<創造性の核心>創造性は生み出すものにとっても「驚き」である – 茂木健一郎


茂木健一郎[脳科学者]

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今日からしばらく、「創造性」について考えてみよう。創造性は、しばしば「無」から生み出されるものとしてとらえられるが、これはもちろん間違っている。実際には自然は飛躍しない。脳内過程としても、連続したプロセスとして起こっている。

それにもかかわらず、創造性が無から有が生み出される過程だと思われがちなのは、まず、創造者を外から見ている人にとってそう見えるからである。あたかも何もないところから生み出されているように見えるから、創造性についての誤解が生じる。

さらに重要なことに、創造者自身にとっても、創造性は、無から有を生み出しているように感じられる。創造者は一般に、自分の作品を価値のあるものに「見せる」ためには起源を秘匿した方が有利だが、そのような見せかけとは別に、実感として無から有が生み出されているように感じるのである。

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ひらめきやインスピレーションは、脳内過程としてはもちろん連続的に起こっているが、それを意識の中で認識する時には、あたかも何もないところから生まれてきたように感じられる。創造者自身にとって、「無」から「有」というのは一つの正直な実感である。

このように考えてくると、創造性を理解するためには、創造者自身が把握していない無意識の中の過程と、それを認識する意識の中の過程の関係性が重要であることがわかる。また、創造されたものが創造者自身にとっても一つの驚きであることも注目されなければならない。

過去の記憶を想起する時には、その内容が思い出す者にとって驚きであるということは通常ない。創造性において、生み出されたものが驚きであるということは、それだけ、生み出されたものが(見かけ上の)新奇性を持っていることになる。この新奇性のメカニズムが創造性の核心である。

(本記事は、著者のTwitterを元にした編集・転載記事です)

 

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茂木健一郎

茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)脳科学者。株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所上級研究員。1962年10月20日、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程終了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を出て現在に至る。「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに文芸評論、美術評論にも取り組んでいる。