<違法残業の罪>自殺者を出した違反でも「電通」は罰金50万円


保科省吾[コラムニスト]

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電通は違法残業撲滅のキャペーンCMを制作してテレビで流すべきである。自殺者さえ出した違法な残業による労働基準法違反で「罰金50万円」・・・という、なんとも釈然としない判決報道を聞き、そう思わされた。

NHKは以下のように報じている。

(以下引用)「大手広告会社『電通』が社員に違法な残業をさせたとして労働基準法違反の罪に問われた裁判で、東京簡易裁判所は『違法な長時間労働が常態化し、サービス残業がまん延していた』などと指摘し、罰金50万円の判決を言い渡しました。電通は新入社員だった高橋まつりさん(当時24)が過労のため自殺したことをきっかけに捜査を受け、高橋さんなど社員4人に違法な残業をさせたとして労働基準法違反の罪に問われました」(以上引用)

この事件について、東京区検は7月、法人としての電通を労働基準法違反の罪で略式起訴したが、東京簡裁が非公開の書面審理だけで結論を出すのを「不相当」と判断し、正式裁判が開かれていた。

(以下引用)「高橋まつりさんの母親の幸美さんは裁判のあと弁護士とともに記者会見し、用意した紙を読み上げ『社員に対する違法な働かせ方は犯罪であり、会社に責任があるということが証明されました。どんなに立派な仕事をしていたとしても労働基準法違反は許されない犯罪です。社員が過労死しなければ罰せられない、調査が入らなければ罰せられないという間違った認識で会社経営が行われることがないよう、引き続き労働局の監視を強化してもらいたいと思います』と涙ながらに訴えました」(以上引用)

さらに、幸美さんは労働者が死亡した場合の罰則が強化されるよう法律の改正を望むと訴えた。筆者も電通に罰金50万円はいかにも少ないのではないかと思う、大電通に取ってみれば蜂に刺されたくらいの、いや、蠅に止まれたくらいのわずかな罰金額である。

同基準法では、違法な長時間労働に対する罰則は「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」と定められている。今回の裁判では、まつりさん含む4人の社員の違法な長時間労働が問われていたが、それでも罰金の上限は120万円にしかならない。この上限金額そのものが少ないのではないか。

【参考】<過労死大国ニッポン>国が進める「働き方改革」まで電通がプロデュース?

東京簡裁の菊地努裁判官は 電通の社会的信用は低下し、業績も落ちるなど社会的制裁を受けており、再発防止策も講じている」と指摘。罰金額について、他の労基法違反事件の量刑を考慮したと説明した。本当に電通は社会的制裁を受けているのか。

(以下引用)「判決後電通の山本敏博社長は『判決を厳粛に受け止めるとともに責任の重大さを改めて痛感し深く反省しています。高橋まつりさんとご遺族の方々には申し訳ない気持ちでいっぱいです。果たすべき社会的責任を果たせなかったことを社会の皆様にも心からおわびします』と述べました。そのうえで『現在取りかかっている労働環境改革を必ず成し遂げます。その実行を通じて電通が働き方も働きぶりにおいても皆様から信頼してもらえる会社になることが社長の最大の責務だと考えています。法律を順守し過重労働を根絶し、労働環境をよいものにすることをおわびとともに約束させていただきます』と述べました。さらに経営の影響について問われると『非常に重大な影響だと受け止めています。仕事に取り組んでいくやり方がこれまで正しいと思っていたこと、これがお客様のためになる、会社の成長になると思っていたことが根本的に間違っていました。時間を無尽蔵に使って社員の心身の健康を害すようなやり方で仕事をしていたと気づかされたことが、経営が受けた最も大きな影響だと考えています』と述べました」(以上引用)

なるほど、これほどの反省をしているのなら、電通は労基法罰金上限を上げるために、得意のロビー活動をするべきだし、過重労働や過労死がはびこるほかの会社や世の中に向けて、これまた得意のテレビCMを制作して違法残業撲滅のキャペーンCMを流すべきである。

流すワクなど電通なら感単位押さえられると思うが、たいへんなようなら、4年前、記者が過労で心不全で死亡したNHKなら、協力してくれるかも知れない。

このキャンペーンCMはもちろん利益を得るためではなく公共のためのCMだから、番宣だらけのNHKの枠を利用すれば十分可能だろう。

 

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メディアゴン 編集部

メディアゴン編集部(めでぃあごんへんしゅうぶ)2014年5月末日、東京生まれ。メディア批評・メディア評論に特化したメディア専門家によるメディアニュースサイト。キー局プロデューサー、ディレクター、イベントプロデューサー、放送作家、大学教授、評論家、ゲーム作家、弁護士・・・などなど、メディアの第一線で活躍する人材が活動中。