<自民党総裁選>石破茂が明らかにしたアベノミクス大失敗 -植草一秀


植草一秀[経済評論家]

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私たちはアベノミクスの実像を知らなければならない。その意味では自民党党首選挙にも一定の意味があると言える。

この党首選に立候補しているのは現職の安倍晋三氏と石破茂氏の2名だ。安倍晋三氏は3選を目指している。メディアは「安倍一強」と表現するが、実態は薄氷の上の安倍内閣である。

総選挙では主権者の半分が選挙に行かず、選挙に行った主権者の半分弱しか安倍自公に投票していない。投票した主権者の半分強は反自公勢力に投票している。自公側と反自公側がそれぞれ一つにまとまれば、ほぼ互角。反自公側が政権を奪取する可能性が十分にある状況なのだ。

自民単独で見れば、全主権者の17%程度しか自民党には得票していない。日本最強の結束力を持つ創価学会が自民党の支援をして、初めて安倍自民は政権を獲得できているのである。その薄氷自民党の党首が安倍晋三氏なのだが、本音では自信がまったくないのだろう。

石破氏を支持する現職閣僚に辞職を迫る、石破氏を支持する県議に側近を通じて圧力をかける、現職の国会議員に安倍支持の誓約書を提出させるなど、はたから見てももの悲しさが充満する狼狽ぶりを示している。「一強」と言いたいなら泰然自若とした対応を示すべきだろう。

また、石破氏が徹底討論を求めるなら、いくらでも受けて立つという堂々とした振る舞いを示すべきだ。それが横綱相撲というものだ。実態が平幕なのに横綱相撲を示せと言っても無理なのかも知れない。

この自民党党首選に石破茂氏が出馬したことによって、初めてアベノミクスの化けの皮が主権者の前で剥がされた。党首選での投票権を持つ自民党支持者が、この現実をどう受け止めるのかが焦点だが、自民党員も、不都合な真実に目をつぶり、新興宗教の信者のように、思考停止で教祖を崇めるスタンスを修正するべきだろう。

党首選での自由で闊達な論議を封じ込めるのでは、「自由民主党」という党名は変更すべきということにもなる。自民党の党首選は、日本の行政トップ=内閣総理大臣の選出を兼ねているから、自民党支持でない主権者にとっても重要なイベントである。主権者国民にとっては、何よりも自分たちの生活、国民経済が重要である。小沢一郎氏は「国民の生活が第一」の路線を打ち出し、これが民主党大躍進の原動力になった。しかし、アベノミクスによって「国民の生活が台無し」の現実が広がってしまっている。

安倍首相のアベノミクス自画自賛は、いつもワンパターンだ。雇用が増えた、有効求人倍率が上がった。名目GDPが増えた、企業収益が増えた、株価が上がった。外国人訪日客が増えた、これだけだ。

名目GDPが増えたと言っても、自民党政権で激減した名目GDPが元に戻っただけ。経済成長は名目ではなく実質で見るべきもの。実質GDP成長率の平均値は+1.4%で、民主党政権時代の+1.7%を下回る。経済が超低迷であるなかで大企業収益だけが突出して拡大した。したがって、雇用者所得が大幅に減った。そのなかで、労働者の数だけが増えたから、一人当たりの実質賃金は5%も減ったのだ。安倍氏は雇用が増えたことを自慢するが、増えた雇用の4分の3が非正規労働者で、労働者に占める非正規労働者の比率が一段と上昇した。

挙げ句の果てに「働き方改悪法」が強行制定されて、過労死残業が合法化され、定額残業させ放題プランが一気に拡大する。正規・非正規の格差も法律で容認されることになる。

アベノミクスの成長戦略とは「ハゲタカ利益の」成長戦略であって、「国民不利益の」成長戦略である。自民党総裁選が潮流転換点になり、安倍政治の終焉時期が早まることが望まれる。

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植草一秀(うえくさ・かずひで) 1960年、東京生まれ。経済評論家(日本経済論、金融論、経済政策論)。東京大学卒業後、野村総合研究所、大蔵省財政金融研究所研究官、京都大学経済研究所助教授、野村総合研究所主席エコノミスト、早稲田大学大学院公共経営研究科教授、名古屋商科大学客員教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役社長。