「報道の自由」の低下は日本が発展途上国に戻りつつある証か?[茂木健一郎]


茂木健一郎[脳科学者]

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報道の自由度ランキングで、日本の順位が落ち続けているというニュースがあった。このランキングの内容については、英語版のwikiが詳しい。

また、報道の自由度ランキングの計算方法については、https://rsf.org/en/detailed-methodologyに詳述されている。ランキング算出の基礎になっている質問のリストは、https://rsf.org/sites/default/files/indexquestionnaire_anglais.pdfにpdf fileがある。

言うまでもないことだが、経済が情報化、ネットワーク化して、いわゆる「破壊的イノベーション」が文明を進める原動力になっている今日において、報道の自由なしで、継続的な経済成長を続けることは難しい。

【参考】<日清カップヌードルCMに思う>特定のテーマ・人物に対して許容できないアレルギーを持つ人たち[茂木健一郎]

近年の中国のように、製造業を中心に(世界の工場)経済発展してきた国では、一時的には報道の自由なしの経済成長が可能かもしれないが、経済の情報化に伴うイノベーションというフェイズになると、成長を続けることは難しいだろう。

日本における報道の自由が低下しているということは、すなわち、日本の社会のマインドセットが「発展途上国型」に戻りつつあるということで、これは日本の国益にとってよいことであるはずがない。

政治家や政府が、自分たちに都合の悪い報道がなされることに対するネガティヴな感情を持つことは自然なことである。しかし、報道の自由が国の中長期的な繁栄の必要条件であることを正しく理解すれば、自らに不利なことでも報じる自由を確保することが国益に叶うとわかるはずだろう。

結局、報道の自由が低下するのは、政治家、政府が、本当の意味での国益を考えていないか、あるいは政治を私物化しているか、あるいは、国益の保護、という名の元に、実際には国家の発展の基礎について十分な考察をしていない場合に、起こる事象なのである。

【参考】<芸人の素人イジりに疑問>地上波テレビに強まる「閉じた」感覚[茂木健一郎]

ところで、報道の自由の受益者であるはずのメディアが、諸外国からのその異常性を指摘されている「記者クラブ制度」を維持していることは理解できない。政治家や政府に対する批判的思考を、自分たちにも向けることは大切だろう。

ランキング算出の基礎になっている質問のリストhttps://rsf.org/sites/default/files/indexquestionnaire_anglais.pdfには、ジャーナリズムの専門家を要請する高等教育プロセスがあるか、という項目もある。日本では、そもそも、報道の自由の理論的、実践的な専門家を養成するプロセスが脆弱なのかもしれない。

 (本記事は、著者のTwitterを元にした編集・転載記事です)

 

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茂木健一郎

茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)脳科学者。株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所上級研究員。1962年10月20日、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程終了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を出て現在に至る。「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに文芸評論、美術評論にも取り組んでいる。