NHK「わろてんか」ナレーションが小野文恵アナはミスキャスト

テレビ

高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]
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NHKの小野文恵アナウンサーのすばらしいところは、「NHKのアナウンサーらしくない」ことである。
仕込まれたような紋切り型のアナウンサーが多い中で、自分の言葉でしゃべる人だ。本音でしゃべるので、その言葉はほかの出演者にもきちんと届き、司会進行は実にうまい。「ためしてガッテン」でも、うるさ型で自分の進行を邪魔されると極端に嫌がる立川志の輔をも、見事に操る。
土曜朝の「NHK週刊ニュース深読み」では、メイン司会になったのでその司会術を縦横に発揮してすばらしい。自由自在に発揮する技はまさに水を得た魚。番組の肝となっていたが、交代したのは残念な事である。
10月から始まったNHK連続テレビ小説「わろてんか」では小野文恵アナがナレーションを務めている。適材適所という意味で考えれば、これはあまりよろしいキャスティングとは言えない。大阪の芸能界の隠語で言えば「任ではない」。つまり、ミス・キャストと言うことである。
【参考】NHK朝ドラ「とと姉ちゃん」に感じる違和感
ドラマであってもドキュメンタリーであってもナレーションは「芝居」が必要である。脚本家が書いた原稿に、その脚本家が表現したい気持ちをのせて「芝居」しなければならない。ドキュメンタリー番組で有名役者にナレーションを付けてもらって、喜んでいるテレビマンがいるのもそのためだ。逆に、ドキュメンタリー作家でナレーションというものを拒絶する作家がいるのもそのためである。
ナレーションというのは聞き慣れるという側面もある。しかし、TBSの「世界遺産」を担当していた藤原竜也のように、ずっと、こんなに暗いタッチのナレーションが好きなのは誰なのだろうと違和感を持ち続けたものもあった。ちなみに、「世界遺産」は杏に変わって聞きやすくなったように個人的には思う。
小野文恵アナにはもっと、自由に発言できる場を与えて欲しいものだ。
 
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