<映画「ザ・コンサルタント」>裏社会で巨利を得る「発達障害の会計士」の描かれ方


高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]

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『ザ・コンサルタント』(原題: The Accountant)は(ギャヴィン・オコナー監督2016年)はアメリカのアクション映画だ。

「コンサルタント」という邦題はダメである。原題は「The Accountant」会計士であるが、この映画は自閉症者が会計士になったところに意味があるのであって、コンサルではない。原題が嫌ならコンサルタント以外の邦題を案出するべきである。

幼少の頃、高機能自閉症で、(この言葉は、hyper function autismを、そのまま訳したもので、特殊な能力を持った者、と言う意味ではない。「言葉がない自閉症ではなく、言語が使える機能がある」というような程度である)計算能力が驚異的に高かった少年は(こちらの方の能力は、サヴァンと呼ばれる。併発するケースもあるがきわめて稀で、おおくの高機能自閉症者はサヴァンを持たない)不幸にも父が自分の力のみで生き抜いてきた軍人であった。

【参考】「障害プラスα~自閉症スペクトラムと少年事件の間に~」は自閉症への間違ったイメージを広げた?

母親とは養育方針が異なり、父は誰にも頼らず、ひとりでも生きていける力を、彼と健常児である弟に付けようとする。格闘技、ナイフの使い方、射撃。母は、離婚して家を出る。

これは筆者の個人的な思いだが、自閉症者に対する強要による療育は悪い事態を招くと思う。残念ながらデータがあるわけではない。

少年は長じて裏社会の会計士として働く。裏社会で、ヒミツに接し、高額の収入を得ながらそれでもなぜ、命を長らえ続けるのか、殺されないのか。その理由は彼の方が殺すからである。彼は自分を付け狙う殺し屋を躊躇なく殺す。

自閉症者が犯罪に手を染めやすいと感じられてしまったら残念である。自閉症と犯罪率は全く関係がない。この映画の主人公の殺人は必殺仕事人のような「やむを得ない正義の殺人」のように描かれるが、現代社会では、正義の殺人などないのである。

自閉症者にひとつほっとする描写がある。自閉症者を含む発達障害者は「人の心が分からない時がある・共感力が低い」と言われている、だが「当事者どおしならば、むしろ共感力が高いと言う最新の研究結果」を踏まえた描写である。

軍人である主人公の父は、アメリカの画家カシアス・マーセラス・クーリッジの絵画『ポーカーをする犬』 (Dogs Playing Poker)が好きで合ったという設定である。この暗喩するものは「アメリカ人の安っぽい集合的無意識。労働者階級の人間が家を飾るときの趣味を体現したものとしてあざけりの対象」である。日本の家庭ならば相田みつを、ラッセン、武者小路実篤の類いである。

「力で何ものをも成し遂げられると信じているアメリカ人」がその父親像として描き込まれている点では、今日見るに当たって、この映画は深い。

 

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