<脱法ドラッグ新名称「危険ドラッグ」に疑問>もっとバカらしい、くだらない名称にすること最大の抑止効果


藤本貴之[東洋大学 准教授/博士(学術)/メディア学者]

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7月22日、警察庁と厚生労働省は危険性が認識されづらく、安易な利用を誘発する危険性があるとして、「脱法ドラッグ」の新しい名称を公募の結果「危険ドラッグ」と定めた。7月5日から18日までの約2週間の募集期間で、集まった新名称案は1万9887件。そのうち、「危険ドラッグ」は102件と上位5位であったという。

「危険ドラッグ」という名称を聞いて、筆者がまず感じたことは、その名称で危険性を認識させても、それによる抑止効果などは、極めて限定的であろう、ということだ。そして、むしろ旧「脱法ドラッグ」を、より違った形で蔓延させるのではないか、という逆の危険性さえ感じている。

「危険ドラッグ」という新名称は、「危険」という危機感をあおる言葉と、「ドラッグ」という漫画や映画などでも違法薬物として良く目にする表現の組み合わせで構成されている。たしかに「脱法=違法ではない=悪くなさそう」という印象よりは危険性や違法性を認識しやすい名称だろう。もちろん、「まさか麻薬とは思わなかった…」という予期せぬ利用の抑止というレベルであれば、多少の効果はあるかも知れない。

しかし、「危険」や「ドラッグ」という表現の持つ「違法性」や「危険性」以上に、そこにあるそれら言葉が持つアウトロー的なカッコ良さは残り、むしろその「危険なカッコよさ」は増幅している。アウトローや悪、あるいは危険といった事象に憧れたる層はどの社会、どの世代にも一定度おり、その数は決して少なくない。

そもそも、覚せい剤や麻薬などの「既に正式な違法薬物として認識されている薬物」などであっても、危険で違法だからこそ魅力的に映る、思わず手にしてしまう、という一面も決して小さくないだろう。

それは「暴走族」と同じ構造である。そもそも「バイクや車で違法な危険運転をする集団」を「暴走族」という「コッコイイ名称」にしていることに、本質的な問題がある。近年、「暴走族」を「珍走団」というバカらしい呼称に変更しよう、という動きもあるが、もし、メディアや警察が「暴走族」を一斉に「珍走団」と呼称すれば、「暴走族」のカッコよさは急激に低減するはずだ。

「日本人の誰が聞いてダサい名前」「カッコ悪い名前」であれば、少なからず、そこに参加しよう、関わろう、やってみよう、という層の減少はかなり期待できるのではないだろうか。「危険ドラッグ」という名称は、その考えには完全に逆行している。

「危険ドラッグ」は、名称として「危険性を理解してもらう」ことに傾注した結果、「危険という魅力」を引き出してしまい、「危険を理解した上で、むしろ憧れる」という層への「本当に危険な関わり」への可能性を増幅させている。

だからこそ、旧「脱法ドラッグ」の蔓延と安易な利用を抑止するためには、よりダサい名称、カッコ悪い名称を付けるべきなのだ。しかも、ニュースになるぐらいインパクトをもった「バカにした名称」「バカらしい名称」にすべきなのだ。

筆者はいくらでも思いつくが、あまりにもくだらない、バカにした名称なので、ここでは記さない。それぐらいの破壊力のあるバカバカしい新名称でなければ、本当の危険性の周知と抑制には繋がらないだろう。(藤本貴之[東洋大学 准教授/博士(学術)/メディア学者])

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藤本貴之(ふじもと・たかゆき) 東洋大学総合情報学部・准教授(情報デザイン論・メディア構造論)/北陸先端科学技術大学院大学・教育連携客員准教授/藤本情報デザイン事務所・執行役員/JAGDA正会員/最先端のメディア研究・メディア技術の知見から、アカデミズムの枠を超え、企業や自治体などを対象としたメディア設計や情報発信戦略など、数々の実践的なプロジェクトを手がけている。主な著書に『情報デザインの想像力』『脳にアイデアを思いつかせる技術(講談社)』『映像メディアのプロになる!(河出書房新社)』など、多数。