<福島事故処理費用「20兆円」>『柏崎刈羽原発正常化』を政治決断しなければ国民全員負担!


石川和男[NPO法人社会保障経済研究所・理事長]

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11月27日付の毎日新聞によれば、

①2011年3月の東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所事故の賠償や廃炉に要する費用が総額20兆円超に上り、

②従来の政府想定のほぼ2倍に膨らむと経済産業省が試算、

③同省は拡大する費用の一部を東電を含めた大手電力と新電力(電力自由化で新規参入した業者)の電気料金に上乗せする方針

・・・とのこと。

経産省はこれまで、福島第一原発事故の処理費用を総額11兆円と見込んでいた。これらの費用に要する資金については、国の原子力損害賠償・廃炉等支援機構が一時的に立て替え、東電を通じて対象者に支払われている。後日、東京電力と他の大手電力会社が電気代などから返す仕組み。

だが冒頭の記事によると、その処理費用が従来試算のほぼ2倍になると経産省で新たに試算しているようで、それにかかる追加費用を誰がどう負担するのかが焦点となっている。

経産省がこんな案を提示するのは、政府の行政責任もあるが、政権与党の世論読み過ぎ、一部マスコミの異常な煽動と“報道ネタのデフレ”に因るところも大きいと私は思っている。いつまでも叩き続けることのできる報道ネタとしては、原発問題を凌駕するものがないのだろう。

東京電力、2012年9月の電気料金値上げ時の原価算定で、柏崎刈羽原発(KK)1・5・6・7号機が2013年4月から、同3・4号機が2014年4月から順次再稼働するとの想定で政府から認可を受けた。

だが、現在までのところ、柏崎刈羽原発は再稼働していない。この場合、再稼働していないことによる現在のコスト負担の苦しみは、誰の責任なのか? 認可を受けた東京電力の責任か?  認可をした政府の責任か?

【参考】期待外れの「電力自由化」よりも期待外れになる「ガス自由化」

筆者は、政府の責任であると考えている。柏崎刈羽原発の再稼働のために必死になって立地町村民など地元関係者や原子力規制委に説明・説得をしなければならないのは、東京電力以上に政府であるはずだ。それが行政責任というものであろう。

筆者の試算では、柏崎刈羽原発が再稼働する場合としない場合での追加燃料費の負担に係る差額は、前提とする原発の稼働率で異なるが、年間約5900億~9600億円となる。この負担額のごくごく一部については東京電力の自助努力で吸収することができなくもないが、大部分に関しては東京電力管内の需要家が賄うなど、誰かが負担するしかない。

柏崎刈羽原発が再稼働するかしないかで、これほどまでに費用負担額に大差が生じる。換言すれば、原発再稼働による収益を活用することで、新たな国民負担は不要となる可能性があるのだ。

原発事故の処理費用は、原発事業の全ての工程を考えれば、原発事業収益で賄うことが本筋であり、それこそが国民的追加負担を発生させない唯一の手法である。原子力正常化への政治決断で、国民的追加負担はゼロにできる。

そういう視点からすると、東京電力以外の大手電力や新電力の電気代値上げによって賄うことは、本来は筋違いな話ではある。しかし、『柏崎刈羽原発の正常化』を国会・政府自身が躊躇している中では、東京電力以外の大手電力や新電力に負担を求めることは、「次善の策」としては仕方ないことだ。

この次善策に対しては、東京電力以外の大手電力にも、新電力にも、それぞれ反対の言い分がある。それらは重々理解できる。だが、大手電力の需要家も、新電力の需要家も、それぞれ相応に負担しないといけない。

特に、新電力の負担増には反対論が強い。沖縄電力を除く大手電力は原発を保有しているが、原発を保有している新電力はない。新電力側からすれば、原発を保有する大手電力側だけで負担するのが筋だ、ということだろう。

それも一理ある。ところが、新電力の需要家は大手電力の需要家に比べ、全体的に、電気の消費量は多く、所得水準も高い。もし、新電力には負担を求めないとなると、「高所得層への優遇」となってしまう。これは、日本の政治・行政の姿としては決して容認されない。

『柏崎刈羽原発の正常化』を政治決断しない限り、国民的負担は必ず増え続けてしまうのだ。

 
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石川和男

石川和男(いしかわ・かずお)NPO法人社会保障経済研究所・理事長。1965年、福岡県生まれ。東京大学工学部卒業。1989年、通商産業省(現経済産業省)入省。エネルギー政策、産業保安政策、産業金融政策、中小企業政策、消費者政策、物流・流通政策などに従事。2007年3月、経済産業省を退官。2008〜09年、内閣官房・国家公務員制度改革本部、東京財団上席研究員、政策研究大学院大学客員教授、政府の規制改革会議、行政刷新会議WGなどの委員を歴任。