<埋もれた名作を観よ>映画「ホテルコパン」は今年ナンバー1の邦画


影山貴彦[同志社女子大学 教授/元・毎日放送 プロデューサー]

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鑑賞して数日が過ぎた。けれど感動がまったく冷めやらない。映画「ホテルコパン」(監督 門馬直人)。筆者は、この作品を、今年ナンバー1の邦画として推す。

いささか早すぎするだろうか? そうかもしれない。けれど筆者は確信しているのだ。強いて対抗馬があるとすれば、秋公開予定の「永い言い訳」(監督・西川美和/主演・本木雅弘、深津絵里)くらいだろう。

「ホテルコパン」は、本当に素晴らしい映画だ。ちなみに「コパン」とは「仲間」という意味。何より主演の市原隼人が素晴らしい。彼のインタビューを目にした。

「この仕事は、ビジネスなんだけど夢。夢なんだけど、ビジネス。でもビジネスが先行はしない」

という言葉が響いた。全く同感である。今、そのバランスがエンターテインメントの世界では崩れているように思う。

物語は信州・白馬のホテルが舞台。そこに集う男女の群像劇である。市原隼人は、過去に訳あって、ホテルで数年前から働く従業員の役。

ホテルの支配人を演じるのは近藤芳正。憎いほど巧い。主役のひとりと言っても過言ではない。そんな白馬のホテルに宿泊する、これまた訳ありの客たち。一癖も二癖もある。エピソードの紡ぎ方がとても効果的だ。一雫ライオンの脚本が光る。

宿泊客のひとり、清水美砂がとてもいい。ベテラン女優役を演じている李麗仙の芝居には泣かされた。長野オリンピックの絡め方も見事だ。東日本大震災から2年半、2013年の撮影だそうだ。映画の中のワンシーン、市原隼人が震災のニュースを伝えるテレビを凝視する。

その目がとてもいい。重いテーマながら、門馬直人監督のまなざしは優しく、救いがある。けれど甘く流れはしない。そこがまた素晴らしい。こんな映画を私たちは待っていたのだ。

けれど、世間ではこの作品を知らない人がまだまだ多数である。無理もなかろう、全国の映画館で、この作品を観ることができるスクリーンは、とても少ないのだから。そのことが悔しくてならない。

どうしてこれほどの作品をしっかり上映することができないのか。ひとつのシネコンに10前後のスクリーンがあることが今や普通のスタイルだ。それにも関わらず観たい映画が、その中にない。そんな思いをどれだけの映画ファンがしていることだろう。

前述の市原隼人の「ビジネス」と「夢」の話がダブってしまう。ただそんな悔しさも、本作品においては時間の問題で薄れることとなろう。

近々、「ホテルコパン」は映画通たちからの高い評価で溢れること間違いなしなのだから。そうならなければ世の中の方がおかしい、くらいに筆者は思っている。

今、世の中に出ているエンターテインメントの中で最高である。 確実に多くの観客が満足されることを保証する。映画「ホテルコパン」。1日でも早くご覧になることを強くお勧めする。

 

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影山貴彦

影山貴彦(かげやま・たかひこ)同志社女子大学 学芸学部情報メディア学科・教授。早稲田大学政治経済学部卒。専門は「メディアエンターテインメント論」。毎日放送(MBS)プロデューサーを経て現職。日本笑い学会理事。著書に「テレビのゆくえ」「おっさん力」「百恵讃」「社会人大学院生入門」など。