<新型コロナ>瀬戸際2週間満了3/9時点で感染状況は一段深刻化 -植草一秀

政治経済

植草一秀[経済評論家]

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政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が「これから1、2週間が(感染が)急速に進むか収束できるかの瀬戸際となる」との見解を公表したのは2月24日。

2月5日から数えて2週間が終了するのが3月9日。残すところ5日間である。3月9日までにコロナウイルス感染者の新規確認数が劇的に減少しないと、「感染が急速に拡大する」ということになるのだろう。専門家会議のメンバーが3月2日に記者会見し、厚生労働省の対策班メンバーである北海道大学の西浦博教授による、

「北海道全域で、2月25日時点で感染した人が、およそ940人に上る可能性がある」

との見方を示した。北海道で確認された感染者数は3月2日時点で77人。これと比較しても、実際の感染者数は確認された感染者数の12.2倍ということになる。国内での感染者数はクルーズ船を除いて3月4日時点で293名。これの12.2倍は3575人。少なくともこの規模の感染者が存在すると考えられる。

安倍内閣はPCR検査を拡大させない運営を堅持している。安倍首相は2月29日の記者会見で、

「かかりつけ医など、身近にいるお医者さんが必要と考える場合には、すべての患者の皆さんがPCR検査を受けることができる十分な検査能力を確保いたします。」

と述べたが、この状況がすぐに実現する可能性はゼロである。安倍内閣はPCR検査について、引き続き「帰国者・接触者相談センター」で相談した患者が、「帰国者・接触者外来」で受診し、「帰国者・接触者外来」の医師が認めた場合にのみ実施することとしている。「帰国者・接触者外来」の医師の判断基準は「入院を要する肺炎患者の治療に必要な確定診断のためのPCR検査」(2月25日「基本方針」)である。

安倍内閣は五輪開催を強行するために、感染者数の確認を最小化するためにこのような「工作活動」を行っている。PCR検査が保険適用とされても、このプロセスは維持される。「帰国者・接触者外来」は全国に844機関しかない。1都道府県当たり14しか存在しない。この「帰国者・接触者外来」での受診を認められた患者は、2月1日から3月1日の1ヵ月間の総数で、1機関当たり2.6人である。1日当たりの受診者数でなく、1ヵ月間の合計の受診者数が1機関当たり2.6人なのだ。PCR検査を受けることができたのは、さらに、そのなかの一部の患者のみだ。

日本には11万の医療機関があるが、そのなかの844機関だけが「帰国者・接触者外来」とされ、この医療機関が許可しないとPCR検査が行われない。日本の確認感染者数を最小に抑制するために「帰国者・接触者外来」が最強の防波堤の役割を果たしている。

コロナウイルス感染者の症状は普通のかぜの症状と臨床的に区別がつかないから、現状においても、コロナウイルス感染者が一般の医療機関で受診していると考えられる。したがって、一定の基準を満たした一般の医療機関で、医師が必要と判断した場合には、PCR検査を発注できるようにするべきことは言うまでもない。

ところが、安倍内閣は、「コロナウイルス感染者が一般の医療機関の待合室で感染者でない患者と同室になることを防ぐため」との理屈を付けて、PCR検査を最小にする運営を堅持している。これは、感染拡大防止の措置ではなく、単に、発表される感染者数を少なく見せるための措置だ。PCR検査が広範に実施されれば、感染者の捕捉が可能になり、感染者の行動を抑止できる。

3月2日の専門家会議メンバーの記者会見では、軽症の若年感染者が感染を拡大させている可能性が高いとの見解が示された。なおさら、PCR検査を拡大して感染者を特定することの重要性が増している。

3月3日夜のニュース報道では、TBS「NEWS23」は、かかりつけ医でPCR検査が実施されない事実を正確に伝えたが、テレビ朝日「報道ステーション」は、かかりつけ医でPCR検査が行われるようになるとの誤った事実を伝えた。テレビ朝日は誤報を正すべきだ。

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