「天才」とは大人になっても5歳児の自由さを保っている人[茂木健一郎]


茂木健一郎[脳科学者]

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この夏、移動中によくご家族を見る。新幹線の中などで、子どもたちがいろいろ話したり、遊んだりしているのを見ていると面白いし、かわいい。そして、改めて思うことは、すべての子どもは天才だ、ということである。

先日も、5歳くらいの女の子が、ずっとデタラメの歌を即興でうたっていた。なぜ即興とわかったかというと、風景でそのとき見たものを取り入れていたからである。天才だなあ、と思った。そして、この子が、ずっとその天真爛漫さを保ってくれればいいなあ、と思った。

幼い時は神童で、20歳過ぎればタダの人、とはよく言われるが、これは特別の人のことを言っているのではない。私たちすべてに、この警句はあてはまる。では、なぜ、子どもは天才なのに大人はタダの人になるのか? 常識というものにとらわれるからだ。

【参考】<「均質」が大好きな日本人への挑戦?>東京大学先端研と日本財団が始めた「異才発掘プロジェクト」

不完全な子どもが、次第に学んで、大人という完成形に近づいていく。このような学習観自体が、自由をうばっている。常識、先入観という社会の安定装置で、その人の自由な発想や行動が縛られ、そのことで天才性を失ってしまうのだ。

大人になっても、5歳の子どものような自由さを保っている人を、人は天才という。そして、天才はサバイバー(生きのびた者)でもある。常識を押し付ける社会の安定化装置は強力だから、それをくぐり抜けた者だけが、創造性を維持できるのだ。

もっとも、同化圧力は、社会の安定のためにある程度は必要である。同化の「ファイアウォール」は、それを乗り越えた者だけに自由が与えられる入場券のようなものだろう。入場券を有効にするのは、あなた自身である。

 (本記事は、著者のTwitterを元にした編集・転載記事です)

 

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茂木健一郎

茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)脳科学者。株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所上級研究員。1962年10月20日、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程終了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を出て現在に至る。「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに文芸評論、美術評論にも取り組んでいる。