ホメ回の問題点を解決する「ポーズ」を見せるためだけの煙幕だったのではないかと疑われても仕方のないところである。試みとしてはいい方向を向いているので、きちんと内実を伴わせてほしい。

さて、番組での出演者についてそれぞれ論評してみたい。

[ケンドーコバヤシ]

この手のテーマでも(主に得意の下ネタで)全力で笑いを取りに来る生粋の芸人である。今回も安田美沙子に下品なことを言わせたVTRなどにその姿勢は見られたが、全体的には大人しかった印象である。宮迫が全て受け止めてくれるはずなのでもっと暴れていい。

[渡部建]

2015年に宮迫にハマった「明太マヨのくだり」というものがある。

元は,渡部の「明太マヨはこの世のありとあらゆる食材に合う。合わないものが思いつかない」という趣旨の発言から生まれたものであり、周囲が色々な食材を挙げて明太マヨに合うのかどうかを渡部に聞いていく中で、だんだん「かき氷」や「きんつば」みたいなそもそも合いそうもないものが挙がり、しまいには「スニーカー」とか「牛革」とかいった食材ですらないものが出て無茶苦茶になるというものである。

ただこのくだりは2015年の「アメトーーク」では渡部が出てくるたびに宮迫に繰り返されており、年末にはもう飽きられていた感じであった。現に2015年の年末スペシャルでは飽きた有吉やフジモンが「ハンバーグ」「和風ハンバーグ」「イタリアンハンバーグ」といったカブっているものばかりを挙げて「だんだんズレて遠ざかっていき、無茶苦茶になる」という流れを封じ込め、渡部をいじめていた。

今回の渡部は「にんにくバター」で明太マヨと同じことをやろうとしていた。狙いは見え見えだったが,宮迫が普通に乗っかってしまったので、年末SPのような渡部の狙いを封じ込めるタイプの笑いは生まれていなかった。ここまで分かりやすい二匹目のドジョウだったのだから、有吉やフジモンのようにもっと冷たくあしらった方が良かったと個人的には思った。むしろ渡部の狙いはそちらにあった感さえする。

これはむしろ、渡部ではなくて宮迫への文句である。

[なかやまきんに君]

今回はやることなすことすべてがスベっていたスベリ枠だった。

ただし、スベリ枠になるかどうかはツッコミ役の宮迫のさじ加減に依拠する部分はある程度ある。宮迫がツッコまずに無視して静寂の間を作り出せば、ある程度おもしろい発言でもスベらせることは可能だからである。きんに君の責任ばかりではない部分はあると思う。

真面目にいくなら、自分のキャラクターである筋肉とニンニクを結びつけた話をもっとすべきだろう。せっかくスベリ枠にしてもらったのだから「中山にんに君」ぐらいのことを言って豪快にスベってやった方が良かったのではないか。

あと、蛍原が宮迫に乗っかり、きんに君をポンコツ扱いするのが多少腹立たしかった。普段は自分もポンコツなのだから黙っていた方がいい。宮迫のきんに君に対する「おまえ全然オモロないな」というツッコミは字幕化してもらえていて、蛍原のツッコミが字幕化してもらえていないのは、内容がしょうもないからである。

 

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高橋維新(たかはし・いしん)弁護士、コラム二スト。1987年、東京生まれ。2006年、東京大学法学部入学。2010年より「マヒ郎」のペンネームでファミ通町内会へ「ハガキ職人」として投稿を始める。現役ハガキ職人を続けながら、2012年に司法試験合格。2013年、弁護士登録(函館弁護士会)。ファミ通町内会長(第5代)。