<続・生きてやろうじゃないの!>東日本大震災と被災者家族の記録(8)「生きてやろうじゃないの!」が生んだ思わぬ運命の波紋


武澤忠[日本テレビ・チーフディレクター]

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その後も筆者はカメラを回し続けた。母は次第に生きる気力を取り戻し、日に日に力強くなっていった。

でも本当は母は、必死に「元気になる自分」を演じていたのかもしれない。息子である僕に、心配をかけないように。

そして本「生きてやろうじゃないの!」の出版により、思わぬ出会いが生まれる。「生きてやろうじゃないの!」を読んだ静岡の中学1年生が書いてくれた読書感想文が青少年読書感想文コンクールで賞をとり、その表彰式に母も招待されたのだ。

そこで感想文を書いてくれた13歳の少女と出会い、今でも学校ぐるみの付き合いが続いている。

そして母の言葉に感動したという福島県いわき市在住の歌手・箱崎幸子さんが「お母さんが書いた言葉を是非歌にしたい」と作詞を依頼。本当にCDとして完成し(「生きてやろうじゃないの」作詞・武澤順子 歌・箱崎幸子 キングレコード)、地元いわき市でそのお披露目コンサートが行われ、母も招待された。

夫の死。

震災の被害。

家の解体。

・・・様々な日々の中で母が綴った言葉は、被災地の人々にどう響くのか。心配しながらカメラを回したが、客席のなかで涙を浮かべながら聴いている人々の姿に、ほっと胸をなでおろした。

客席にいた女性が、インタビューにこう答えてくれた。

「生きてやろうじゃないの!って言葉・・・聞けばそうか、って思うのに、なんでその言葉が自分の頭の中に思い浮かばなかったかなあ、ってことを感じました。素晴らしい言葉ですよね」

(※本記事は全10回の連続掲載です)

 

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武澤忠

武澤忠(たけざわ・ただし)日本テレビ放送網株式会社 チーフディレクター2011年より東日本大震災で被災した福島の実家をカメラで記録し続ける。2012年3月、それを一時間のドキュメンタリー番組として放送。(「リアル×ワールド ディレクター被災地へ帰る 母と僕の震災365日」平成24年度文化庁芸術祭参加、番組審議委員会推薦作品。以降シリーズとして放送)。その後「生きてやろうじゃないの!79歳 母と息子の震災日記」(武澤順子・忠 著 青志社)を上梓。現在「ザ!世界仰天ニュース」などを担当する傍ら、復興支援講演などを各地で行っている。