小選挙区投票を最初から決選投票として対処する -植草一秀


植草一秀[経済評論家]

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小選挙区制の下で三つの勢力が戦うとき、民意は選挙結果に反映されない場合が生じる。

今回の総選挙の争点は、「戦争法制・憲法改定」「原発再稼働」「消費税増税」である。大事なことは主権者の判断が現実の政治に反映されることである。主権者の多数が「戦争法制廃止・憲法改悪阻止」「原発再稼働反対」「消費税増税反対」の意思を有している。

この方針を明示する政治勢力が分立してしまう場合には、この主権者の意思が現実政治に反映されないことが生じる。意たとえば、主権者多数が消費税増税NOの判断を有しているとする。

それでも、一つの選挙区に消費税増税反対の候補者が複数立候補して、主権者の投票が分散してしまうと、消費税増税を推進する候補者が勝利してしまうことが生じ得る。戦争法制の廃止についても同じことが言える。小選挙区制には、この問題が付きまとう。

フランスでは大統領選挙も議会選挙も、この問題を解消するために、ある方法が用いられている。その方法とは、一回目の投票で単独過半数を確保する候補者が出ない場合、上位2者による決選投票が行われる。つまり、主権者の過半数の支持を得た候補者が当選する仕組みを用いているのだ。

消費税増税に賛成の候補者が1回目の投票で第1位になったとする。日本の選挙制度では、この時点でこの候補者が当選者になるが、この候補者が投票総数の過半数の票を得ていなければ当選にはならない。上位2者による決選投票が行われ、過半数の得票を得た者を当選者としている。

消費税増税反対の候補者が2名いて、得票が分散したために、そのいずれかの候補が1回目投票で2位になったとする。上位2者による決選投票になれば、消費税増税に反対する候補者が当選する可能性が高くなる。これがこの制度のメリットである。

日本の小選挙区制選挙には、この方法が用いられていないため、主権者の投票が分散する場合、こちらの主張が国政に反映されにくくなる。日本でも上位2者による決選投票の導入を図るべきである。

今回の総選挙では、小池国政新党が創設されて状況が一変した。小池国政新党が反安倍勢力を糾合して「呉越同舟新党」を創設していれば、この新党が安倍政権を退場させていた可能性がある。しかし、新党は民進党からの合流条件に戦争法制肯定という踏み絵を設定した。

この踏み絵は、野党4党による共闘の要になっていた政策テーマである。希望の党がこれを条件にするなら民進党はこれをはねつけて、戦争法制を肯定するものだけを離党させて、本体の民進党を純化させて野党4党の共闘体制をより強固にするべきだった。

共産党を含む野党共闘を強固に構築して、289の選挙区で候補者を一本化していれば、まさに自公との1対1の対決図式に持ち込めたはずである。希望や維新が存在しても、明確に自公補完勢力であるから、野党共闘の得票が流出する心配は小さかった。

ところが、民進党が戦争法制肯定という条件を明確に排除せずに希望の党への合流を強行したために、自公、希維、立共社の三極構造になってしまったのである。その結果、反自公票が分散して、自公に有利な状況が生まれてしまった。

メディアは自公圧勝情報を流布して、「勝ち馬に乗る行動」、「諦めて選挙を棄権する行動」を誘発しようとしているこれに乗ってしまえば、敵の思うつぼである。

したがって、反安倍勢力の立共社共闘の強化を図らねばならないが、選挙区によっては立共社候補の当選可能性が極めて難しいと見られる選挙区も発生している。このことを踏まえれば、より現実的な対応として、この投票を事実上の決選投票に差し替える工夫も必要になっていると考えられる。

安倍自公政権を退場に追い込むために、それぞれの選挙区情勢を正確に分析して、立共社の候補でなくても、主権者の側に立ち得る候補については、自公候補の当選を阻止するために、その候補に反自公票を集中させる戦術があっても良い。

振り返れば、民進党の行動が万死に値するもので、これまでの野党共闘の結束を裏切るように共産、社民排除に進んだことの責任が厳正に問われる必要がある。共産党を除く野党共闘は自公と対峙するには明らかに力不足なのである。

選挙後にはあらゆる総括が必要になるが、いまこの時点では、メディアの情報誘導に抗して、もりかけ隠し、政治私物化の安倍政治を打破することが優先されるべきである。

選挙戦はまだ始まったばかりである。政治私物化の安倍政治を排除するために、主権者が知恵を絞り、結束して現状を打破しなければならない。

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植草一秀(うえくさ・かずひで) 1960年、東京生まれ。経済評論家(日本経済論、金融論、経済政策論)。東京大学卒業後、野村総合研究所、大蔵省財政金融研究所研究官、京都大学経済研究所助教授、野村総合研究所主席エコノミスト、早稲田大学大学院公共経営研究科教授、名古屋商科大学客員教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役社長。