<「クロ現」がリニューアル>「クローズアップ現代プラス」は視聴率狙いの凡庸な番組になってしまった?

テレビ

高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]
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恐れていたことが目の前のテレビの中で起こっていた。
国谷裕子キャスターが23年勤めたNHK「クローズアップ現代」の後継番組「クローズアップ現代+(プラス)」の第1回放送。
骨太なジャーナリズム精神に裏付けられた報道情報番組である「クロ現」だが、リニューアルの「プラス」では視聴率狙いの凡庸な普通の番組になってしまっていた。筆者がそう感じた点を以下に記す。
<1>取り上げたテーマが「プロ野球選手の賭博問題」である。
もちろん、社会的にも関心の高いデーマでるので、番組で取り上げても良いテーマではある。しかし、従来の「クロ現」の方向性から考えれば、第1回目で取り上げるべきものではないだろう。
つまり「多くの人が興味を持つだろう」という目論見がわかりやすく、その結果「視聴率が取れるだろう」というスケベ心が透けて見えてしまうのだ。
<2>調査報道の目玉が、賭博に関連した投手の独占インタビューである。
「独占インタビュー」という手法をことさら強調するのは、何も考えていない刺激だけを求めた構成のように思える。
<3>スタジオのセットが赤くてチラチラする。
そのうち見慣れてくるのかもしれないが、民放の情報番組的なセットはやはり「違う感」を漂う。
<4>背景でイラストを描き続けるという余計な演出がある。
余計な演出をしなければ番組が持たないと思っているのだろうか。むしろ、詰め込みすぎだろう。この演出が果たす効果はどこにあるのか。いささか疑問だ。
<5>1回目のゲストが伊集院静氏である。
本来なら他の人選をゲストに迎えたのではないだろうか。例えば、国民的スターである王貞治氏などだ(あくまでも、例です)。伊集院氏と王貞治氏どちらの話を聞きたいか? を考えてみればを、それは火を見るより明らかだ。俄然、「世界の王」だろう。「他のゲストも交渉したけれど、ブッキングできなかった」という理由も十分に想定できるが、そういった言い訳は見ている方には伝わらない。
もちろん、まだ1回目である。これからどんどん変化する可能性があることは「救い」でもある。直すところがいっぱいある番組には、成功の道筋もたくさんある、ということでもあるのだ。
 
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